昔話「少年と3人の侍」(5)
「今すぐ、隆之介様を引き渡せ、今ならお前らを見逃してやろう。」
村で会った侍が庄三衛門達に向かってそう言う。向こうは60人くらいの兵がいて、こちらは3人と戦力では到底敵わない。だが、3人は
「隆はこのままの生活を望んでいる。今すぐ消えるのはお前らの方だ。」
庄三衛門が言い放つと、次郎も
「雑魚を何人集めようが、しょせん雑魚は雑魚だろうが。」
修吉も
「気をつけてくださいね。戦力差があるのはわかってましたから、色々と罠を仕掛けてますよ。死にたくなければ迂闊に動かない方がいいですよ。」
それを聞いて、兵の間に動揺が走る。その隙をついて、次郎が不規則な動きで敵に突っ込んだ。不意を疲れた兵は抵抗もできずに地面に倒された。体制を建て直す頃には、次郎はまた不規則な動きで元いた場所に戻っていた。
「あいつの通った道を進め。そこには罠がないぞ。」
侍が言うが、兵は誰一人として動けない。次郎の動きが速すぎて、どこを通って戻ったのかもわからないし、何より不規則な動きだったためどこに罠があるのかが一切わからなかったからだ。
侍は苛立ち、大きな声で
「ええい、とにかく進め。」
兵達は仕方なく前進を始める。それを見た庄三衛門が用意していた。大きな丸太を力一杯兵達に向けて放り投げた。
恐る恐る、罠がないかを確認するため下を向いていた兵達の頭上に丸太が降る。兵達はもろに丸太の餌食になり、元々60人いた兵は半数以下になり、どんどんと丸太による被害が広がっていった。残りの人数が10人くらいになった時、庄三衛門が丸太を投げるのをやめ、次郎と修吉が坂をまっすぐかけ降りて、残りの兵に突っ込んだ。
この時になって侍と兵は、最初っから罠などなかったことに気づいたが、既に兵のほとんどがやられ、今も少しずつ兵がやられていく。侍は愕然としながらその様子を見ているしかできず、立ち尽くしていた。
ついに最後の一人だった兵も倒され、次郎と修吉が侍に向かって、
「次は、こちらも本当に罠を仕掛けてお待ちしてますよ。」
「まぁ、何度来ても俺らが追い返してやる。次来る勇気があるならだけどな。」
侍は顔を青ざめさせて、なにも言わす逃げ帰って行った。
それ以来、少年を連れ去ろうとする者は現れなくなり、庄三衛門達三人が少年に聞いた。
「隆、結局俺たちの中で一番強かったのは誰だ?」
「俺の剣術で多くの兵を倒したから俺だろ、隆坊?」
「いえいえ、僕の策があったから勝てたんですよね?」
少年は三人の顔を順番に見てから、
「皆さんが、それぞれの長所をいかして、協力したから勝てたんです。
人は自分にないものを補える仲間を得たとき、初めて強くなれるんです。一人で一番強くは決してなれません。
今の皆さんが、僕にとって最強の侍です。」
少年はそう言ってニコリと笑った。
3人はあっけにとられたが、少年の言うことを噛みしめ、
「確かに、俺の力だけでは敵は防げなかった。」
「修吉の策があったから、敵に隙ができたし、後ろを庄三衛門が守ってくれたから思いっきり敵を倒すことができた。」
「僕の策も、それを実行してくれる二人がいたから成功したんですよね。」
3人は顔を見合わせて、自分達が間違っていたこと、そして自分達よりもずっと幼い少年にその間違いに気づかされたことを恥ずかしく思い、苦笑した。
それから3人は仲良くなり、庄三衛門達と少年、そして母親は幸せに暮らしました。
「さてと、これで昔話は終わりだね。明日からはまた、この町の少年の話を戻ろうかの。」
ボケじいが言い、ゆみちゃんが
「昔話と男の子の話は関係があるの?」
「どうだろうね」
ボケじいが笑顔で言う。裕太くんが
「仲間がいる人が強かったってことだよね?」
「そうじゃよ、一人でできないことも仲間や友達がいればできるということが言いたかったみたいだね。」
ボケじいが答え、慎二くんが
「友達を大切にしろってことだよね?」
「その通りじゃな。自分が助けて欲しいなら、友達が困っているときに助けてあげなければいけないよ。」
ゆみちゃん達は声を揃えて、「うん」と言った。
「それじゃあ、ここまでにしようかな、また明日おいで。」
ボケじいが優しく笑いながら、そう言った。




