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浮上 -ボケじいとの夏休みー   作者: TAKEMITI


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奥さん

ボケじいの話が終わるとゆみちゃんたちは、ボケじいに挨拶をして、走って行った。その後ろ姿を見て、ボケじいが

「何か楽しいことでも見つけたようじゃな」

そう言って微笑んでいる。続けてボケじいが

「海くん、力くん、時間があったら家に上がっていくかね?」

と聞いた。僕が「はい」と普通に答えると、力がものすごい勢いで「もちろん!」と言った。

僕は初めてボケじいが家にあげてくれた時のことを思いだし、僕もこんな感じだったのだろうと、今さらになって恥ずかしくなった。


「居間で待っていてくれ」と言われた僕らは、僕を先頭に家のなかを進んでいく。力は家中をキョロキョロと見回している。

そして居間に入って僕がちゃぶ台の前に座ると力が

「お、おい海。俺は?」

力の質問の意味がわからず、

「何が?」と聞くと、力は部屋の入り口に正座して、

「だから、俺はどこ座ってればいいんだよ」

と言う。そう言えば僕もどこに座るべきかわからず、力の座っている場所に座っていたなと思いながら、

「僕の横でいいと思うよ」と言った。

力は「そうだな。」と言ってから立ち上がろうとすると、ボケじいがやって来て、

「最近の若者は部屋の入り口に座るのが流行ってるのかな?」

と聞いた。僕と力は首を横に降り、それを否定して、力が僕の隣に座ったところで、ボケじいがまたしてもせんべいの缶をちゃぶ台の上において、ふたを開け、写真を取り出していく。

「これは少年がこの町を離れた後の写真じゃな。」

「へぇー、ボケじいは写真の趣味とかあったのか?」

力が言い、すかさす僕が奥さんの話をした。

ボケじいはいつもの微笑みでその様子を見ていた。

「ボケじいの奥さんは、遠出するのが嫌いだったのか?」

力が聞き、僕が不思議に思って聞いた。

「えっ、何で?」

「いや、写ってるものかどれも近場のものばかりで、観光名所とかの写真がないからさ。」

力に言われて、初めて気づいたが確かに旅行に行ったような写真はなく、どれも近所の風景を写したものだった。

「彼女は、体が弱くてね。当時ではなかなか治らない病気でね。

その病気で亡くなったんじゃが・・・。」

僕が「すみません」、力が「ごめん」と言うとボケじいは

「いいんじゃよ。寝たきりになることもあったが幸せな毎日じゃったからな。」

ボケじいは幸せそうに笑っている。僕が写真を見ている間、力は部屋の中を見回していて、僕が最初に来たときにも見つけたボケじいの奥さんの写真を見つけ、写真を指差して、

「あれが奥さん?」

「ああ、そうじゃよ。」

 力は何かを考えているようだったので、僕が聞いた。

「どうかした?」

「いや、あのおばあちゃん見たことある気がするんだけど、どこで見たか思い出せなくてさ。」

「力くん、海くんの宿題についての話をしてもいいかの?」

「あっ、ごめん海。どうぞ」

そう言って、力は少し後ろにさがった。ボケじいは微笑みながら

「悪いね。」と言いながら、写真を一枚とり、

「この写真は、彼の過ごしていた孤児院の写真じゃな。」

僕と力はその写真を覗きこみ、二人で顔を見合わせた。話の内容から薄々、気がついていたが、この施設は力達が暮らしていた所だった。

「力くんは、懐かしいかな?もうずいぶん前に建物も取り壊されてしまったからの。」

ボケじいが微笑みながら言い、力が写真を手にとって

「俺らの住んでたときより、キレイだな。でも、やっぱ俺はあの汚い感じの施設が好きだったけどな。」

力も懐かしそうに笑いながら言った。

「この頃は、70人近い子ども達がいて、賑やかだったね。」

「そんなにいっぱいいたのかよ。俺らの時は20人ぐらいでギリギリ生活できてたみたいだったのに。金あったんだな~この時は。」

「余裕はなかったが、社会情勢の不安定な頃だったし、車の普及が進んだ、結果、交通事故等もあって親をなくした子が増えてしまっていたのかもしれないの」

「へぇー」

力が言い、ボケじいが

「技術の進歩は、素晴らしいことじゃが、それを使う人間が、その進歩にそって、人間もまた、進歩しなければ、進んだ技術は人間を殺す凶器になるということもしっかりわかっていなければいけないよ。」

ボケじいが言い、その後もいくつかの写真を見ながら話を聞いた。30分位した頃に、

「ところで、力くんは約束があると言っていたね?時間は大丈夫かね?」

力は携帯で時間を確認して、

「あっ、ヤバい。」

「そうか、じゃあ今日はここまでにしようか、海くん。」

「そうですね、ありがとうございました。」

「ボケじい、明日も同じ時間に話始める?」

力が聞き、ボケじいが笑顔で「そうじゃな。」と答えると

「じゃあ、明日も聞きに来るよ。行こうぜ、海。」

僕は、別に力の約束と関係ないのにと思いながらも、力と一緒にボケじいに挨拶して家を出た。


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