写真
「さて、少し暑くなってきたから、今日はこのあたりでやめておこうかな。」
ボケじいが言うと、慎二くんが
「え~、まだいいよ。」と言い、
ゆみちゃんも、裕太くんもまだ続きを聞きたがっていたが、
「ちょうど、話の切れ目だからね。また明日にしよう。」
僕な言うと、三人は「じゃあ」と言って、諦めた。
ボケじいが、
「ごめんね。また、明日おいで。」と言って笑った。
ゆみちゃん達が帰った後、僕も帰ろうと思い、挨拶しようとするとボケじいが、
「海くん、写真が見つかってね。よかったら、上がっていくかね?」
予想外のボケじいの言葉に驚いたが、
「はい、お邪魔します」
ボケじいが笑顔で家の扉を開け、家のなかに招き入れてくれた。
居間で待っていてくれと言われたので、この前の部屋で、次はちゃぶ台の前の座布団の上に座って待っていると、ボケじいがこの前と同じような缶をもって入ってきた。
「ちょうど、あの少年がこのへんにいた頃の写真だが、どうかな?」
缶をちゃぶ台に置き、ボケじいは風景の写真を取り出して、ちゃぶ台の上に並べていく。町の様子・近くの川・建設中の建物。
笑顔の子ども達、公園で子どもと遊ぶお母さん達。
「この公園はちょうど、この写真の頃にできてね。親子で遊ぶ憩いの場だったんじゃよ。」
ボケじいが説明してくれた。そういえば父さんも同じようなことを言っていたと思いながら、写真を眺めていた。すると、真新しい壁、植えられたばかりの樹木、今は違う木製の扉。
図書館の写真は、今しか知らない僕には衝撃を受けるほどきれいだった。
「図書館の写真かな?」
ボケじいが、優しい笑顔を浮かべて聞き、僕も「はい」と答えた。ボケじいが、
「あの話の少年もその図書館が好きだった。両親を探さなくなった彼は、夏休みには毎日朝から夕方までずっと図書館にいたそうじゃよ。」
「そうですか。」
僕はそう言いながら、父さんと同じようなことをしてたのかと思った。
「最近は、図書館の老朽化だとか、利用者が減っているから等の理由で取り壊しまで議論されてると聞くが、古くからあれば朽ちるものだし、人が移り変われば利用者が減ることも当然のことなのにの。寂しい話じゃよ。」
「うちの父も同じようなこと言ってました。
使ったこともない、なんの思い入れもない人間の意見でなくなろうとしているって。」
僕がそう言って、ボケじいが驚いていた。
「どうしたんですか?」僕が聞く、ボケじいが
「お父さんとそんな話をしているとは思ってなかったからビックリしただけじゃよ。」
僕は気恥ずかしくなって、ボケじいの近くにある写真の入った缶を指差して、
「まだ、写真があるみたいですが、見せてもらってもいいですか?」と聞いた。
ボケじいは「いいよ。」と言って缶を差し出してきた。
僕は写真を見ながら、何か違う話のきっかけを探していた。
何枚か見終わってみると、電車の写真が多いことに気がついて、
「奥さんは電車が好きだったんですか?」
「いや、ワシが好きでね。この町に来る電車を撮って貰っていたんじゃよ。」
「そうですか。」そう言いながらに、一枚の写真を取ろうとしたとき、ボケじいが、「おっと」
と言いながらその写真をとった。
「これは恥ずかしいから見ないでおくれ」と言って隠した。
「すみません。」
僕が言うと、ボケじいは、笑顔で、
「いやいや、若い頃の写真と言うのは恥ずかしいものじゃからな。気にせんでくれ。」
その後も写真を見ては、思い出話を聞き、メモを取る。この日は宿題が大きく進んだ日になった。
「ありがとうございました。」
写真の話と思い出話を聞き終わって、僕はお礼を言ってボケじいの家を後にしながら、ボケじいの隠した写真には、駅員と小さな男の子が写っていたことを思い返し、ボケじいは何を隠したかったのだろうと不思議に思った。




