昔話「少年と3人の侍」(1)
「今日は、少し違う昔話をしようかの。」
父さんの話を聞いた翌日、ボケじいはいつもの少年の話ではなく、違う話をすると言った。
「海くんは、聞いたことがあるかもしれないが、この地域の大昔に3人の強い侍がいた話をしようかの。良いかな、海くん?」
いつかの電車で見た夢の昔話だ、僕はと思った。
「僕もあまり覚えてないですし、宿題の役にも立ちそうなのでお願いします。」
ボケじいは、それを聞いて、笑顔になり、
「それでは、始めようかな。」
「昔、昔、この町に三人の強い侍がおった。
三人はとても仲が悪く、会うたびに喧嘩をしていた。
ある日、三人は誰が一番強いかを決めるために、三人で集まって、にらみ合っていた。そこに、小さな少年が現れ、
「お侍さんたち、何をしているの?」
と聞いた。侍の中で一番背の低い侍が、
「邪魔だ、小僧。どこかに行け。」
と怒鳴り、一番若い侍が
「私たちは、今から重要な話し合いをします。誰にも聞かれたくない話し合いなので、あなたも早くここから離れてください」と諭す様に言った。それでも立ち去らない少年に、一番年上で体も大きい侍が
「坊主、俺たちはこれから、誰が一番強いかを決めるために決闘をする。坊主を巻き込みたくないから、今すぐにどこかにいきなさい。」
本当のことを言えば立ち去るだろうと思った侍たちに対して、
「それは、決めなければいけないことなの?」と少年が聞く。
侍たちは顔を見合わせ、体の大きな侍が
「そうだな。その答えがでないと私達は納得できない」
他の二人もその言葉に賛同している。侍たちに向かって少年が、
「じゃあ、お侍さんたちの言う強さって何ですか?
体の大きな侍は
「力の強さこそが、本当の強さだ。この中で一番力持ちなのは、俺だ」
と言い、背の低い侍が
「強さって言うのは、剣術の上手さだ。力ばっかじゃあ、相手には勝てない。この中で剣術の一番は俺だ。」
一番若い侍が、
「いいえ、強さは賢さ、つまり、戦術です。力も剣術も使い方を誤れば、相手には勝てません。この中で一番賢いのは私です。」
三人の言う強さは対立し、誰も引き下がらない。
それを見た少年が、
「じゃあ、どうやって一番を決めるの?」と聞く。
三人が同時に「だから決闘だ!」と言った。
「殺しあいで決まった一番が本当に一番なの?
誰かを倒して、手に入れた栄光は、そんなに人に自慢できることなの?」
少年の問いかけに、侍たちはしばらく何も答えられなかった。沈黙が続いた後、体の大きな侍が、
「それでは、小僧の言う強さとは何だ?小僧の言う通りの方法で勝負して勝ったものが一番強いと言うことにしようか」
他の二人は少し嫌な顔をしたが、
「それでは、そうしましょう」と言った。




