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序章

あの夏

  僕は深く 暗い 深海から

   暖かい日差しの届く陽光層に浮上した。


「今日もボケじいの所行く?」

小さくて幼い顔をしているが茶黒の髪の子が聞いた。年齢に比べて背が高い金髪の少年が

「え~あのじいさんの話わからないし・・・

あっ今から行っても間に合わないから鬼ごっこしようぜ。」

行くのが嫌なので無理やり違うことをしようとすすめる彼に黒髪の物静かそうな少年が言った。

「でも、たまにおもしろい話もあるよね」

正直に行きたいとは言わないが本当は行きたいのかなと僕は思った。

「じゃあかくれんぼにしようぜ」

無理やり決めようとする金髪の少年。

ここで初めて僕に黒髪の少年が話を振った。

(りき)はああ言ってるけど(かい)はどうしたい?」

現状「行きたい派」と「遊びたい派」で少し金髪の少年が不利だったから

「僕はどっちでもいいけど、かくれんぼは捨てがたいかな」と笑い

「だよな海、ほら見ろ(しん)

金髪の少年は仲間ができたので少し強気になった。

「でも・・・」黒髪の少年が反論しようとした時

「じゃあ今日は別々で遊ぼうぜ。」

金髪の少年が言った瞬間、今まで黙って聞いていた茶黒の髪の少年が座り込み泣き出して

「みんな一緒じゃなきゃいやだー」と言った。

「わかった、わかったから太一(たいち)、泣くのやめろよ。」

金髪の少年が慌てて言って

「海・慎、何してんだよ行くぞ」

僕と慎は顔を見合せて笑い、2人を追いかけた。


 ドン!ドン!大きな音がして目を開けると母の声がした。

「早く起きないと遅刻するよ」

楽しい夢からいっきに現実に引き戻されかけたが、まだ完全に目覚めていない頭は、楽しかった記憶へと再び入ろうとしていたが制服にそでを通すと現実が重くのしかかり再び引き戻された。


 あれから10年、あの3人はもういない。


 階段を降りてリビングのドアを開けると世界で1番嫌いな顔が目に入る。その本人は、僕を見ることなく新聞を読みながら

「もうすぐ夏休みなのに遅刻せずに行けないのか」

と言われ、僕は何も言わず、弁当を持ちリビングを出た。母が後ろから何か言っていたが全く耳に入ってこなかった。

 家を出て、まだ怒りが収まっていなかったが視界にヨボヨボの今にも倒れそうな老人が見えて少し気持ちが落ち着いた。

彼こそが楽しい思い出の中の登場人物である「ボケじい」である。

ここで大事なことを思い出し時計を見る。

電車の時間まで5分をきっていた。


 電車内にアナウンスが流れる。

「駆け込み乗車は大変危険ですのでおやめ下さい。」

僕はいつも思うが誰でも駆け込み乗車をしたいと思ってしているわけではない。

「しなければいけない」からしているのだが周囲の人には理解されないだろう。

 おそらく「迷惑な奴だ」とか「1本遅らせればいいだけじゃないか」とか「何、真剣になってんだ」などと思うだろう。

 僕もおそらく自分がしていなければそう思っただろう。

少し周囲の人が白い目で見ているのを感じたため居づらくなったので違う車両に移り座席に座り学校のある駅まで座っていた。

 周囲には同じ制服を着た人たちが楽しそうに話しているが、僕に話しかけてくる人は誰もいない。

そんなことを考えるうちに改札を出ればすぐに学校があるので校門の様にも思える駅に到着した。生徒の間では「校門駅」等と呼ばれている。

またつまらない1日が始まる。


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