9:真実
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異常なる化物から逃げ切った楓たちは、【ライトワーク】の本拠地に帰ってきた。
異常なる化物の攻撃は直接喰らわなかったが、逃げるため服がボロボロになってしまった。
帰ってきた楓たちを見て、フレアが叫んだことは言うまでもない。
泥だらけになった体を洗い、全員が落ち着いたところで、今日の出来事について話し合いが始まった。
「あんたら、今日は一体何があったのよ」
「よくわからないけど、すごく強い化物に襲われたの」
「化物! そいつはどんなやつだったの」
「それは……」
「それは俺が説明します。逃げるのに必死だったからちゃんと覚えていない可能性があるので」
「む、楓はちゃんと覚えているの」
「俺は、記憶したことは決して忘れないからな」
「なんかずるい…」
「そんなことがいいから、早くしてくれ」
急かすフレアに化物の詳細を説明した。
特徴的だった毛並み、目、痣について説明したとき、フレアが首をかしげた。
「金色と紅色の虹彩異色症が出ており、毛並みは金色とどす黒い黒が混ざっている。
そして、魔獣にある痣が禍々しく光っている。本当にこれで間違いないのか?」
「ああ、そんな感じだった。特に痣が光っていたことは印象的に強かったな」
「それは私も覚えているよ。あの怪しい痣から魔力というか、聖法気というか、へんな力を感じたよ……」
「もしかしたら、よからぬことに巻き込まれたかも知れないな」
フレアが深刻そうな顔をしながら一枚の紙を出した。
そこに書かれていたことは、最近村に出没した、魔獣についてだった。
村に現れた魔獣は【ライオネイラ】。
金色の瞳、金色の毛並みを持ち、高い攻撃力と防御力を備えている、超危険種。
鋭い爪と、俊敏力、筋力から繰り出される攻撃は木々をなぎ倒し、柔軟だが硬い性質を持つ毛並みは、剣を通さないほどだという。
場所によっては聖獣、守り神としても崇められている。
この話を聞いて、楓はあることが気になった。
それはカノンの存在。
金色の瞳、金色の毛並みを持つカノンは【ライオネイラ】という種なのかもしれない。
だとしたら、村を襲った魔獣というのは、カノンの親ということになる。
「ティオ、カノン。ちょっと聞きたいんだが…… おい、どうしたんだよ。暗い顔をして」
ティオとカノンが今にも死にそうな表情をしていた。
とても複雑で、苦しそうで、泣きそうな顔。
何をどうしていいのか、わからなくなっている、そんな感じを漂わせていた。
「僕はどうすればいいのかわからない」
「がうがう~」
「ごめんね。カノン」
「ちょっと、何一人暗くなっているのよ」
「そうだぞ。カノンの親のこともある。だけど、あんな異常な化物がいるんじゃ、親も危険かも知れない。だからさ、あの化物をどうにかして、カノンの親を説得しよう」
「あの化物を倒す? それって殺すってことだよね。僕にはそんなことできないよ」
「どうした、いつものティオらしくないな。私に話してみなさい」
「フ、フレアお姉さんが言ってもダメだよ。僕には、僕にはあの化物と戦えない!」
今にも泣きそうな顔で「戦えない」と言い続けるティオ。それを慰めるかのように寄り添うカノン。
その姿を見て、楓は何かを感じ取った。
魔獣と話せるティオ、金色の獣、カノンがティオに何かを言った。
それで、ティオがあの化物と戦えなくなった。
(っち、思い出せ。ティオが戦えない理由。ピースはもう揃っているはずだ)
楓は必死で考える。
きっとティオは真実を言わないだろう。
それは、言ってしまえば、楓たちも戦えなくなってしまうという懸念があったからなのかも知れない。
だからこそ、楓はティオが戦えなくなる理由を考えた。
ティオの行動、カノンの行動にヒントが必ずある。
そして、楓は見つけた。
戦えなくなった理由を……
「ティオ。正直に言ってくれ」
「何、お兄さん……」
「もしかしたらなんだけど、今日の化物。あれはカノンの親だったんじゃないか」
「ちょっと楓! カノンの毛並みとかと全然違ったじゃない! そんなこと……」
「……なんで。なんでわかったの」
「え、」
ティオの言葉にクレハが驚いた。
三人が化物は確かに金色も混じっていた。
だが、ここ数日で毛並みが変わるものなんだろうか?
フレア話では金色の獣が村を襲ったと言っていた。
それも数日前。
こんなことは普通ありえないことだった。
「あの化物は、あれはカノンの親なんだよ。僕には、僕には殺すことなんてできない。カノンを悲しませることなんてしたくないよ!」
「だけど、どうする。あのまま親をほうっておくのか」
「え、」
「確かにあれはカノンの親かも知れない。でも、なにか理由があるのかも知れない。カノン。お前の親は見境なく人を襲う化物か?」
カノンは小さく首を横に振る。
つまり、カノンの親は、元々あんな化物じゃなかった。
何かしらの要因があって、あの姿になったのだ。
「ほら、カノンはそう言っている。だったらさ、戦うんだよ」
「そんなこと僕には……」
「カノンの親を殺すのではなく、助けるために!」
「助けるために?」
「そうだ。助けるためだ。戦いっていうのは、相手を殺すだけじゃない。助けるための戦いだってあるんだよ。ティオ、お前はそれでも逃げるか。助けられる可能性を探さないで、逃げるのか」
「……僕は逃げない。カノンを悲しませたくない気持ちはある。だから、僕は助けるために戦うよ」
「ああ、その意気だ」
さっきまでの暗い顔ではなく、誰かを守りたいと強く思う。たくましい顔つきになっていた。
「……楓、カノンの親についていたという字について教えてくれ」
「どうしたんです。フレアさん」
「その禍々しく輝いていた痣が気になる。もし、カノンの親、【ライオネイラ】だったら、金色の瞳と金色の毛並みのはずなんだ。だが、楓やクレハ、ティオがあったそいつは、金色の他に色が混じっている」
「ええ、そうです。何かしらの要因があって居ると思います」
「その考えは正しい。私は、その痣が原因だと考えている」
「痣……ですか」
確かに、化物についていた痣は禍々しく輝いていた。
だが、普通に考えて、痣があそこまで体に作用するとは考えられない。
そこで、楓はあることを思った。
それは、魔法と聖法についてだ。
楓のいた世界ならありえない現象だろう。
しかし、ここは魔法や聖法のある異世界。
魔法や聖法を駆使すれば可能ではないか、という考えに至った。
「クレハ、紙とペンをくれ」
「わかったけど、何をするの?」
「フレアさんが言いたいことがなんとなくわかった。カノンの親についてあった痣が、なにか魔法的な要因になっていて、化物になったんだと考えられる。だから、どんな痣だったから書くんだよ」
「なるほど、それなら確かに考えられることだね。禍々しく光っていて、怪しげな力も感じたもの」
「クレハが力を感じる時点で怪しいな」
楓が痣の形を紙に書いてフレアに渡す。
それを受け取ったフレアは驚いた。
「おい、本当にこれが書いてあったのか?」
「はい、間違いないです」
「っち、これは随分とやばいものが出てきたぞ」
「なになに、何なのよ。フレアさん。何が一体やばいのよ!」
表情がすこし重くなるフレアは、楓に書いてもらった痣の絵を全員に見せるように置いた。
「みんな、聞いてくれ。カノンの親についている痣、あれは聖呪痕。刻み込まれたら悪影響がヤバイ、呪いだ!」
フレアが語った真実に、また静寂が訪れた。
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