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カオティックアーツ  作者: 日向 葵
第三章
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70:見えざる敵(実は味方同士という事実)

「これから防犯システムの一つを作動させる。楓はこれを身につけて」


 ウィウィがゴーグルのようなものを楓に渡す。楓はそれを受け取って装着する。視界が黒く染まり、何も見えなくなる。

 周りの状況が全く見えなくなる中、光り輝くなにかだけは見ることができた。


「魔力がはっきり見えるようにするためのもの。防犯システムでここら一体の視界を奪う。だから魔力を頼りに攻撃して」


「ああ、わかった」


 まるでアーク溶接に用いられる溶接面みたいだなと楓は思った。

 楓が装着したことを確認したウィウィが防犯システムを作動させる。研究室内が煙に包まれる。だが、魔力を感知できるようになった楓ははっきりと敵の存在がわかる。来ている人数は8人。中でも一人だけとてつもなくでかい魔力を持っている。

 あれは危険だと楓は感じた。

 まずはあいつをどうにかしなければ。

 楓は【ディメンションリング】より【インフィニティ・マークⅤ】を取り出す。

 当然設定威力は最大だ。


 魔力が反応する場所めがけて、楓は打ち抜く。


「へぇ~カオティックアーツじゃん。しかも私が見たことないタイプ。はは、なんか面白そう!」


 膨大な魔力を持つものから聞こえた声は幼い少女のようで、だけど絡みつくような暗く重いものがあった。

 肌で感じられる重い雰囲気、それに圧倒された楓は一瞬だけ硬直する。


 それが致命的なスキとなる。膨大な魔力を持つ少女の反応がゴーグルから消える。

 どこだと楓はあたりを見渡した。だけどどこにもいない。

 カオティックアーツを構えながら探すと、背後にトンっと触られる感触があった。


「へへ、ちょっと痛いよ?」


 突然強い衝撃が体を駆け巡る。体が宙を浮いて、吹き飛ばされ、それは壁に激突するまで止まらない。


「私を忘れてもらっては困る」


 ウィウィは風の無詠唱魔法を少女に向けて放つ。だが、少女に当たる瞬間に魔力が掻き消えた。


「私にその程度が効くと思っているの? たはははっは、馬鹿だ。馬鹿がいる!

 ふふ、さっきはあんまり遊べなかったけど、まだ敵がいるんだ。遊んじゃおーっと。ザ・ルーレットタイム! ちょっと易しめな内容だぜ!」


 突然現れる円の形をした魔力の塊、視界が魔力しか見えないから何が起こっているかわからない楓だが、なにか危険なものだということは経験から判断できた。

 楓は【インフィニティ・マークⅤ】と【ブーストリング・マークⅡ】を連結させて、改良した【ハーフ・エナジー・グラトニー・マークⅡ】で周りの魔力を吸収する。


 そのせいか、円の形をした魔力が揺らめいた。だけど膨大な魔力供給があるおけげで崩れることはない。


 楓はありったけの力を蓄えて、【インフィニティ・マークⅡ】を撃ち放った。


 飛んでいくエネルギー弾。それが膨大な魔力を持つ少女にあたって、吹き飛ばしたと思った。


 だが、少女は健在。魔力にゆらぎが全くないことから、ダメージを与えられなかっただろうと楓は思う。


「クソ、なんだよアイツ……」


「私も予想外。あれは……強すぎる」


 楓とウィウィは円の形をした魔力を警戒して後ろに下がる。すると、少女の声が響き渡った。


「カーッカッカッカ。後ろに下がったところでむだじゃわい。わっちの魔法、受けてみよ! 一度行ってみたかったんだこれ!

 おお、ルーレットが止まった! さーてなになに、え、火炙り?」


 なにげに恐ろしい声が響き渡ったと同時に、楓の足元から大量の魔力が吹き出した。


「楓!」


「っち、魔法か!」


 吹き出す魔力は燃え盛る炎となり、楓とウィウィに襲いかかる。楓は下に手をかざし、【ハーフ・エナジー・グラトニー】の効力により、炎は魔力というエネルギーとして吸収される。


「ほう……これを避けるか。ならば……ぐえぇえええ」


 突然、巨大な魔力が吹き飛んで、ごろごろと壁に激突。奥の方から来る魔力からくる魔力の風による、防犯システムによって発動していた視界を覆うものがなくなる。


 楓は溶接面のようなゴーグルを外して見ると、顔をはらせて白目をむいている少女が足元に転がっていた。


「レヴィアちゃん、あんたばっかじゃないの!」


 声を荒げて走ってきたのは、クレハたちだった。


「って、え、敵ってクレハたちなの」


「……あれ?」


「でもどうしてクレハたちが襲って来るんだ?」


「わたし、ちゃんと言ったよね。どういうこと?」


 そういったウィウィだが、実はだいたい察していた。楓以外に聞こえないように、言ったからなーと内心焦りだす。

 当然激怒しているクレハたちはウィウィに掴みかかって大乱闘。

 話がついていけなくなり、呆然とする。

 すると、気絶してしまったレヴィアが目を覚ます。


「いたい……」


「三回転するぐらい吹き飛んだら誰だってそうだ」


「えっと……君が楓か?」


「そういうお前は」


「私はレヴィアタン。嫉妬の大悪魔さ。気軽にレヴィアちゃんって呼んでいいぜ!」


 人差し指を立てながら、かっこよく決める少女を目の前にして、楓は呆れたため息を吐く。


「ため息吐かなくたっていいのに……」


 そんなことでいじけ始めるレヴィア。なんだか小さい妹ができた気分になる。楓もそうで、なんか構ってあげなきゃいけない気持ちになった。


 そんなこんなで、ごちゃごちゃしていると、激しい轟音を鳴らし、研究所全体が揺れた。


「これ……なに?」


「ウィウィ! 敵が来たのか」


「わからない。だけどこれって……」


「……魔女じゃな。膨大な魔力じゃ」


 アクアが静かにそう言った。

 外で魔力が使われている。しかも激しく揺れるほどのものとなると、攻撃がきて、抵抗しているに違いない。そう思った全員は、外に向かって走る。

 研究所を出て、最初に目に写ったものは……激しく燃えるウトピアだった。

読んでいただきありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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