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カオティックアーツ  作者: 日向 葵
第二章
41/74

41:ぽこりん派 VS マナタイト派

最近、投稿できずにすいません。

よろしくお願いします!

「ふふ、マナタイトタケを大量にゲットだぜ!」


 マナタイトタケを痛めつけて嬉しそうにするクレハを見て、はぁとため息を吐く楓だった。

 それもそうだろう。

 マナタイトタケの表情は、感情が抜け落ちて、無理やり襲われた後のような顔になっていた。

 可愛そすぎて、ちょっと笑えない楓。

 ブラスもティオ、問題ないような感じであったため、異世界とのギャップを強く感じた瞬間だった。


 楓は、いろいろと悩んでしまったが、無事にマナタイトタケをゲットできたため、レインに納品しに行った。


「え、もうとってきたんですか!

 ちょっと見せてください」


 狩って、痛めつけたマナタイトタケは、【ディメンションリング】の中に入れてあるが、量が多いため、とりあえず一匹出すことにしたクレハ。

 まるで、ゴミを捨てるかのように、マナタイトタケを転がす。


 そんなクレハを見た楓は、更に頭を悩ませる。

 普段、ものすごくいい子なクレハがなぜ、あんな酷いことをするんだろうと、悩んでしまったのだ。

 その疑問は、ティオによって、すぐに解決される。


「クレハ姉さんは、ぽこ派だから仕方が無いよ」


 要はアレである。

 過剰なファンが、敵キャラに攻撃しているようなものである。

 クレハがぽこ派であることは置いておき、依頼の報告をさっさと済ませようと、楓が話を切り出そうとした。

 しかし、フレアとブラスによって止められる。


「早く依頼完了報告したいんだが、なぜ止めるんだ」


「楓、よく見ろ。凄く大変なことになっているんだよ」


「ああ、ブラスの言う通りだ。

 まさか、レインがマナ派だったとは、思わなかったぞ」


「マナ派ってなんだ」


「マナタイトタケのファンってことですよ、お兄さん」


「……おう」


 異世界にも、ここまで過剰なファンがいるんだなと、心のそこから思う楓だった。

 感心したような、謎が深まったような、曖昧な感じの中、カノンが楓の肩まで上り、楓の頭を『ぽん、ぽん』と叩いてきた。

 まるで、「あのふたりは気にしない方がいいよ。ファンなんてそんなものさ」とでも言っているようだった。


さて、レインとクレハ、大好きな魔物のため、激闘が繰り広げられようとしていた。


「あ、あなたがマナタイトタケにこんなひどいことをしたんですか!」


「別に売るんだからいいじゃない?」


「よ、よく、こんなにも愛らしいマナちゃんを、ここまで酷い状態にできますね」


「マナタイトタケは、たしかに美味しい。けど、可愛らしさ、愛らしさは、ぽこりんが一番よ!」


「……あなた、ぽこ派の人間ですね」


「そういうレインこそ、マナ派だったのね」


 睨み合う二人の間には、火花が散っているように見える。

 クレハは、突然、ぽこりん人形を取り出して、ぽこりんの可愛さについて語り始めた。

 それに負けないと、レインはマナタイトタケ人形を取り出して、可愛さを語り始める。

 余りにも、大きな声で言い合う二人だったので、次第に人が集まってきた。

 そして、集まった人は、クレハ側とレイン側に別れる。

 ぽこりんが好きなクレハと、マナタイトタケが好きなレインの言い争いが、集まったファン同士の言い争いに変化する。

 楓は、カノンを撫でながら、生暖かい目で見守ることにした。

 どこで買ってきたのかわからない、お酒を用意して、争いを肴にする、フレアとブラス。

 ブラスは、お酒が弱いようで、既に顔が赤くなっていた。


「ふふ、クレハちゃん。やりますね。

 ですが、ぽこりんみたいに、素行が悪く、味もマズイ、最低の魔物です。

 ファンをやめて、マナ派になることをおすすめしますよ」


「ふん、ぽこりんは愛でる、眺めるがいいんです。

 ただ、美味しいだけのマナタイトタケなんかより、愛嬌があるんです!

 大体、ファンなら、なんでマナタイトタケを売るんですか!」


「そんなのは、当たり前ですよ。

 マナタイトタケの美味しさと、可愛らしさを布教するためです。

 最近、マナ信者が増えてきまして、大変ですよ。

 もうすぐ、絶滅するんじゃないですか?

 ぽこりんファン?」


「そんなことなるわけないじゃない。

 ぽこりんは、どんな環境にも適応できる、最強の魔物なんだから!

 それよりも、マナタイトタケを布教するために、狩り尽くして絶滅するんじゃない?

 マナタイトタケも、マナ派も」


 既に、収集がつかなくなってきている状況を、眺める楓は、「そんなのより、カノンのほうが可愛いぞ」とつぶやいてみた。

 カノンは、若干嬉しそうに、だけど、少し照れたみたいに、楓に甘える。

 ティオも、「カノンの方が可愛いよね」といい、楓とティオで、カノンを撫で回した。

 若干照れていたカノンの様子をみて、ブラスは冷や汗をかいた。

 クレハに続く、楓を巡る新たなライバルの登場だと思ってしまったからだ。

 フレアは、カノンにまでヤキモチを焼くブラスを見て、末期症状だなと思った。


「ブラス、お前は病院に行ったほがいいかもしれないな。精神病院に」


 フレアの一言が、気に障ったのか、お酒が入ったコップを持って、いきなり立ち上がったブラスは、訳もわからないことを叫び出した。


「何を言うんですか。俺は正常ですよ。

 楓がカッコいいのは当たり前じゃないですか。

 ぽこりんも、マナタイトタケもどっちでもいいですけど、一番最高なのは、楓なんですよ。

 楓以上に、最高の存在なんているわけがない。

 おれが愛してやまないのは、楓だけだ。

 俺は楓に救われた。本当に救われたんだ。

 あれがなかったら、今頃俺は、野垂れ人でいたか、不意打ちで魔物に殺されていたさ。

 絶望していた俺を救ってくれたのは、楓なんだ。

 だから、楓を愛している。好きだ楓。

 ぽことかマナとか、どっちでもいいんだよ。

 楓を見ろ!」


 途中から、ぽこ派とマナ派の激戦区に楓派として殴り込みしにいった、酔っ払いのブラス。

 視線は、楓に集まった。


「ブラス、おまえは、なんてこと言っているんだ!」


「楓、俺は自分の気持ちに素直になって言ったまでだ。

 楓、大好きだぁぁぁぁぁぁ」


 楓にとって、最悪の叫びが響き渡る。

 ぽこ派とマナ派は、楓とブラスを見つめて、なぜか拍手が起こった。

 ぽこ派もマナ派も、ほとんどが女性だ。

 そして、腐っている奴も多くいたらしい。

 クレハだけが、悔しそうにブラスを見つめていた。


「……しまった。ブラスが」


 若干泣いているクレハ。

 もし、楓が……という考えが、脳裏によぎった。

 だが、楓に限ってそんなことはないと、自分に言い聞かせるクレハだった。


 楓は、暴走するブラスに近づいた。

 周りからは、「え、まさか」とか、「やっぱり」などと聞こえたが、無視して進む楓。

 ブラスは、もしかしたら楓が受け入れて、などと思ったが、楓の手を見て何かを察した。


 そう、楓の手には、【インフィニティ・マークⅣ・低出力版】が握られていた。

 この時、ブラスは、『おれ、今日死ぬかも知れない』と心の中で強く思った。


 「ブラス。頭の病院の前に、地獄に送ってやるよ」


 楓が、マジギレした瞬間だった。

 そりゃそうなるよ、フレアとティオは思っていた。

 こんなに人が集まった状況で、同性に告白されたのだ。

 怒らない方が無理だった。

 楓は、容赦なく打ち込んだ。

 「あ~やっぱり」と落胆する、ぽこ派とマナ派。

 楓のお仕置きによって、ぽこ派とマナ派の言い争いはお開きになった。


 無事に納品して報酬を受け取り、【アパダリア】までの護衛依頼を受けた楓たち。

 やることをすませたあとは、宿に戻って、休むことんした。


 クレハとレインの言い争い、そして、ブラスの愛の告白に精神を削られた楓は、ベッドに横になに、今日の出来事を忘れるべく、全力を尽くしたが、完全記憶により、全く忘れられなかった。

読んでいただきありがとうございます!


ブラスが暴走して告白してしまいましたね。

なんかすいません。


次回もよろしくお願いします!

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