41:ぽこりん派 VS マナタイト派
最近、投稿できずにすいません。
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「ふふ、マナタイトタケを大量にゲットだぜ!」
マナタイトタケを痛めつけて嬉しそうにするクレハを見て、はぁとため息を吐く楓だった。
それもそうだろう。
マナタイトタケの表情は、感情が抜け落ちて、無理やり襲われた後のような顔になっていた。
可愛そすぎて、ちょっと笑えない楓。
ブラスもティオ、問題ないような感じであったため、異世界とのギャップを強く感じた瞬間だった。
楓は、いろいろと悩んでしまったが、無事にマナタイトタケをゲットできたため、レインに納品しに行った。
「え、もうとってきたんですか!
ちょっと見せてください」
狩って、痛めつけたマナタイトタケは、【ディメンションリング】の中に入れてあるが、量が多いため、とりあえず一匹出すことにしたクレハ。
まるで、ゴミを捨てるかのように、マナタイトタケを転がす。
そんなクレハを見た楓は、更に頭を悩ませる。
普段、ものすごくいい子なクレハがなぜ、あんな酷いことをするんだろうと、悩んでしまったのだ。
その疑問は、ティオによって、すぐに解決される。
「クレハ姉さんは、ぽこ派だから仕方が無いよ」
要はアレである。
過剰なファンが、敵キャラに攻撃しているようなものである。
クレハがぽこ派であることは置いておき、依頼の報告をさっさと済ませようと、楓が話を切り出そうとした。
しかし、フレアとブラスによって止められる。
「早く依頼完了報告したいんだが、なぜ止めるんだ」
「楓、よく見ろ。凄く大変なことになっているんだよ」
「ああ、ブラスの言う通りだ。
まさか、レインがマナ派だったとは、思わなかったぞ」
「マナ派ってなんだ」
「マナタイトタケのファンってことですよ、お兄さん」
「……おう」
異世界にも、ここまで過剰なファンがいるんだなと、心のそこから思う楓だった。
感心したような、謎が深まったような、曖昧な感じの中、カノンが楓の肩まで上り、楓の頭を『ぽん、ぽん』と叩いてきた。
まるで、「あのふたりは気にしない方がいいよ。ファンなんてそんなものさ」とでも言っているようだった。
さて、レインとクレハ、大好きな魔物のため、激闘が繰り広げられようとしていた。
「あ、あなたがマナタイトタケにこんなひどいことをしたんですか!」
「別に売るんだからいいじゃない?」
「よ、よく、こんなにも愛らしいマナちゃんを、ここまで酷い状態にできますね」
「マナタイトタケは、たしかに美味しい。けど、可愛らしさ、愛らしさは、ぽこりんが一番よ!」
「……あなた、ぽこ派の人間ですね」
「そういうレインこそ、マナ派だったのね」
睨み合う二人の間には、火花が散っているように見える。
クレハは、突然、ぽこりん人形を取り出して、ぽこりんの可愛さについて語り始めた。
それに負けないと、レインはマナタイトタケ人形を取り出して、可愛さを語り始める。
余りにも、大きな声で言い合う二人だったので、次第に人が集まってきた。
そして、集まった人は、クレハ側とレイン側に別れる。
ぽこりんが好きなクレハと、マナタイトタケが好きなレインの言い争いが、集まったファン同士の言い争いに変化する。
楓は、カノンを撫でながら、生暖かい目で見守ることにした。
どこで買ってきたのかわからない、お酒を用意して、争いを肴にする、フレアとブラス。
ブラスは、お酒が弱いようで、既に顔が赤くなっていた。
「ふふ、クレハちゃん。やりますね。
ですが、ぽこりんみたいに、素行が悪く、味もマズイ、最低の魔物です。
ファンをやめて、マナ派になることをおすすめしますよ」
「ふん、ぽこりんは愛でる、眺めるがいいんです。
ただ、美味しいだけのマナタイトタケなんかより、愛嬌があるんです!
大体、ファンなら、なんでマナタイトタケを売るんですか!」
「そんなのは、当たり前ですよ。
マナタイトタケの美味しさと、可愛らしさを布教するためです。
最近、マナ信者が増えてきまして、大変ですよ。
もうすぐ、絶滅するんじゃないですか?
ぽこりんファン?」
「そんなことなるわけないじゃない。
ぽこりんは、どんな環境にも適応できる、最強の魔物なんだから!
それよりも、マナタイトタケを布教するために、狩り尽くして絶滅するんじゃない?
マナタイトタケも、マナ派も」
既に、収集がつかなくなってきている状況を、眺める楓は、「そんなのより、カノンのほうが可愛いぞ」とつぶやいてみた。
カノンは、若干嬉しそうに、だけど、少し照れたみたいに、楓に甘える。
ティオも、「カノンの方が可愛いよね」といい、楓とティオで、カノンを撫で回した。
若干照れていたカノンの様子をみて、ブラスは冷や汗をかいた。
クレハに続く、楓を巡る新たなライバルの登場だと思ってしまったからだ。
フレアは、カノンにまでヤキモチを焼くブラスを見て、末期症状だなと思った。
「ブラス、お前は病院に行ったほがいいかもしれないな。精神病院に」
フレアの一言が、気に障ったのか、お酒が入ったコップを持って、いきなり立ち上がったブラスは、訳もわからないことを叫び出した。
「何を言うんですか。俺は正常ですよ。
楓がカッコいいのは当たり前じゃないですか。
ぽこりんも、マナタイトタケもどっちでもいいですけど、一番最高なのは、楓なんですよ。
楓以上に、最高の存在なんているわけがない。
おれが愛してやまないのは、楓だけだ。
俺は楓に救われた。本当に救われたんだ。
あれがなかったら、今頃俺は、野垂れ人でいたか、不意打ちで魔物に殺されていたさ。
絶望していた俺を救ってくれたのは、楓なんだ。
だから、楓を愛している。好きだ楓。
ぽことかマナとか、どっちでもいいんだよ。
楓を見ろ!」
途中から、ぽこ派とマナ派の激戦区に楓派として殴り込みしにいった、酔っ払いのブラス。
視線は、楓に集まった。
「ブラス、おまえは、なんてこと言っているんだ!」
「楓、俺は自分の気持ちに素直になって言ったまでだ。
楓、大好きだぁぁぁぁぁぁ」
楓にとって、最悪の叫びが響き渡る。
ぽこ派とマナ派は、楓とブラスを見つめて、なぜか拍手が起こった。
ぽこ派もマナ派も、ほとんどが女性だ。
そして、腐っている奴も多くいたらしい。
クレハだけが、悔しそうにブラスを見つめていた。
「……しまった。ブラスが」
若干泣いているクレハ。
もし、楓が……という考えが、脳裏によぎった。
だが、楓に限ってそんなことはないと、自分に言い聞かせるクレハだった。
楓は、暴走するブラスに近づいた。
周りからは、「え、まさか」とか、「やっぱり」などと聞こえたが、無視して進む楓。
ブラスは、もしかしたら楓が受け入れて、などと思ったが、楓の手を見て何かを察した。
そう、楓の手には、【インフィニティ・マークⅣ・低出力版】が握られていた。
この時、ブラスは、『おれ、今日死ぬかも知れない』と心の中で強く思った。
「ブラス。頭の病院の前に、地獄に送ってやるよ」
楓が、マジギレした瞬間だった。
そりゃそうなるよ、フレアとティオは思っていた。
こんなに人が集まった状況で、同性に告白されたのだ。
怒らない方が無理だった。
楓は、容赦なく打ち込んだ。
「あ~やっぱり」と落胆する、ぽこ派とマナ派。
楓のお仕置きによって、ぽこ派とマナ派の言い争いはお開きになった。
無事に納品して報酬を受け取り、【アパダリア】までの護衛依頼を受けた楓たち。
やることをすませたあとは、宿に戻って、休むことんした。
クレハとレインの言い争い、そして、ブラスの愛の告白に精神を削られた楓は、ベッドに横になに、今日の出来事を忘れるべく、全力を尽くしたが、完全記憶により、全く忘れられなかった。
読んでいただきありがとうございます!
ブラスが暴走して告白してしまいましたね。
なんかすいません。
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