40:激闘?マナタイトタケ
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マナタイトタケは木々にぶつかっては跳ね返り、徐々に速度を増していく。
その速度は衝撃波が生まれるほどだ。
要は、音速を超えていた。
「なぁ、クレハ」
「何、楓?」
「マナタイトタケは、あんな速度で木にぶつかっているんだけど、なんで木が折れないんだよ」
そう、マナタイトタケが音速を超えて、木々にぶつかっても、木が一切揺れないのだ。
力の定義は質量と加速度で決まる。
マナタイトタケの質量がどれぐらいか分からないが、音速を超えた速度でぶつかれば、木が抉れてもおかしくない。
だが、木が一切抉れない状況を、楓は不思議に思った。
「あーあれね。マナタイトタケにはよくわからない特性があるの。
それはね。全ての衝撃を吸収する上に、移動時以外の力の方向が反転するの」
「……意味がわからない」
力の方向が反転するということは、ぶつかった時に、自身の力とぶつかった際に発生する反発する力が、マナタイトタケ自身の方向になる。
ぶつかるたびにダメージを受けるということを意味する。
しかし、全ての衝撃を吸収してしまうため、ダメージを受けない。
ここで矛盾が発生する。
衝撃、つまり自身に向かってくる力が吸収されるということは、物質を動かす力がなくなることを意味し、速度はなくなる。
つまり、音速を超えて移動するなど不可能である。
「なんで、あんな速度で移動できるんだよ」
「さっきも言ったでしょ?
移動するときの力だけはそのままだって」
「つまりあれか。自身がダメージを受ける力だけなくなって、移動するときの力だけが残る」
「ま、そういうことだね」
ますます意味がわからなくなる楓だった。
それもそうだろう。
マナタイトタケは、物理法則を完全に無視した動きをしているのだから。
「マナタイトタケが来ます!」
ティオが、敵の動きを感知する。
楓の目には姿すら見えないマナタイトタケを感知するティオを不思議に思った。
マナタイトタケは、クレハに突撃したが、衝撃が自身に行ってしまうため、クレハは一切ダメージを受けない。
「あれ、倒せないだろ……」
「楓の疑問は最もだな。だが、マナタイトタケは倒せるぞ」
「なぜです、フレアさん」
「あれは、ぶつかったときの衝撃以外吸収できない」
「あれですか?
あれを殴ればダメージを与えられる?」
「そういうことだ」
楓の頭は混乱してきた。
物理法則を完全に無視した魔物、マナタイトタケ。
音速を超えて動くあれをどうやって攻撃するのか検討もつかなかった。
「ふふ、私に任せなさい!
月光よ、我が手に集え【ムーンライト・グローブ】」
クレハの手に、グローブが生成される。
そして、クレハはステップを踏んで構えた。
「クレハ姉さん、また来ます!」
ティオの合図で、クレハが拳を打ち抜く。
クレハは、音速を超えてやってくるマナタイトタケに綺麗なカウンターを決めた瞬間だった。
「マナ~」
弱々しいマナタイトタケの悲鳴が聞こえた。
なんて哀れな生体なんだろうと、楓は思った。
「まだまだぁ」
クレハはマナタイトタケに馬乗りになり、殴り続けた。
「……クレハは一体何をやっている」
「おお、楓は知らないのか。
だったら俺が教えてやるよ。
マナタイトタケは、ああやって殴り続けると旨みが増すんだよ。
あの高速移動を大量にさせて、旨みを圧縮させるのも手だが、こっちから殴りかかったほうが、もっと旨くなるそうだ」
「なんか、哀れだな」
「まぁ、高級食材ってこともあるし、クレハはぽこりん派だしな」
「それ、何か関係があるのか」
「マナタイトタケには、ファンクラブがある。
あれは愛らしい姿だからな。女性に人気がある魔物なんだ。
しかも、うまいだろ。だから人気があるんだよ」
なるほど、と楓は思った。
クレハが愛してやまない魔物、ぽこりん。
この世界で最弱なのに、世界の各地に存在する謎の魔物。
そして、その愛らしさに世界各地でファンがいるらしい。
それに敵対するように人気があるのが、マナタイトタケである。
そんな話を聞いた楓は、ゆるキャラの人気的なあれかなとか思った。
「やったよ。マナタイトタケ、ゲットだ!」
クレハの足元には、ボコボコに殴られて、無残な姿になったマナタイトタケがいた。
まだ、息があるようだ。
心なしか、泣いているように見える。
「マ、マナマナマナ!」
クレハの周りに、大量のマナタイトタケが現れる。
マナタイトタケたちは、音速を超えた動きをし始めた。
一体の時は耐えられた衝撃波だったが、マナタイトタケが増えたことにより、威力をます。
だが、その衝撃はすぐに止むことになる。
クレハが、無残な姿になったマナタイトタケを殴りつけたのだ。
「マ、マナ~」
悲しげな悲鳴が響き渡る。
それを聞いたマナタイトタケたちの動きが止まった。
そして、クレハの蹂躙劇が始まったのだ。
「楓、よく見ておけ。あれがマナタイトタケの狩り方だ」
「なんか、嫌な狩り方だな」
地面に転がるマナタイトタケたちを見て、哀れに見えてきた楓だった。
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