32:村に向かう途中のこと
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レインの護衛をすることになった楓たちは、のんびりと話しながら歩いていた。
特に、楓とレインは、服の実用性と機能を向上させるための話で盛り上がっている。
レインと楓が仲良くしている姿を見て、機嫌が悪い者が二人いた。
ブラスとクレハである。
ブラスは、目から血の涙を流し、楓とレインを凝視している。
「楓が、楓が、楓が……」
「ブラス、お前怖いぞ……」
「フ、フレアさん。だって楓が知り合ったばかりの女性とあんなに親しげで……俺は不安でしょうがないんですよ。俺の愛しの楓がぁぁぁぁぁぁ」
「その……なんだ。落ち着け」
そう言って、フレアは【インフィニティ・マークⅣ】をブラスに向ける。
魔力以外にも、閃光魔法を込めてみたが、隠蔽能力のおかげで、魔力が外部にもれない。
フレアは、人前で堂々と魔法を使う術を手に入れていた。
そして、ブラスに閃光魔法を打った。
ちなみに、音は全くしない。
したといえば、ブラスが攻撃を受けた時に、ちょっと音がしたぐらいだ。
さすが、楓仕様のカオティックアーツといったところか、とフレアは感心した。
「ぐほぉ、何をするんですか……」
「道具の実験と、仲間が頭を冷やす手伝い?」
「ヘタしたら死んでますよ。どうしてくれるんですか!」
「お前なら、大丈夫だろう。気にするな。そして、キモイ。そんなんだと楓に嫌われるぞ」
「な、楓に嫌われる……」
フレアはニヤリと笑った。
ブラスでなにか面白そうなことができそうだと。
クレハには悪いが、ブラスの方が面白いから、こっちに協力したいと、フレアは思った。
よし、ブラスを誘導して、面白い展開に持って行ってやろう。フレアは悪巧みしていた。
一方クレハも、商人のレインと楓が親しげに話している姿を見て、モヤモヤしていた。
それだけじゃない。
胸に刺すような痛みを感じる。
レインと楓を見るのが辛い。
それがわかってくると、泣きそうになる。
でも、楓はただ話しているだけ。
レインとは知り合ったばかりなのだ。
だから、いきなり恋仲になったりはしないだろうと思った。
もし、恋仲になってしまったら、楓は村に残ってしまうだろう。
大切な仲間が減ること。
それはとても悲しいことだと思った。
でも、そんなことは起こらない。
クレハはそう信じ込むことにした。
少し不穏な空気に気がつかない楓は、レインと楽しげに話していた。
特に、服のことが気になっていた。
レインに教えてもらったところ、楔帷子より耐久度のある服にとても興味を持った。
カオティックアーツに応用することも考えていたが、何より、楓たち全員の防具がしょぼかった。
そのため、少しでもいいものが欲しかった。
そこで目をつけたのが、レインの服だ。
見た目は普通の服なのに、楔帷子よりも防御力がある。
とある魔物を素材として使っているらしいその服は、楓が理想とする防具だったのだ。
だから、レインと楽しげに話してしまった。
「その服は、とある魔物と言いましたね」
「ええ【、ライオネイラ】っていう、一部の地域で聖獣扱いされているので、そう簡単に手に入らないんですけどね」
「【ライオネイラ】……」
楓は、先程からご機嫌な、カノンをちらりと見る。
カノンは危機を感じたようだった。
キョロキョロと周りをみて、楓と目があった。
「それでですね、【ライオネイラ】の毛皮ってすごいんですよ。伸縮自在で弾力性がって……聞いてくださいよ。一体何を見て……」
レインと怯えた表情のカノンの目があってしまった。
カノンが怯えるのも仕方がない。
カノンの種族名は【ライオネイラ】だ。
自分の種族の毛皮の話をされて怯えるなという方がおかしい。
カノンは楓に飛びついて、頬をぺちぺちと叩く。
まるで、「わ、私を目の前にして、よくもそんな話ができるわね」とでも言っているようだった。
「わぁ、可愛いですね。私も触って…」
「ぐるるるるるるる」
「ものすごく威嚇されてますぅ」
「それはそうでしょうね。カノンは【ライオネイラ】ですから」
「え、もしかして、この子は言葉を……」
「理解してますよ」
「私、もふもふできない。ショック」
「ああ、落ち込まないでくださいよ。レインさん」
楓は、レインを必死で慰めた。
その行動が、更に周りを不安にさせていることも知らなかった。
だから、カノンは楓の頭に乗り、ぺちぺちと叩く。
ちょっと、鬱陶しいと感じながらも、カノンをどけないあたり、楓らしいとも言えるが……
そんな楓は楓は、周りの不穏な空気に全く気がついてなかった。
皆が皆、不安を抱えたまま、村に到着した。
村についたとき、レイン以外全員が「はぁ」とため息をついた。
そんな様子を見て、楓を慰めようとするレイン。
クレハとカノンの睨みに気がついて、そっと手を引く。
あらあら、この子達は、と何かを悟ったレインだった。
なにか、めんどくさい事が起こりそうだと楓は思って、また「はぁ」とため息をついた。
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