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カオティックアーツ  作者: 日向 葵
第二章
32/74

32:村に向かう途中のこと

本日は投稿できました!

よろしくお願いします!

 レインの護衛をすることになった楓たちは、のんびりと話しながら歩いていた。

 特に、楓とレインは、服の実用性と機能を向上させるための話で盛り上がっている。

 レインと楓が仲良くしている姿を見て、機嫌が悪い者が二人いた。


 ブラスとクレハである。

 ブラスは、目から血の涙を流し、楓とレインを凝視している。


 「楓が、楓が、楓が……」


 「ブラス、お前怖いぞ……」


 「フ、フレアさん。だって楓が知り合ったばかりの女性とあんなに親しげで……俺は不安でしょうがないんですよ。俺の愛しの楓がぁぁぁぁぁぁ」


 「その……なんだ。落ち着け」


 そう言って、フレアは【インフィニティ・マークⅣ】をブラスに向ける。

 魔力以外にも、閃光魔法を込めてみたが、隠蔽能力のおかげで、魔力が外部にもれない。

 フレアは、人前で堂々と魔法を使う術を手に入れていた。

 そして、ブラスに閃光魔法を打った。

 ちなみに、音は全くしない。

 したといえば、ブラスが攻撃を受けた時に、ちょっと音がしたぐらいだ。

 さすが、楓仕様のカオティックアーツといったところか、とフレアは感心した。


 「ぐほぉ、何をするんですか……」


 「道具の実験と、仲間が頭を冷やす手伝い?」


 「ヘタしたら死んでますよ。どうしてくれるんですか!」


 「お前なら、大丈夫だろう。気にするな。そして、キモイ。そんなんだと楓に嫌われるぞ」


 「な、楓に嫌われる……」


 フレアはニヤリと笑った。

 ブラスでなにか面白そうなことができそうだと。

 クレハには悪いが、ブラスの方が面白いから、こっちに協力したいと、フレアは思った。

 よし、ブラスを誘導して、面白い展開に持って行ってやろう。フレアは悪巧みしていた。


 一方クレハも、商人のレインと楓が親しげに話している姿を見て、モヤモヤしていた。

 それだけじゃない。

 胸に刺すような痛みを感じる。

 レインと楓を見るのが辛い。

 それがわかってくると、泣きそうになる。

 でも、楓はただ話しているだけ。

 レインとは知り合ったばかりなのだ。

 だから、いきなり恋仲になったりはしないだろうと思った。

 もし、恋仲になってしまったら、楓は村に残ってしまうだろう。

 大切な仲間が減ること。

 それはとても悲しいことだと思った。

 でも、そんなことは起こらない。

 クレハはそう信じ込むことにした。


 少し不穏な空気に気がつかない楓は、レインと楽しげに話していた。

 特に、服のことが気になっていた。

 レインに教えてもらったところ、楔帷子より耐久度のある服にとても興味を持った。

 カオティックアーツに応用することも考えていたが、何より、楓たち全員の防具がしょぼかった。

 そのため、少しでもいいものが欲しかった。

 そこで目をつけたのが、レインの服だ。

 見た目は普通の服なのに、楔帷子よりも防御力がある。

 とある魔物を素材として使っているらしいその服は、楓が理想とする防具だったのだ。

 だから、レインと楽しげに話してしまった。


 「その服は、とある魔物と言いましたね」


 「ええ【、ライオネイラ】っていう、一部の地域で聖獣扱いされているので、そう簡単に手に入らないんですけどね」


 「【ライオネイラ】……」


 楓は、先程からご機嫌な、カノンをちらりと見る。


 カノンは危機を感じたようだった。

 キョロキョロと周りをみて、楓と目があった。


 「それでですね、【ライオネイラ】の毛皮ってすごいんですよ。伸縮自在で弾力性がって……聞いてくださいよ。一体何を見て……」


 レインと怯えた表情のカノンの目があってしまった。

 カノンが怯えるのも仕方がない。

 カノンの種族名は【ライオネイラ】だ。

 自分の種族の毛皮の話をされて怯えるなという方がおかしい。

 カノンは楓に飛びついて、頬をぺちぺちと叩く。

 まるで、「わ、私を目の前にして、よくもそんな話ができるわね」とでも言っているようだった。


 「わぁ、可愛いですね。私も触って…」


 「ぐるるるるるるる」


 「ものすごく威嚇されてますぅ」


 「それはそうでしょうね。カノンは【ライオネイラ】ですから」


 「え、もしかして、この子は言葉を……」


 「理解してますよ」


 「私、もふもふできない。ショック」


 「ああ、落ち込まないでくださいよ。レインさん」


 楓は、レインを必死で慰めた。

 その行動が、更に周りを不安にさせていることも知らなかった。

 だから、カノンは楓の頭に乗り、ぺちぺちと叩く。

 ちょっと、鬱陶しいと感じながらも、カノンをどけないあたり、楓らしいとも言えるが……

 そんな楓は楓は、周りの不穏な空気に全く気がついてなかった。


 皆が皆、不安を抱えたまま、村に到着した。

 村についたとき、レイン以外全員が「はぁ」とため息をついた。

 そんな様子を見て、楓を慰めようとするレイン。

 クレハとカノンの睨みに気がついて、そっと手を引く。


 あらあら、この子達は、と何かを悟ったレインだった。


 なにか、めんどくさい事が起こりそうだと楓は思って、また「はぁ」とため息をついた。

読んでいただきありがとうございます!

次回もよろしくお願いします!

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