16:戦う意思
本日はすごく少なめです。
本日もよろしくお願いします。
「俺は、俺は戦えない。すまない。子供達の救出なら手をかせると思う。だが、戦闘……」
作戦を考えている途中に、ブラスがそんなことを言い出した。
俺はまだ戦えない。本気でそう思っていることを、この場にいる全員が強く感じた。
楓以外は……
「おい、ふざけたこと言ってるんじゃない。おまえは戦えないんじゃない。戦いから逃げているんだよ。いい加減気がつけ!」
「……そうかもしれない。だが、俺は戦えないんだ」
再び俯いてしまうブラス。
どうにもならない気持ちを、どうすればいいのかわからなかった。
そして、前に問われた楓の質問。
「なんで騎士を目指したのか」
この質問が、ブラスの中をかき乱す。
俺は戦えない、でも、子供たちも救えない。
そんな考えに飲み込まれそうになっていた。
話し合いは進んでいった。
ブラス、フレア、ティオ、カノンが誘拐された子供たちを救出することになった。
楓とクレハは山賊の討伐。
フレアの見立てでは、カオティックアーツを持つ楓と、魔女であるクレハがいればなんとかなる。そう思っていた。
相手は、人数は多いが、ただの山賊。
聖騎士のように、警戒するべき相手ではない。
そう考えていた。
「よし、これより【ライトワーク】は山賊に攫われた子供たちの救出作戦を決行する。行くぞ!」
山賊のいるところに行く途中、楓はブラスに話しかけていた。
「おい、まだおまえは戦えないのか?」
「正直怖い。怖くて仕方がないんだ」
「それは……戦うことか怖いのか」
楓の質問に対し、ブラスは答えが出せなかった。
(たしかに恐怖を感じている。
怖いって感じている。
行きたくないって思ってしまう。
それは戦うことが怖いから?
いいや、違う。
では何が違いう)
ブラスの中で、考えがまとまらず、時間だけが過ぎていく。
もうすぐ山賊のアジトがあると思われる場所に到着する。
「やっぱりな。お前、戦うことが怖くないだろ」
「戦うことが怖くない?」
「おまえは、守れないこと、助けるべき対象を傷つけてしまうこと、それが怖いんじゃないのか。だから、だから戦えない」
「守れないことが……怖い」
「この仕事のなか、ちょっと考えてみろ。なんで騎士になりたかったのか、戦うことの何が怖いのか。一歩ずつ進んでいけばいい。一回立ち止まったっていい。だけど、絶対に諦めるな」
ちょっと照れくさそうにブラスに言った楓。
そんな楓にちょと笑ってしまった。
「そんな、笑われること行ってないよな」
「ああ、言ってない。でも、考えてみるよ。たしかに、俺は逃げていたからな。前に進むためにも、この仕事の中で考えてみるよ」
そんな話をしていると、クレハがやってきた。
ちょっと心配そうにしていたが、楓とブラスの様子を見て、安心したようだった。
ブラスは、クレハが来たことに気がつき、フレアのもとに行く。
楓も、これからを相手にするのに、険悪な雰囲気を作ろうとは思っていない。
それでも、ブラスが立ち直れるように、そう願ってついつい言ってしまう。
「ふふ」
「なんだよ。クレハ」
「楓らしいなって思ったの」
「ん、俺らしい」
「すごい技術を持っていて、なんでもできて、とても仲間思い。大切な仲間のために何かしてあげたいって思っていること、すごく感じ取れるよ?」
「そんなわけあるか、って言いたい所なんだけどな」
クレハの言っているとこは的を射ている。
楓は自分のためにカオティックアーツを作りたいとは考えていない。
自分の技術で誰かの助けになる、そんなカオティックアーツを作りたいと考えている。
そんな楓は、クレハにとても似ている、お人好しだ。
だから、ブラスにも大切なことを気がつかせてあげようと接している。
そんな楓を知っているクレハはちょっと微笑んで……
「きっとブラスなら大丈夫よ。私だっているんだから。これがダメでも次、次があるよ!」
「仲間のためだ。よろしく頼むぞ!」
「うん」
いつかの夜のように、拳を合わせる二人。
楓の持っている魔道具。
フレアから借りた、通信道具から合図があった。
子供たちを救出するために、フレアが動き出したらしい。
フレアの合図で楓とクレハも動き出す。
フレア達がしっかりと子供たちを救えるように。
山賊をかき乱すため、動き出した。
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