ベルンハルトと冬の諸事情2
二回の軽いノックの後、すぐに入れと言う声が返ってきた。
僕は無駄な装飾がごてごてとついた厚い扉を押し開き室内へ入る。
「何の御用でしょうか?」
わざわざ使用人を使って朝食後書斎へ来るよう言いつけたというのに、父は少々大きすぎる机から顔をあげもせず、手元の資料に視線を向け続けている。
ちなみに僕は生まれてこの方、何かの催し以外で父たちと食事をともにしたことはない。
「この中から適当にみつくろっておけ」
書類の山の一番上にあったそう厚くない束を渡され、ぱらぱらと捲ってみる。令嬢の名前に容姿の特徴、親族の構成とそれぞれがどのような地位にあるかがまとめられていた。年は下は六歳から上は二十六と様々だが、全て共通して国の中枢に食い込む貴族の娘たちだ。
父がなぜ呼びつけたのかわかり、思わず乾いた笑いが出そうになった。もちろん、本当に笑ったりなどはしない。
「これは…」
理解しかねる振りをして、どういう意味かと尋ねる。
「お前の新しい婚約者候補だ」
父はやはり顔をあげず淡々と答えた。
「公爵位はカテリーナに譲るつもりだったが、カテリーナが正式にエドウィン王子の婚約者になることが決まった以上、次期公爵はお前以外いない」
ならばカテリーナを王子の婚約者になどしなければよかったものを。
国の金をかすめ取ったり、賄賂を集めるようなあくどいことは上手いくせに、本当に重要なことは何も見えていない。
この男は、妹のお願いをかわいらしい恋心によるものだと信じて疑わず、とうの妹は継母にあなたは未来の王妃になるために産まれてきたのよと、ほとんど洗脳のような教育をうけていることも知らないのだ。良くも悪くも素直な妹自身も、自分は王子が好きだから王妃になりたいのだと信じきっているので現実はなお質が悪い。見事妹を王太子の婚約者に据えた継母の次の狙いは、僕を殺して自分の親族を養子に迎え、次の公爵に据えるといったところか。そんな薄っぺらな計画でも今のところは上手くいっているのだから、あまりにおかしくて笑いそうになる。
「しかし私にはリジーアがいます」
「それはお前に跡を継がせる気がなかったからだ。今は違う。お前にはもっと家の為になる婚約をしてもらわねば困る。リートベルフの娘とは折を見て、婚約を解消しろ。あのような実家の力もなく、見た目もぱっとしない娘だ。そう難しくもなかろう」
リジィも酷い言われようである。
一瞬心がざわついたが、僕は何食わぬ顔でしばし考える振りをした。
これまで目立たないように父の言うことには基本的には従う振りをしてきた。父は僕のことを凡夫と思っているに違いない。まさか自分に逆らうとは夢にも思っていないはずだ。
とはいえリジィとの婚約を破棄されては困る。感謝祭での出来事以来、僕はすっかり彼女のことを気に入っているのだ。
父が彼女とのことに口を出してくることは予測できていたので、焦りはない。用意していた言い分と、弱点を突いてやればすぐにでも黙るだろう。
「賛成しかねます」
「なに?」
父は不機嫌さをあらわにこちらを睨みあげてくる。険しい青の瞳で睨み付ければ、誰もが竦みあがると知っての仕草だ。
それしきの威嚇で竦みあがるような生き方はしてきていないが、平然として反感を買うのは良い手とは言えない。少し癪ではあったが、僕は父の鋭い目にビクつく振りをした。実に面倒臭い。
「我が家はカテリーナの婚約によって王族との繋がりを持ち、今や王妃派の中でも一二を争う力を持ちました。これ以上は他の家からの妬みを買いましょう。特に宰相のフロイデンベルク侯爵は密かに王族の外戚になることを狙っていたと聞きます」
「そんなことは私にだってわかっている。だからこそ、他の力ある家と手を組む必要があるのだ」
「そうでしょうか?リジーアと私の婚約が我が家にとって利益にならないことは、他家も十分に理解しているでしょう。ならばカテリーナが王太子妃になるあかつきまで彼女との婚約を表面上維持し、最も条件の良い家を見極め交渉するのが得策ではないでしょうか」
「つまり婚約を破棄するのは時期尚早だと言いたいのか」
「はい」
もうひと押しか。
「結婚まで少なくともあと六年。こちらから選ばずとも、いくらでも近づいてくる家はありましょう。ことによってはフロイデンベルク侯爵とも…」
死んだ実母によく似た顔でうっすらと笑って見せると、父はわずかに苦い表情を浮かべて視線をそらした。
なぜかは知らないが父は実母に負い目のようなものを感じているらしい。そして、それは父にとってカテリーナに次ぐ弱点でもあった。
完全な優位を崩された父であったが、それでも威厳たっぷりにいいだろうと言って見せた。本心は自分の言いなりだと思っていた息子に丸め込まれて、穏やかではないのだろう。
別にこの男が自分のことをどう思おうが、どうでもいい。できればこれまでのように無関心でいてくれるのが一番ありがたいのだが。
とにもかくにも大切なのは当分リジーアは僕の婚約者で、他の奴に取られる心配をしなくて済むということだ。
「もう下がっていいぞ」
「失礼します」
父の鋭い視線を背中に感じながら退室する。
実の父親ではあるが、一生仲良くできそうにない。しかし、数年我慢すれば顔を合わせることもなくなる予定だ。
そう考えると、父の苦々しい顔も少しはかわいげがあると言うものだ。
父は自分の利益に敏感な人間だから、これからは僕の身辺警護にも力を入れるし、リジィのこともしばらくは口出しをしてこないはずだ。
問題は継母のほうか。
足早に廊下を抜け、裏口へ向かう。
途中カテリーナとすれ違った。
新しく追加された王妃教育に忙しくしている彼女と違い、必要な教育はとっくの昔に終わらせ、しかも屋敷にいてもいなくても誰も気にしない僕とでは随分と身分が違う。
妹は僕が外出しようとしている気配を察知したらしく無言の抗議を向けてきた。あの顔を見るに、どうせリジーアのところに行くのでしょう!私だって行きたいのに!と言ったところだろうか。
とはいえ屋敷では継母たちの目があるので、直接文句を言われることはないので特に気にしてはいない。ただリジィも会いたがっているので、カテリーナには頑張って早々に王妃教育に一段落つけてほしいところである。
そういう意味合いを込めてしっかりと心の中では、カテリーナを応援しておいた。
裏口には手配していた馬車に乗り込むと、車内はきっちりと閉め切られたカーテンのために薄暗い。扉を閉めると中は夜になったかのように真っ暗になってしまう。
急激に暗くなったので実際よりも暗く感じたが、目が慣れてくると、徐々に自分の斜め前に座っている影の輪郭がはっきりと見えてくる。
壁を叩いて、御者に馬車を出すよう合図をする。
普段移動は単身馬に乗ってするのだが、今日は彼と会うためにわざわざ馬車を手配したのだ。手紙でのやり取りはしていたが、実際会うのは数年ぶりになるだろうか。
「わざわざお越しいただきありがとうございます。叔父上」
影がもぞりと動き、くつくつと笑う。
僕が叔父上と呼んだだけで勘のいい彼は、何事かを察したのだろう。
「その様子だと、随分と考えが変わったみたいだね」
カーテンが揺れて、一条の光が叔父の顔を照らす。相変わらずの人を食ったような笑みが浮かび上がって、再び暗がりに沈んだ。
「それで、どういった用件かな?」
叔父相手に腹芸は不要と、単刀直入に切り出すことにした。
「王になるのはやめようと思います」
「へぇ。それは残念だ」
たいして残念がっていない調子で叔父は肩を竦めてみせた。本当に残念がるとしたら、叔父ではなく祖父のほうだろう。
僕自身も、本気で王になりたかったわけでない。
ただ目的のない人生はつまらなく、ついでに気に食わない連中に煮え湯を飲ませてやればいい。そう祖父に持ち掛けられ、頷いただけだ。
「もっと欲しいものが出来ました。お爺様や叔父上には申し訳ないと思っています」
「それは王になると手に入れられないものなのかい?」
「そうですね」
「よければ教えてくれないかな?」
見当はついているだろうに言わせようとする当たり、叔父は性格があまりよくない。
「普通の幸せとやらが、欲しくなったのです」
「普通の幸せ、か。…それは王ではなくて、リジーア・リートベルフの側にあると?」
見えなくとも叔父がニヤニヤとからかっている様子が容易に想像できて、少しばかりうんざりする。
「…そう思っています」
お前のような人間が、普通の幸せを望めるとでも思っているのか?
もう一人の自分が笑う。うるさい。黙れ。
忸怩たる思いで叔父の反応を待っていると、彼は唐突に弾けるような笑い声をあげた。
「そうかそうか!思っていたよりも、早く見つけたようで僕は今とても嬉しいよ!」
思わぬ歓迎に、一瞬面食らってしまう。彼の思考回路にはたびたびついていけないと感じることがある。一体何をそうも喜んでいると言うのか…。
そういえば、リジィに言わせれば僕の思考回路もわかりにくいそうだ。心外である。
「何をです?」
「忘れたのかい?唯一の愛情さ!」
そういえばそんなことを昔言っていたか。
愛情という慣れない言葉にぞっとしながら、傍から見ればそう見えるのだと僕はようやく自覚した。
感謝祭でリジィが襲われたあの日。
彼女が怖いと震えながらも血で汚れた僕の手を握って、僕の生きてきた人生を思って泣いてくれた時、これまで決して胸を張れないことをしながらも必死に生きてきた自分が報われた気がした。生きていてもいいのだと、許してもらえた気がした。
まるで長いこと潜っていた水面から顔を出して、めいいっぱい空気を吸い込んだような心地だった。
それからリジィは僕にとって特別な女の子になった。
くだらないことで笑って、何気なく未来の話をする、一緒にいて楽しいと感じる。手を伸ばせば、温かな手が握り返してくれる。
僕がそんな普通の幸せに値しない人間だと知ってもなお、彼女はそれらを与えてくれた。
一時期は自分が変わることや彼女に嫌われてしまうことが恐ろしくなり、怖気づいて遠ざけようとしていたことが、本当に馬鹿らしく思える。
ただ愛情とかそういう単語を持ち出されると、そうなのだろうかと首をひねってしまう。
恋だの、愛だのというものについて考えたことすらなかったからだ。
「リジーア嬢はお前のしてきたことを知っているのかい?」
ひとしきり良かったとうなずいて、叔父は何気ない調子で言った。しかし、その目はいたって真剣にこちらを見つめていた。まさか、自分のしてきたことを忘れたわけではあるまいとでも言うかのように。
忘れるものか。
脳裏に真っ白な雪に染みて凍った血の色が蘇る。
その行為が決して許されるものではないのだと十分理解して、それでも僕は生きるためにそうすることを選んだ。後悔はしていない。むしろこれからも必要があれば、迷いなく僕はこの手を汚すつもりだ。
そこまで考えて次に浮かんだのは、血がついた僕の手を両手で包み込んだリジィの祈るような姿だった。
きっと彼女は僕の犯してきた罪と、僕が奪ってきたものを知るたびに、何度だって傷つくのだろう。
彼女を悲しませたくないと思う反面、僕のために彼女が傷つくことを嬉しいと感じてしまう自分がいる。我ながら最低だ。普通の人間だったら、すぐにでも嫌になるに決まっている。
でも、彼女は違う。
きっとリジィは僕のことをいましめながらも、最後まで嫌わないのだろう。
僕に限らず基本的に彼女は人を嫌いになれない人間だ。それは優しさでもあり、彼女の弱さでもある。そこにまんまと付け込もうというのだから、やっぱり僕は最低な奴だ。
自己嫌悪に陥りながらも、僕は口を開く。
「…知っています。そして僕を許して、叱ってくれました。ただどこまで彼女が僕を受け入れてくれるかは、まだわかりません。嫌われないよう努力はしていますが」
最近やけに、倫理や道徳に反することはしてはいけないと言ってくるので、できる限り彼女の主張にはそうつもりでいる。なんだかんだ言って、彼女に嫌われることは僕にとって死活問題なのだ。
たださっきも言ったとおり必要があれば、例えば自分が襲われたり彼女に危害が加えられそうになったりしたら、僕はどんなことでもするつもりだ。
「それは重畳。…ところで、まさか王座はいらないって言うために、僕を呼びつけたわけじゃあないんだろう?」
「もちろん」
ようやく本題だ。
相手から見えているか甚だ疑問ではあるが、居住まいを正す。
「側妃の懐妊を機に王妃からの刺客は来なくなったとはいえ、僕が王族の血を引いていることに変わりはありません。いずれ継承権問題が起こり、僕も巻き込まれることでしょう。継母も隙あらば僕の排斥を狙ってくるはず。だから、僕は一度死んでしまおうと思います」
切っ掛けはリジィの貴族をやめられればいいね、という言葉だった。
僕はそれに難しいだろうと返したが、やろうと思えばできないことはない。だが、そうすると貴族の娘として暮らしてきたリジィに不便な暮らしを強いてしまうことになる。それはあまり気乗りのするものではなかった。
すでに僕の中で彼女と結婚することだけは譲れない条件なので、身を引くという選択肢はない。
となると貴族のまま、様々な面倒事から逃れる方法はないものか?
解決方法は案外すぐに思いついた。貴族でなく、ベルンハルトをやめればいいのだと。
つまりベルンハルトは死んだことにして、適当な貴族の養子になり、リートベルフ家に婿養子に入ればいいのだ。幸いにしてリートベルフ夫妻に僕は気に入られているし、事情を話して説得すればできないこともないだろう。
「だがそれでは公爵家の世継ぎ問題が起こる。父はそれを望まないだろうね」
「カテリーナには王太子との婚約を破棄させます」
「説得でもするのかい?」
「そんなものは不要でしょう。側妃の子が男であろうと女であろうと、必ずヴェーナー家が動くはずです。フロイデンベルク家の頭をお爺様が抑えている以上、ヴェーナー家が王妃派を切り崩せればエドウィン王子を失脚させるのはそう難しくないのでは?そうなれば父はカテリーナに婚約を破棄させるはずです」
「可能性は高いが、それではヴェーナー伯爵の出方次第によるところが大きすぎる。たしかにあの家は野心に満ちていて、期待はできるがね」
こちらの意見を否定する内容の割には叔父の語り口は楽しそうである。何か考えがあるのか…。
「デーニッツ伯爵家には、未来が見える美貌の占い師がいる」
聞いたことはと尋ねられ、首を横に振る。
占いなどは信じない質なのだ。
「あまり表沙汰にされていない存在だから、知らなくて当然さ」
なら聞くな。
「なんでも側妃の懐妊も予言していたらしいと小耳に挟んでね、興味深いから部下を潜り込ませてみたんだ。そうしたら、今度はとある子爵家の令嬢こそが未来の王妃だと予言したと報告が来た。僕は占いなんてものはちっとも信じていないんだが、ひと騒動起こしてくれそうな楽しい気配を感じないかい?」
楽しいかは理解に苦しむが、叔父と祖父はすでに新しい計画を立てていたということか。
何とかして協力を取り付けようと臨んだ反動か、わずかばかりの脱力感に見舞われる。いや、今は叔父の様子を見るに僕が死んだふりをする話に関して彼が乗り気なことを喜ぶべきだろう。
それから叔父といくつか計画の土台を話し合っているうちに、馬車は目的地に到着した。
「僕としてはお前の好きなようにさせてやりたいと重々思っているんだが、本当にいいんだね?死んだことになれば王どころか、公爵の地位も手に入らなくなる。お前はいろんな可能性を捨てることになるんだ。しかもベルンハルトが死んだからといって、お前自身に降りかかる火の粉はなくならないだろう。それでも、本当にいいのかい?」
馬車の扉が開かれ、眩い光が洪水のように押し寄せてくる。
眩しくて目を眇める先には、相変わらず少々ぼろなリートベルフ屋敷がたたずんでいる。
このぼろさが良いのだと豪語していたリジィの姿を思い出し、思わず口元が緩む。
地位や名誉にはもとから興味はない。
降りかかる火の粉があるのなら、薙ぎ払えばいい。
可能性のある一人の未来よりも、少しくらい不自由な二人の未来を僕は選ぼう。
今更一人になど戻れるものか。戻ってたまるか。
ふつふつと闘志に似た感情が湧き上がる。
そうだ、僕はもうリジィの手を離す気などないのだ。
「それは唯一の愛情とやらよりも大切なものですか?」
はっきりと見えるようになった叔父の顔は数年ぶりだと言うのに、まったく変わっていなかった。むしろまともな格好をしているぶん、若返ったように感じるほどだ。
我ながら気分が高揚して気色の悪いことを言ってしまった気がする。
叔父は僕の返答に一瞬呆けたのち、さすが僕の甥っ子だと大いに笑った。僕たちは一滴たりとも血は繋がっていないのだが…。まぁいいか。
「そこまで言われては仕方ない。父には僕から言っておくよ」
叔父は男兄弟の中では末っ子なのだが、おそらく子供の中で最も発言力のある人物だ。その叔父が祖父に言うというのだから、僕の希望は叶えられるだろう。多少は祖父の企みに協力しなければならなくなるかもしれないが、それはおあいこというやつだ。
少し前までなら、叔父に相談しようなど思いもしなかっただろう。
だが最近僕は、叔父は叔父なりに僕を大切に思ってくれているのではないかと素直に受け止められるようになっていた。
これもリジィのおかげなのかもしれない。
「ありがとうございます」
ステップを降りながら感謝の言葉を伝えると、ウィンクを返された。
明らかにからかわれている。
前言撤回だ。この人は僕のことをきっと、面白い暇つぶしだと思っているに違いない。
出迎えてくれた侍女にリジィの居場所を聞くと、中庭にいると教えられた。
リジィの乳姉妹だという彼女に、今日は寒いから抱きしめるチャンスですよ!というよくわからないアドバイスをもらったが適当に受け流す。
勝手知ったるなんとやらで中庭へ向かう足は、次第に早足になって、小走りになり、気が付けば僕は走っていた。
早くリジィに会いたいと、心が足を急かす。
回廊に出ると、一気に視界が開けた。綺麗に刈りそろえられた草木を背景に、先ほどまで降っていなかった白い物がちらちらと舞っているのが見える。
リジィは薄着のまま、今年初めての雪を興味深そうに見上げていた。半開きになった口から白い息が生まれて、冷えた空気に霧散していく。
「リジィ!」
僕に気が付いて、リジィはいらっしゃいと能天気に笑った。
雪が降るような日に相応しくない薄着でいるものだから、鼻が真っ赤になってしまっている。馬鹿だなぁと思うけど、そこがリジィのかわいいところなのだと思うあたり、僕も相当馬鹿になっているのかもしれない。
僕には恋だの愛だのといったものがよくわからない。
けれど、もしそれらを自覚する日が来るのなら、きっとその相手は彼女なのだろう。
まぁそんなことは今どうでもいい。
とりあえず誰かのアドバイスを活かして彼女を抱きしめるべく、僕は彼女のもとへと真っ直ぐに駆けていった。




