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第五章 アルフレッド・マクニール 3・4

 3


 旗を持った発走委員が馬場の先へゆっくりと遠ざかっていった。あの旗が振りおろられれば、いよいよレースが始まる。

 メリッサはパースニップをスタート地点に向かわせる。馬を落ち着かせるため、いつもの癖で頭の後ろを撫でてやろうとするが、すんでのところで手を止める。結び目に下手に触らないほうがいいのか、と躊躇したからだ。

 メリッサの動きに気づいたのか、パースニップが不思議そうに振り返った。その顔は奇妙な覆面にすっぽりと隠れている。

 下見所でアルが提案したこの馬装は、執行委員から問題ないとのお墨付きを得てレースでの着用が許可された。相手の馬主も面倒になったのか、さしたる抵抗も見せなかった。

 もちろんアルは、酔狂でこんな覆面をパースニップに被せたわけではない。勝つためにはこうするしかない、とアルはいっていた。ただし、うまくいくかどうかは、やってみなければ分からないとも――。

「……本当に乗る気か、その馬に?」

 スタート地点で話しかけてきたのは、隣に並んだベイトニアンの鞍上、ギルバート・スティーブンスだった。

「なんだよ、今からでも馬を取り替えたくなったか?」

 メリッサは冗談を返したが、スティーブンスは顔をしかめる。

「……その馬の癖については、私も知っている。下手をすれば、きみが命を落とすことにもなりかねないのだぞ」

 命を落とすとは、はっきりいってくれる。そういえばパースニップはスティーブンスが師事するオリヴァー・マクニールの牧場で生まれたのだったか。だったらこの男もパースニップにまたがったことがあるのかもしれない。

「……同じことをさっき、うちの馬喰にもいわれたよ。だからいいかえしてやったさ。死んでもパースニップをゴールまで運んでやらあ、てな」

 メリッサが不敵に笑うと、スティーブンスはますます眉間の皺を深くした。……ひょっとして心配してるのか? だったらそりゃあ、お門違いってもんだぜ。

「そんな覆面で、その馬の気性難が解消するとは思えない。いざとなったら無理をせず全力で馬を止めるべきだ」

「ご忠告どうも。そっちこそ、足元をすくわれないように、せいぜい注意するこった」

 皮肉を返すと、スティーブンスは説得を諦めたのか、それ以上はなにもいってこなかった。メリッサも前に向きなおる。

 コースの先で、発走委員が力強く旗を振り下ろしたのは、その直後だった。


 *

 

「は、始まったわ!」

 決戦の火蓋が切って落とされた瞬間、リアは席から立ち上がってコース上を凝視した。ゆったりとした椅子が用意された馬主席だが、悠長に座って観戦などできそうにない。

「頼むぞ、メリッサ!」

 エドワードも遠くコースへ向かって声を張り上げた。その横には、心配そうな顔で戦況を見守るオールコックとサム、そして祈るように手を組み合わせるマルタもいる。誰もが勝利を願っていた。

 眼下では一般席に集まった観客たちが口々に歓声を上げていた。順調なスタートを切った二頭が彼らの目の前を駆け抜けていったのだ。

「よし……今のところは問題ない」

 観客席の前を駆けていくパースニップを目で追いながら、アルがつぶやいた。しかしその口振りとは裏腹に、彼の表情は厳しい。

「まったく……まだ始まったばかりだというのに騒々しいものだ。競馬など、直線に戻ってくるまで見るところもないだろう」

 椅子にふんぞり返ったダスティが冷ややかにいいはなった。彼の側には秘書の男がついているだけで、オリヴァー・マクニールは姿を消したままだった。

  そのとき、観客の声がいちだんと大きくなり、リアはレースに目を戻す。最初の直線で早くも二頭に差がつきはじめていた。一馬身、二馬身とリードを広げはじめたのはベイトニアンのほうだ。

「ア、アル、大丈夫なのか!?」

 うろたえるエドワードを、アルは片手を上げてなだめる。

「慌てるな。スタートダッシュはどうしたって体格とパワーで勝るベイトニアンのほうが早いんだ。逆にしなやかに体を伸ばして走るパースニップは徐々にスピードに乗せていったほうがいいタイプ……。メリッサのやつはちゃんと心得て乗ってくれてる」

 それを聴いてリアもとりあえず胸をなでおろした。

「そ、そうだったわね。じゃあ、レース後半までは調教のときと同じように、このくらいの差を保って進めるのかしら?」

 思えばこれはリアたちが当初想定していた展開だ。それに、パースニップは前を走る馬を怖がる気性なのだから、ベイトニアンの後ろにぴったりとついて走らせるのは危険だ。

 つまりこの三馬身差はリアたちにとってはおあつらえむき――しかしアルの顔つきはそこで険しさを増した。

「いや……こっちの思い通りにやらせちゃくれないはずだ。向こうにあの男がついているなら、まずはここで仕掛けてくるはず……」

 アルの懸念は的中してしまった。

 第一コーナーに差し掛かったとき、ベイトニアンとパースニップの差が一気に縮まったのだ。


 *

 

 第一コーナーを迎えると同時に、スティーブンスはベイトニアンを減速させた。もともとコーナーを曲がるときは自然とスピードが落ちる。だから減速といっても派手に手綱を引いたわけではない。手綱を押さえる手にほんのわずか力を込めただけ。しかしそれで充分だった。馬にも余計な負担は掛かっていないはずだ。

 後続が近づいてくる気配を感じた。こちらが意図的にスピードを緩めたことで、相手との差が詰まったのだ。

 ちらりと後ろを振り返る。パースニップは徐々に自分たちへ迫っていた。狙いどおりだ。ここで急に手綱を引けば馬の走りはバラバラになって体力を消耗してしまう。つまり、パースニップはこのままベイトニアンの真後ろにつけるしかない。あの馬にとってそれは致命傷になりうる。

 第一コーナーで相手を迎えうて。それが師から出された指示だった。その狙いは訊くまでもなかった。前を走る馬を恐れる気性のパースニップに揺さぶりをかけろということだ。

 左前脚が内向しているせいでベイトニアンは本来左回りをやや苦手とする。向こうはこの点も考慮して左回りでのレースを提案してきたのだろう。だがそれも師は見通していた。スピードを緩めることでベイトニアンはコーナーを外側へ膨れることなく走れている。距離のロスはこれで防げる。

 スティーブンスにとっても、この程度のスピードならばベイトニアンを内ラチぴったりにつけて走らせることは造作もなかった。これならばパースニップはベイトニアンの外へ来るしかあるまい。そこでパースニップがパニックを起こしたとしても、馬は外へ逃げていくだろうから、大きな事故にはならないはずだ。あとはアップルビー騎手が早めに諦めて馬を止めにかかれば――。

「――な、なに!?」

 警戒のため再度斜め後ろを確認したスティーブンスは、驚くべきものを目撃した。

 追いついてきたパースニップが、ひるむ素振りなど微塵も見せずにベイトニアンへ並びかけてきたのだ。二頭の間隔は馬一頭ぶんも開いていない。むしろ、向こうから馬体を寄せてくる気配さえ見せている。

「オラオラ、どうした? そんなちんたら走ってっと置いていくぜ!」

「く……っ」

 アップルビーの挑発はブラフとは思えなかった。ここで前に出られるのは、ベイトニアンの脚質から考えて不利だ。スティーブンスは慌てて手綱を押してベイトニアンに加速をうながす。

「おっと、せっかくだからもうちょっと付き合ってくれよ」

 抜け出そうとしたところに、アップルビーはなおも馬体を併せてきた。こちらにプレッシャーをかけ、余計な脚を使わせるつもりか……っ。

 ムキになって相手の策略にはまるのは愚かだ。スティーブンスはベイトニアンをなだめ、折り合いに専念する。

 しかし、なぜ……? パースニップは目の前に馬が迫ると正気を保てなくなる気性のはず。それなのになぜ、ベイトニアンを追いかけてきたパースニップは一切足並みを乱していないのだ? あれだけの癖馬が一夜にしてここまで豹変するとは考えにくい。

「訳が分かんねえって顔だな? あんたのそんな顔が見られるとは、こりゃあいつに感謝しないとな」

 皮肉げに笑うアップルビーに、スティーブンスは困惑を深める。まさか……すべて彼らの狙いどおりだというのか? スティーブンスはパースニップの顔面を覆う布切れに目をやる。

「その覆面か……!」

 まさか、覆面で視界を閉ざして前の馬を見えなくしている、とでもいうのか? しかし覆面といえど、両目の部分は丸く開けられている。見えないはずはない。

「残念。この覆面は、目隠しなんかじゃないのさ」

 アップルビーは得意げにいった。

「ウチのセンセイの話じゃあよ、こいつは耳隠しなんだと」


 *

 

「耳隠し……?」

 リアは思わず訊き返した。パースニップに被せた覆面の狙いを、アルはそう表現した。

「パースニップが恐れていたのは、側の馬が立てる物音だったんだ。特に大きな蹄鉄音に対しては敏感に反応しちまうらしい。生まれつきのものか、仔馬の頃になにかあったのか……原因は定かじゃないが、とにかくあいつは、音が怖いから前の馬が近づくと不安になって走るどころじゃなくなるんだ」

 第二コーナーを曲がって向こう正面に差し掛かる二頭を注視しながらアルはそう語った。パースニップはベイトニアンにぴったりとくっつきながらも、軽快な足取りを保っていた。

「物体じゃなく、物音を恐れていたのか……。しかしアル、よくそんなことに気づいたね」

 エドワードが唸ると、アルは微苦笑を浮かべた。

「たまたまさ。あいつは山の中で、遠くにいた俺の声を聞き分けて駆け寄ってきたんだ。そのときに思ったんだよ、ひょっとしたらこいつは、やたらと耳がいいんじゃねえかって」

「その敏感すぎる聴覚を塞ぐために、耳をすっぼり覆うあの覆面を利用したんだね?」

「おまえのおかげさ、エドワード。例の兜を知っていなかったら、きっと思いついていない策だ」

 アルから褒められたエドワードは嬉しそうにはにかんだ。

「小癪な……なにが耳隠しだ」

 こちらの会話が聞こえていたらしく、後ろからはダスティの忌々しげなつぷやきが聞こえてきた。リアはちょっと胸をすく思いも抱いたが、すぐに気を引き締める。レースはまだまだ序盤。本当の戦いはこれからなのだ。

「ああっ! またベイトニアンがリードを広げていませんか!?」

 マルタが向こう正面を指さして叫んだ。遠目ではっきりとは見えないものの、向かう正面の中程にさしかかるあたりで、漆黒の馬体が栃栗毛を引き離しにかかっていることが確認できる。

「向こう正面は丘になっている。あの部分はちょうど上り坂だ。スティーブンスは自分たちに有利な箇所でリードをとっておこうって腹なんだろう。逆にメリッサは無理に追いかけていないから、その差が出てるんだ」

 冷静に戦況を分析したアルも、その表情は厳しい。やはり上り坂ではベイトニアンに分があるのか。そして、勝負どころとなる最後の直線にも上り坂が控えている。

「メリッサ、パースニップ……頑張って」

 リアはただ祈ることしかできない。ここからはもう、走る彼ら以外になにかをできる者はいないのだから。


 *

 

 向こう正面の中程まで続く上り坂の頂上を過ぎ、ベイトニアンは一瞬、メリッサの視界からその姿を消した。

 その瞬間、メリッサの胸中に不安と焦燥が一挙に広がった。この一瞬で、ベイトニアンは一気にスピードを上げたのではないか? こちらも追い上げにかからなければ、直線を迎えた頃には決定的なリードを奪われているのではないか?

 しかしここで脚を使ってしまっては、ラストスパートの脚が鈍ってしまう。メリッサは唇を強く噛み、逸る気持ちを懸命に抑え込んだ。

 再びベイトニアンの姿が見える。こちらとの差は先ほどとほぼ変わっていなかった。だが、スティーブンスはわずかに振り返り、こららの位置を確認した。すでに冷静な表情に戻っていたが、こちらになにを期待していたのかはしっかりと顔に書かれていた。

「へ……たまんねえな、こりゃ」

 口元から自然と微笑が漏れた。ゾクゾクするような駆け引きだ。これまで数えきれないほどのレースに騎乗してきた。しかし、ここまで痺れる勝負に身を投じたのは初めてといっていい。

 その理由は間違いなく、相手があのギルバート・スティーブンスだからだ。やつの腕は本物だ。いかつい見た目から腕力で馬を動かすことに長けた騎手と見られがちだが、スティーブンスの本領はそんなところにはない。本当に恐ろしいのはレース中の冷静な駆け引きのほうだ。スティーブンスはスタートからゴールまでのレースの流れを支配する。他の騎手は、まるで操られているかのように勝負どころを見誤ってしまい、多くの場合自滅してしまうのだ。もちろんいつもうまくいくわけではない。しかし、やつの思い通りにレースを運ばれたときは手がつけられなくなる。自分と相手の馬の力関係や癖を熟知しているからこそできる芸当だ。

「……上等じゃねえか」

 無論、黙ってスティーブンスに踊らされるつもりはない。むしろ一泡吹かせてやると、メリッサは息巻いていた。

 向こう正面の中程から、第三コーナーへかけての緩い下り坂。ベイトニアンも末脚を温存するため、加速を抑えつつ走っているようだ。とはいえレースも後半、先ほどのコーナーでのようにあからさまにスピードダウンする様子はない。ベイトニアンはある程度のスピードを保ちつつ、左回りのコーナーを曲がっていかなければならない。

 チャンスだ。メリッサは慎重にパースニップに加速をうながし、前との差を詰めにかかった。ラチ沿いぴったりを走らせ、少しでも距離のロスをなくす。対して、左脚がやや内向しているため左回りでは外へ膨れざるをえないベイトニアンは、どうしてもパースニップよりは大回りにコーナーを回っていた。

 このわずかな差にこそ、付け入る隙がある。

 下り坂の勢いも利用してメリッサは思い切ってパースニップを行かせた。反応は機敏だった。器用にコーナーを回ったパースニップは一気に前との差を詰めた。最終コーナー。メリッサたちは再びベイトニアンの後ろ姿を射程に捉えた。

 ここが勝負どころだ。

 スティーブンスが振り返ってこちらの挙動を確認した。やはりやつも、こちらの狙いを読んでいる!

 だがもう相手には構っていられない。ここからはもう、自分たちのなすべきことに全力で取り組むだけだ。

「うおおおおっっ!」

 ベイトニアンが最終コーナーを抜けにかかった瞬間、メリッサはパースニップに鞭を入れ、ベイトニアンの内側へ突っ込ませた。

 直線に入ってしまえば、スティーブンスはいつかのレースのように巧みに進路を塞いでくるだろう。そうなるとバースニップは、外へ持ち出すなりして自分の進路を確保しなければならなくなる。しかしそんな悠長な真似をしていては上り坂でベイトニアンに引き離され、逆転は困難になる。

 そこでアルが考えたのが、第四コーナーでベイトニアンを抜きにかかるというこの策だ。馬体の欠点から、ベイトニアンが第四コーナーで必ず外へ膨れる。スピードに乗った状態だから、スティーブンスといえど完全には馬を御しきれない。そこで内をすくうのだ。たしかに、ベイトニアンと内ラチのあいだに生まれるスベースは馬一頭ぶんあるかないかだろう。実際にそうだった。しかし、勝つためにはそのわずかな間隙を突くしかなかった。

「チッ――!」

 悔しげに奥歯を噛むスティーブンスが真横にいた。成功したのだ、ベイトニアンの内をすくうことに! 

「これでようやく、あのときの借りは返したぜ!」

 だがまだ気を抜けない。スパートをかけたせいでパースニップの馬体も外側へ引っ張られる。すぐ外にいるベイトニアンとぶつかってしまっては、こちらの走りがバラバラになる恐れがある。パースニップの態勢を保つため、メリッサは左へ体を傾けた。鞍から腰を浮かせるメリッサ独特のフォームは、こうした体重移動にはもってこいである。

「ぐ……っ」

 それでもなお、姿勢の制御は容易ではなかった。片側へ体重をかけたせいで、左の鐙がラチに接触した。脚が取られ危うくバランスを崩しそうになる。しかしメリッサは懸命にこらえる。ここでヘマをやらかすわけにはいかない。

 体がふっと軽くなる。なんとか持ちこたえたようだ。パースニップの体は完全に前を向いた。残りは四ハロン足らず。あとは一直線にゴールを目指すだけ――。

 だが異変はそこで起こった。

 パースニップが一瞬、メリッサのほうを振り向いたのだ。

 メリッサの一瞬の油断が伝わってしまったのか? それとも、布越しとはいえ鐙でラチが削られる音が聞こえてしまったのか? 原因は分からない。とにかくパースニップが首を回したことが、思いがけない事態を招いてしまった。

「なっ――!?」

 後頭部の結び目がほどけ、パースニップの顔から覆面が外れてしまったのだ。脱げた覆面は、あっという間に風に飛ばされてしまう。

 この瞬間、パースニップの耳を恐ろしい音が襲ったに違いない。すぐ隣を駆けるベイトニアンが作り出す、怒涛のごとき蹄鉄音が。

「アップルビー!」

 スティーブンスの呼び声がやけに遠くに聞こえた。

 メリッサは、激しく首を振りはじめたパースニップの背で、手綱にしがみつくだけで精一杯だった。


 *


  「あ、ああっ!」

 信じられない光景に、誰もが目を疑った。観客からも大きなどよめきが起こる。もっとも、その原因を把握しているのはアルたちだけだっただろうが。

 作戦どおり、メリッサとパースニップは最終コーナーのカーブを利用してベイトニアンの内へ進路をとった。そこからは二頭の末脚勝負が始まるものと思われた。

 ところがそこで突然、パースニップの覆面が脱げてしまったのだ。ベイトニアンの脚音を聴いたのだろう、パースニップは頭を上げて大きく減速、メリッサの制御を振り切り、外ラチへ向かって逸走を始めた。

 スティーブンスも異変に気づいたようで、ベイトニアンをすばやく内へ動かし、真後ろを横切るパースニップとの接触を巧みに回避した。態勢を立て直されたベイトニアンはゴールへ向かって一直線に駆けていく。立ちはだかるのはもう上り坂だけだ。

「くそ……」

 アルは柵を強く握りしめた。ここまで来てなぜこんなことが……。いや、不運だと嘆くのは筋違いなのか? 自分が覆面の結び目をもっとしっかり確認しておけば、こんなことにはならなかったのではないのか?

「ハ……勝った!」

 ダスティの嘲った声が明瞭に耳を打った。そうだ、この負けは俺のせい――。

 しかし続けて聞こえてきた声が、アルを驚かせた。

「パースニップ! お願いっ、頑張って!」

「メリッサ! まだ行けるだろ!? 持ちこたえてくれ!」

「ガンバレです~~っ!」

 リアもエドワードも、そしてマルタも、必死で声援を上げていた。オールコックもサムも、歯を食いしばってパースニップとメリッサに念を送っている。戦況に変化はない。パースニップはほとんど脚を止めそうになっている。負けはもう確実だ。なのに、なぜ……。なぜこいつらはこんなにも声を枯らして応援できる? なぜ自分たちの馬をまだ信じられるんだ――?

「――あのお嬢さんのほうがおまえよりもよほど馬の力を分かっているようだな。情けない。そんなことではホースマンとは到底いえないな」

 歓声とどよめきの隙間から、その声はアルの不意に耳に飛び込んできた。記憶の底に残り、どんなに憎もうとも決して忘れることはないであろう声だ。だから、誰だとは問えなかった。

「ど、どこだ!?」

 しかしその姿は見えない。不気味な声だけが耳に届く。

「あの馬はおまえに任せる。もう一頭のほうは好きにするといい。どうやら私は失敗したようだ」

「ど、どういう意味だ、それは――親父っ!」

 一瞬その姿が見えた気がしたが、それもすぐに見失った。すべては幻だったのか……?

「ア、アル、あれを!」

 マルタに呼ばれて我に返り、レースの様子が視界に戻った。

 目を見張った。驚くべきことが起きていた。腹の底からこみ上げてきた言葉を止めることはできない。

「~~~~っ、頑張れ!」

 パースニップが息を吹き返していた。


 *

 

 なにが起きたのか、メリッサには分からなかった。

 パースニップが走るのを止めたことではない。

 パースニップが、再び自らハミを取って前を目指しはじめたことだ。

 なぜパースニップが立ち直ったのか、なにがパースニップを奮い立たせたのか、判断しろというほうが無理な状況だった。メリッサは手綱にしがみつくことしかできていなかったのだ。

 ただ、小さく声は聞こえた気がした。自分が聞こえているならば、パースニップのすぐれた耳にはきっと届いていることだろう。

 頑張れ――。

 あいつらの声援に、パースニップは応えようとしている。恐怖を克服しようとしている。

 馬がその気なら、騎手が諦めるわけにはいかない。

「う……おおおおおっっっ!」

 メリッサは体勢を立て直し、渾身の力を振り絞って手綱をしごいた。がむしゃらに腕を動かす。持てる力のすべてをパースニップに託すかのように。

 得意とはいえない上り坂。しかしパースニップの脚色は衰えなかった。歯を食いしばって坂に立ち向かっていることが伝わってくる。坂を登り切る。残りはニハロン。

 ベイトニアンとの差はぐんぐん詰まっていく。だがベイトニアンも簡単には前を譲らない。

「オオオオオオッ!」

 スティーブンスが鞭を連打し、必死でベイトニアンを粘らせようとする。ベイトニアンもまた、芝を削り取らんばかりの力で地面を蹴っていた。限界を超えた脚だ。脚が壊れたっておかしくない。それでもベイトニアンは豪脚を繰り出しつづける。それはこの世に生を受けたサラブレッドの宿命なのか。

 パースニップもまた限界を超えようとしていた。これ以上ないというくらい体を伸ばし、少しでも遠くへ跳ぼうとする。ゴールまでラスト一ハロンを切っている。

 そのとき、メリッサは自分の体がガクンと沈むような感覚に襲われた。故障かと一瞬ヒヤリとしたが、そうではなかった。

「……っ!?」

 ふわりと体が浮き上がるような感覚。頬をかすめる風がくすぐたっかった。ああ……良い気持ちだ。目の前には芝生の緑と空の青だけが広がっていた。レース中だというのに、こんな気分になるなんて――。

 パースニップは、しなやかに体を伸ばし、地面に滑るように走っていた。一完歩ごとにベイトニアンに迫っていく。並びかける。激しい蹄鉄の音は耳朶を打っているはずだが、パースニップはもうひるまなかった。前だけを向き、ターフを駆け抜けた。

 メリッサの目がウイニングポストをはっきりと捉えた。隣にはもう何者もいなかった。

 *

 

 決着の瞬間、場内は割れんばかりの大歓声に包まれた。

 ほとんど止まりかけていたパースニップが残り三ハロンの地点から再び加速。馬場を斜めに突っ切るような進路どりでぐんぐんとベイトニアンに迫っていき、残り一ハロンを切ったところからまた加速。跳ねるように馬体を躍動させたパースニップは、必死の抵抗を見せていたベイトニアンを並ぶ間もなくかわしさった。パースニップは絶望的に思えた状況から息を吹き返し、ゴール地点では相手に一馬身ほどの差をつけていた。鮮やかな逆転劇だった。

「勝った、勝ったぞ!」

「信じられねえ! あそこから逆転しやがった!」

 口々に勝どきを上げたエドワードとサムがきつく肩を抱き合っていた。

「よかったです~~!」

「やった、のね……」

 マルタは感極まったのか涙を流し、リアは対照的に呆けたような顔になった。しかしその頬には一筋の涙が伝う。オールコックがハンカチを用意する頃には、お嬢様の頬はぐしゃぐしゃに濡れていた。

「馬鹿な……。こんなことが……」

 悔しげに漏らしたのはダスティだ。いつの間にか彼も椅子から立ち上がり、呆然とコースを見下ろしていた。

 喧騒が続くなか、エドワードが勇ましくダスティに詰めよった。

「賭けは僕たちの勝ちだ! 約束どおり、ミースフォードの土地を譲渡するという話はなかったことにしてもらおう! もちろん、リアとも結婚させない!」

 エドワードから勝利を宣言され、ダスティはギシリと歯を噛みしめた。

「分かっている! ふん! あの程度の土地ならいくらでも――」

「ま、待って! あれを!」

  突然声をあげたリアは、大きく目を見開いて、コース上を指さした。皆の視線が一斉にそちらへ向かう。

「ヤ、ヤベェ!」

 アルの目にも、血の気が引くような光景が飛び込んできた。柵を飛び越え、下にいた群衆もかきわけてコースへ急ぐ。なんてことだ――。

 ウイニングボストの付近で、尻もちをついたベイトニアンが、動かなくなっていた。

 

   *

 

 飛び出していったアルのあとをリアたちもすぐに追った。

「おい、大丈夫か!?」

 一同が馬場へ駆け込んだとき、ちょうどメリッサがスティーブンスを助け起こしているところだった。スティーブンスは馬上から振り落とされたらしく、ベイトニアンの傍らでうずくまっていた。メリッサはゴールした後で異変に気づき、急いで引き返してきたようだ。

「私のことはいい……馬を」

 スティーブンスにうながされ、アルはハッと顔を上げた。

「ゴールしたあと、ベイトニアンは突然足並みを乱してよろめいた! その後、立ってられないって感じで倒れちまった!」

 メリッサが切迫した声でそのときの様子をアルに伝えた。

「くそ……」

 悔しげに漏らすと、アルはベイトニアンの様子をうかがいはじめた。ベイトニアンは、全身にじっとりと汗をかき、荒い息を繰り返していた。アルはベイトニアンの四肢に順に触れていく。左前脚に触った瞬間だった。

「ヒヒィィンッ!」

 ベイトニアンが悲鳴をあげた。まさに悲鳴としかいいようのない音色だった。近くにいたパースニップがビクリと身をすくめた。しかしパースニップはベイトニアンにゆっくりと歩み寄り、心配するかのように首を下げて小さく鳴いた。

「お、おい……なんだ? 私の馬になにがあったのだ……?」

 おそるおそるといった声にリアは振り向いた。不安げに様子を窺っていたのは、ダスティ・キーガンだった。

 アルは重い腰を上げ、ダスティのもとへ向かう。

「……ベイトニアンは、左前脚の腱をひどく痛めちまっている。レース前の調教の過程で、相当疲労が溜まっていたんだろう。しばらくレースで走るのは無理だ。いや、うまく治っても競走馬として復帰できるかどうか……」

 沈痛な表情で告げるアル。ダスティの顔にはみるみる動揺が広がっていく。

「な……なんだと……?」

 そこへ、少し足を引きずったスティーブンスが近づいてきた。

「申し訳ありません、私の責任です。ゴールの目前、ベイトニアンは最後の力を振り絞るために手前を入れ替えました。そこで走りのリズムが乱れて、着地する脚に過度な負担が掛かってしまったのでしょう。私には止められませんでした」

 スティーブンスはダスティに向けて深々と頭を下げた。メリッサは苦悶の表情でその様子を見守っていた。

 言葉を失うダスティを見て、リアも胸が痛んた。ダスティは馬を大切にしているとは思えない男だが、それでも愛馬に突然不幸が降りかかり、ショックを受けているのかもしれない。

「キーガンさん、あの……」

 リアがせめてもの慰めを口にしようとしたとき、ダスティはハッと目を見開いた。

「そ、そうだ! マクニールさん! あの方ならば、どうにかできるのではないのか!?」

 すがるような目を向けるダスティから、アルは顔を逸らした。

「……あの男なら、もう行っちまった。こうなることも、分かっていやがったんだ」

 この口振り……アルはマクニールからなにかいわれたのか? でもいつ――?

「キーガンさん、先生から事前に言伝てを頼まれています」

 そう切り出したのはスティーブンスだった。ダスティはいぶかしげにスティーブンスを見返す。

「ベイトニアンの処分は、どうぞお好きになさってください、と――」

 この言葉に激昂したのは、ダスティではなかった。

「てめえら! やっぱりベイトニアンに無茶な調教をしやがったな!」

 アルはスティーブンスの胸ぐらに掴みかかった。

「おい、やめろ!」

 メリッサが慌ててスティーブンスからアルを引き離した。それでもなお自分をにらみつけるアルを見返し、スティーブンスはわずかに目を細めた。

「やはりきみは……先生のご子息だな」

「え――?」

 リアは驚いてアルを見た。アルが、英国一と言われる名伯楽オリヴァー・マクニールの息子――? 

「……あの男を父親だと思ってたのは、五年前までだ」

 一瞬驚いた表情を見せたアルは、スティーブンスから顔をそむけつつそう答えた。

「……きみの相馬眼は、父上から受け継いだものなのだな」

「だったら、なんだ? 俺もあの男と同じように、使えなくなった馬は見捨てろっていいたいのか?」

 スティーブンスが一瞬、毒づいたアルをにらみ返したようにも見えた。しかしすぐに冷静な顔つきに戻り、小さく首を振る。

「勘違いするな。それを決めるのは、我々ではない」

 スティーブンスは再びダスティに視線を向けた。

「う……あ……?」

 しかしダスティは視線をさまよわせるばかりで、まともな答えを返せなかった。リアは初めてこの男に同情した。リアとの賭けに負けて土地と金を得るチャンスをふいにしたうえ、自慢の所有馬まで失ってしまう。生臭い話だが、資産の面でも痛手だろう――。

 そのときリアの脳裏に、ある言葉が不意に蘇った。

 ――無事にレースが終わったら、あなたに私の馬を買っていただきたい。

 マクニールはたしか、レースの前にそんなことをいっていなかったか? 

 そうか……そういうことなのか。リアのなかで、ひとつの考えが固まった。

「ちくしょう……っ、いったいどうすれば……」

 自分の無力さを呪うアルの肩に、リアはそっと手を置いた。眉をしかめたアルに優しげに微笑み返し、リアはダスティの前に進み出る。

 焦燥しきった顔つきのダスティを見上げ、リアはすっと背筋を伸ばす。英国貴族・ミースフォード家の当主として、自らの考えを毅然と告げなければならない。

「キーガンさん、折り入ってご相談があります。父が遺した負債の返済を取り消していただける件――あの話はなかったことにしていただいてかまいません。その代わり、あなたの馬を一頭、私に売ってくださらないかしら。ええ、あなたがお持ちの、あのベイトニアン号を、です」


 4

 

「ああ、パースニップ君! そんなに急いじゃ危ないですよっ」

 放牧場に入るなり、パースニップはマルタの手を振りほどくようにして飛び出していった。青空の下をひらひらと舞う蝶々にじゃれついて駆けまわるパースニップを見て、エドワードは思わず顔をほころばせた。

「ハハ、元気なものだね。数日前にあんな激しいレースをしたばかりだっていうのに」

「走ることが楽しくなったんだろうよ。初めてレースに勝った馬にはたまにあるんだ」

 隣にいたアルが、穏やかな顔でパースニップを見つめながら答えた。

「そっか……。勝ったのよね、私たち」

 エドワードの横で、リアが感慨深げにつぶやいた。エドワードも万感の思いで目の前に広がる景色を見渡す。抜けるような青空。髪を柔らかに揺らす風。かすかに聞こえてくる川のせせらぎ。芝生の緑。今この景色があるのは、パースニップのおかげだ。

 あのレースから数日が経過していた。ダスティとの賭けに勝ったことで、ミースフォード家の土地は守られた。もちろんリアとエドワードの婚約も無事、継続された。

 守りぬくべきものは守りぬけた――しかし、新たに手にすることになったものもある。

「元気だっていうなら、こいつもそうだぜ」

 メリッサの声がして、エドワードたちは振り返った。

「ベイトニアンじゃないか!」

 メリッサが連れてきた青毛の馬は、ややぎこちない足取りながらも、しっかりと自分の脚で大地を踏みしめていた。

「もう歩かせて大丈夫なの?」

「それはこっちのセンセイに訊いてみなよ」

 メリッサが顎をしゃくると、アルは短くため息をついた。

「幸い、腱の怪我はそれほど深刻なものじゃなかった。馬房でじっとさせたままじゃ体重が増えて余計に脚への負担が大きくなるからな。今日から少しずつ運動させるように、俺が頼んだんだよ」

「そっか……。じゃあ、この子もまた走れるようになるのね」

 リアは優しげな目でベイトニアンを見つめた。リアの馬が快方に向かっているならば、エドワードもひと安心だ。

「しかしあのときは驚いたな。まさかリアが、ベイトニアンを買い取るなんていいだすんだから」

 ベイトニアンを譲ってほしい――リアの提案にダスティは素直に応じた。ダスティには得しかない取引だから断る理由もなかっただろうし、なにより彼自身あのときは茫然自失でいつもの嫌味をいう元気も残っていなかったのだろう。譲渡手続きはリアが主導してテキパキと進められ、その日のうちにベイトニアンはミースフォード家の厩舎に連れてこられた。

 競走能力を失ったサラブレッドの未来は決して明るくない。リアの機転がなければ、ベイトニアンもあのまま破棄されていてもおかしくはなかった。

「でも……よかったのかよ? こいつの代金だって安くはなかったうえに、結局借金も残ったままなんだろ?」

 アルは遠慮がちにリアを窺った。しかしリアはあっけらかんと笑い飛ばす。

「いいのよ、お金なんて。まあ、あなたにパースニップの代金を支払うのは、もう少し待ってもらわなくちゃならないけどね」

「それは別はかまわねえけどさ……」

「それに私はただ、教えられたとおりにしただけよ」

「教えられたって……?」

 問い返したアルに、リアは片目をつぶってみせた。

 困惑したアルの顔に、リアは指先を突きつけた。

「その代わり、絶対にベイトニアンをまた走れるようにしなさい。それまではあなたにはウチにいてもらうからね!」

 アルはしばらく目を白黒させたが、やがて顔を伏せて微笑んで、不敵な笑みをリアに返した。

「分かったよ。まったく、あいかわらず人使いの荒いお嬢様だぜ」

 頭を掻くアルを見て、リアは満足そうに笑った。

「だったらこいつの復帰戦ではオレを乗せろよな。スティーブンスの野郎よりうまくこいつを動かして、今度こそオレのほうが上だって証明してみせるぜ」

 メリッサはベイトニアンの首すじをポンと叩いた。ベイトニアンもじゃれつくようにメリッサに頬をすりよせる。先のレースでは敵同士だった両者も、今ではすっかり打ち解けているようだ。

 そこへ軽やかな足音が近づいてきた。パースニップだ。パースニップはメリッサとベイトニアンのあいだに割り込むようにニュッと首を伸ばした。そんな様子を見てアルはからかうように笑う。

「ハハ、こいつ、自分のパートナーをベイトニアンに取られるって嫉妬してるんじゃねえか? メリッサ、おまえ、いったいどっちを選ぶつもりだよ?」

「し、嫉妬って……!? バ、バカ野郎、だいたいオレはだな、嫉妬っつーならおまえと……、って、バ、バカ野郎っ!」

 ひとりでうろたえたすえ、顔を真っ赤にしたメリッサはぷいとそっぽを向いてしまう。アルはなぜ怒りを買ったのか分からないといった顔。エドワードとリアは呆れ半分で顔を見合わせる。

 一方、人間たちのから騒ぎには興味がないのか、パースニップはアルの袖を噛んでグイグイと引っ張りはじめた。

「パースニップ君、まだ走りたりないみたいですね。今度はアルが遊んであげてください」

「お、おお、しょうがねえな」

 マルタにうながされ、アルはパースニップの誘いに応じた。いち早く放牧場へ戻っていったパースニップを追って、アルも駆けだした。 

 リアはパースニップと追いかけっこを始めたアルを眺めて微笑んでいた。

「……ねえリア。きみがさっき教えられたっていったのは、ひょっとしてマクニールさんに……?」

 リアはあの日、オリヴァー・マクニールと話をしたみたいだった。そのときにアルについてなにかいわれたのかもしれない。アルからはすべてを聴かされたわけではないが、父親のあいだに確執があるのはたしかなようだ。だからリアはさっきあんなふうにごまかしたのではないか?

 リアは風になびく髪を抑えながら、穏やかに目を細めた。

「親子だからって必ず分かりあえるとはかぎらない。だけど、あの人が馬を大切に思う気持ちは、アルと一緒だなって思ったの」

 そう答えるリアの表情は、清々しいものだった。

「そうか……そうだね」

 エドワードもすっと胸のつかえが取れた気がした。アルはこれからも父親を打倒するために馬に関わりつづけるのかもしれない。それは暗い戦いだ。しかしその途中にも必ず光はあるはずだ。なければ、自分たちが彼を照らしてやればいい。

 そう心に誓ったエドワードは、大きく息を吸い込みながら顔を上げた。

 赤髪の青年と栃栗毛の馬は、芝生の上を飛び跳ねていた。

「よし、パースニップ! どっちが速いか競走だ!」

 楽しげな笑い声をあげながら、アルはパースニップとともに朝日に向かって駆けていく。


 (了)

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