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何もかもかもつまらない…  作者: さゆっ。
0章
7/11

光の中へ

「バル。用意はいいですよね?」


「いつでもかまわないぜ?」と羽流都は目を見開く。

彼の足元から白い煙が吹き上がり銀色の髪がまきあがる。

ゆらゆらと彼の姿は煙に巻かれていく。



「龍輝。私に捕まっていてくださいね?」と彼は空いている手から青く光る自分の身長よりも大きな大剣を作り出す。


青く光るその剣はどう見てもこの男には似つかわしくない。


何故なら異常に大きいのだ。


よく筋骨隆々のゲームの主人公が担いでいるあの大剣だ。


この青髪の男は龍輝の見る限りそんな感じではない。

本当に物語にでてくるお姫様と恋に落ちるようなやさ男だ。


腕力もそんなにあるようには到底思えない。

しかし、彼はその細い片腕で大剣を持ち上げた。


その時、彼の目が青白く光っていた姿が龍輝の脳裏に焼きついた。


それを彼は羽流都めがけて力一杯振りかざしたのだった。




その威力は空を切り、白い煙を撒き散らし羽流都の体を真っ二つに切り裂いた。



―激しい突風が二人を襲う。




誰かの悲鳴が聞こえた。

その声が龍輝自身の声だと気付くのにあまり時間はかからなかった。

切り裂かれた羽流都の体は不思議なことにゆらゆらと白い煙になって消え、切り裂かれたところからまぶしい光が差し込む。




「行きましょう」と青髪の男はその光の中に足を入れる。



「ま、待った!」

羽流都は大丈夫なのか?と聞きたかったのだが出てきた言葉は龍輝が思っている言葉とは全然違うもので…。



「何か??」と彼は不思議そうに龍輝を見た。



「お前たちについていけば父に会えるか?」



彼はその言葉に深く頷いた。

しかし、彼の発した言葉は予想したものよりも曖昧な返事だった。


「貴方が会いたいと願うのであれば、会えるでしょう。」と華早はそう言ってニコニコ笑うと「他に何もなければこちらに」と龍輝を光の中へ誘いこんだ。



光の中に足を踏み入れると足元がぐるぐると縦に回りだした。

すぐに気分が悪くなる。


あまりの不快感に華早の手を離そうとしたがもうすでに強く掴まれていて…。


逃げ出せなかった。


今までいた世界が回っているのか自分が回っているのか分からない。


だが、赤い二つの光が景色の中で貼りつくように目の前に浮かんでいた。




耳の中で機嫌の悪いあの声がした。



―「いいか?目とじんじゃねぇーぞぉ??」




そのうち周りが緑に埋め尽くされ…。



夢を見た・・。



とても楽しく懐かしい夢を…。



龍輝はまだ幼い赤ん坊を腕に抱きしめて逃げていた。

何か恐ろしいものから…追いつかれたらこの子の命はないと心の中で警告がなっている。


「おい!!ラシ!追いつかれる!ここは俺が護るから先に行け!!」と左目の包帯を外しながら深い緑の髪を持つ背の高い男がそう龍輝に怒鳴っているのが見える。




深い緑の髪を持つ男の瞳は赤く、まるで爬虫類のように鋭い眼光で龍輝の隣にいる銀髪の綺麗な切れ長の目に長いまつげを持ったヒトに話しかけている。



「バル!おまえにはみえているだろ?青い光を歩けばあちらへつながっている」彼の示す方向を見て「ああ。」とそいつはそう返事を返した。



耐えきれないように龍輝は緑色の髪の男の腕を掴んだ。



祐夜(ゆうや)!!そんなこと出来ないよ」


彼は言った。


「あ?俺があいつらにやられると思ってん?」といつもより悪い目つきを一回り背の低い龍輝を見下した。



「でも…」と龍輝は口ごもった。




「なぁ?――が死んだら―――も殺される。分かるだろ?」と彼の眼は一段と鋭く、その瞳はいつもより赤く輝いていた。



龍輝には彼がすでに死を覚悟していることが分かっていた。

それでもやはりおいて行きたくない。



しかし彼の気持ちは変わらないようで「行け」と今度は優しく祐夜は龍輝に言った。


祐夜の性格上これ以上何を言ってもしょうがないと心のどこかでそう言う自分がいる。

龍輝は深くその言葉に頷き決心を決めたように走りだした。



―これが彼との永遠の別れになることを知っていた…。



「祐夜!頼みます」と遠くの方で彼に誰かがそう言っているのが聞こえた。


「ああ。任せろ」と彼はそう返した。



でも、もう龍輝は後ろを振り返らなかった。


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