第一部 復活の礎
「戦艦」
十数インチクラスの大口径、長射程の主砲と数百mmに達する強固な装甲を備えた戦闘艦の一種。大型かつ高価な兵器であったものの、長らく海戦の主力であり続けた。
しかし、航空機やそれを載せることのできる空母、潜水艦やミサイルの発達により地位を奪われ、20世紀なかばにはほとんどの戦艦が姿を消してしまった。
1992年にアイオワ級ミズーリが退役したことにより、現在は保有している国は一つもなく、また新たに建造される可能性もない。
――――――これは21世紀初頭に書かれたとある辞書で「戦艦」を調べた際に出てくる説明である。
「戦艦」
十数インチクラスの大口径、長射程の主砲と数百mmに達する強固な装甲を備えた戦闘艦の一種。
1992年から数十年間にわたり姿を消していたが、21世紀なかばから空母にかわって主力艦として再び建造が再開され、現在では22か国が保有している。
――――――こちらは21世紀なかばに書かれたとある辞書で「戦艦」を調べた際に出てくる説明である。
いったいこの数十年間でなにがあったのか?理由は複雑である。
最初のきっかけはレーダーアンテナ用の装甲材の発見である。それまでレーダーアンテナには装甲が施されていなかった。装甲がアンテナからの電波を遮ってしまい、目隠し状態になるからだ。その結果、最も重要な装備であるレーダーが丸裸なのに船体へ装甲を施したところで無意味、という発想にいたった。そうして装甲艦は廃れていった。
しかし新装甲の発見によりレーダーアンテナにも破片防御程度であるものの装甲が施されるようになった。それに一足遅れるように船体や甲板上の構造物への装甲も復活していった。
次に安価な耐G性の高い誘導装置の登場である。これによりロケット推進アシスト付きの誘導砲弾はもちろん通常タイプの誘導砲弾も需要を伸ばしていった。
そして最後に燃焼速度の速い新型装薬の開発成功である。これはもとはといえば戦車砲の威力向上のために各国の陸軍が研究を続けていたものであり、実際しばらくの間は戦車砲として使用されていたが、ある国が軍艦の艦砲装薬として試験的に採用した。
ある国とは?答えは日本である。