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夢路

二章ラスト~

……暗闇の中に、ぼんやりと浮かぶ蓮と摩南。


「今回は魂だけ翔んでしまったから、意識を消さなくても良いんだ。

怖くは無い…安心して」


『怖くは…無いよ…

蓮が一緒に居るんだし…

でもね…不思議なの…

あの女の人に…会った時も…

急に蓮の居た花園に…引き寄せられた時も…怖くは無かった…何でだろうね?』


摩南の表情を見つめながら、蓮も同じ様に思っていた。


見知らぬ世界に翔ばされながらも、摩南の心に動揺は無かった


むしろ、蓮に事の成り行きを話した時にも冷静に語っていたのだ。


蓮との一夜を過ごし、知らない次元が存在していると知ったからとは言え摩南の適応力に密かに驚いていた蓮だった。


「不思議なのは摩南の方だ…突然の出来事に、自然に馴染んで受け止めてくれる。

僕には嬉しい事だけど」


『出会ったのが…蓮だったからだよ…』


二人は瞳を見交わし微笑み合った。


「さぁ、摩南を送らないとな。

僕が印を結び念を送ると一瞬光に包まれる。

目が覚めれば、魂は自分の身体に戻ってるからね

…後で指輪を使って、摩南が帰ったのを報せてくれるかい?」


『うん…必ず念を送る…

待ってて…』


こくりと頷く摩南を見て、安心する蓮。


蓮はすうっと息を吐き、しなやかな長い指先を幾つもの形に組み替え印を切る。


一瞬目を閉じ、組んだ指先を彼女に突き付け、鋭い息を吐いた。


パアッと辺り一面が眩い光に包まれ、その中から蓮の声が響き渡った。


「摩南!

もう迷いは無い!

必ず近い内に、摩南に会いに行く。

指輪を外さないで…」


摩南も、蓮の声がする光に向かい叫んでいた。


『私も…待ってる!

蓮に会いたいの!

今は只、それだけでいいから!』


余りの眩さに目が開けられない。

それでも摩南は、蓮の声が小さくなっても叫び続けていた。


徐々に意識が霞み、蓮の声も掠れてゆく。


突然光が消え、暗闇と静寂が摩南を迎えた。

はっとして瞳を開けば、ソファーに身を委ねている自分に気付く。


まるで、転た寝でもしたかの様に、ソファーに身体を横たえていた。


時計を見れば、さほど時間も経ってはいない。


「…逢えて良かった…」


摩南は指に嵌まった指輪を顔に近付け、そっと唇を落とした。


「ちゃんと戻れたよ。

ありがとう…蓮。」


まるで、その石が蓮の唇かの様に、何度も何度も唇を重ねた。


指輪の石がほんのりと熱を伝えて来る。


「ふふっ…私の想いが、蓮に届いてるんだね。」


顔を綻ばせ、摩南はソファーから寝室へと移動した。


ベッドサイドの小さなランプを灯し、着ていたバスローブを脱ぐ。

摩南はパジャマの上だけを羽織ると、布団を捲りベッドへと潜り込んだ。


「昼間よりも、指輪の光が煌めいて見えるのは気のせいかな?」


暗闇の中、小さな柔らかな明りで指輪を眺める彼女の顔は、この上なく幸せそうだった。


一月後の不確かな約束ではなく、必ず逢える確実な約束に変わった喜びに包まれ、彼女は飽きる事無く指輪を眺める。


指から伝わる蓮の想いを感じながら、摩南は漸くまどろみ始めた。


いつもの眠りの世界に旅立ちながら、心が充実している満足感に酔ってゆく。


目まぐるしい体験が続きながらも、必ず蓮に繋がる事柄に不思議さを感じながら、摩南はゆっくりと眠りに落ちていった。


…おやすみ…蓮…


次に逢う時には、もっともっとたくさんお互いの事話そうね。


…そう、一緒に居る事から始めれば良いんだよね

何かが有っても、二人で考えていこう?


…これからが始まり…

だから…早く側に来て…


摩南は指輪を嵌めた手に顔を寄せたまま、すうすうと寝息を立て始めた。

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