7.心へのお礼
7.『心へのお礼』
家事で家が燃えてから…
初めてお給料がはいった。
心くんに全部用意してもらって…
お礼もできてないや
仕事帰りに
リナは心に渡すプレゼントを買い行く事にした
これから返していくけど…
まずはお礼伝えなきゃ…私ひとりだったら…
途方に暮れてた…
(でも…、心くんてお金持ちだし…
色々持ってるだろうし…、何が喜ぶかな…)
色々悩んで見ていると…
会社の同期の三本がいた…
「お前…なにしてんの…こんなとこ…
ははぁん…さてはついに男できたな?」
「そんなんじゃないですよ…ただ…」
「お世話になった人にお礼したいけど…男の人って何が喜ぶか分からなくて…」
「じゃあ俺が選ぶの手伝ってやるよ!かわりにメシ1回な!」
三本とは同期で…
よく、仕事の相談し合う仲だった…
まぁ…男の子の意見聞くのも悪くないよね…
心くんがピアスをしてる話を三本にしたら…
「こういうシンプルなのいいんじゃない?」
「まぁ…お前が付き合ってるとかだったら、こっちにしてお揃いって手もあるけど…」
「まぁ…家族みたいなものだよ」
シンプルなピアスを一つ買い…
心くんが喜んでくれるのを想像して…包んで貰った。
チャイナタウンの通りは、赤い提灯の光で夜でも明るかった。
屋台から漂う香辛料の匂いと、人々のざわめき。
リナは小さな紙袋を胸に抱えながら歩いていた。
(心くん…喜んでくれるかな…)
袋の中には、小さな箱。
三本が選んでくれたシンプルなピアス。
「いやぁ〜それにしてもさ」
隣を歩く三本がニヤニヤしながら言う。
「お前さぁ、“家族みたいな人”にピアスってさ…普通あげる?」
「えっ?」
リナはきょとんとした。
「だってさ、ピアスってわりと特別じゃん。
まぁでも…お前が言うなら本当にそうなんだろうな」
「そうだよ…心くんは…家族みたいな人」
そう言いながらも、リナの胸は少しだけざわついた。
(家族…だよね…)
三本は肩をすくめる。
「まぁいいや!それより飯だ飯!
約束だからな!俺、中華めちゃくちゃ食いたい!」
「ほどほどにしてくださいよ?
私あんまりお金ないんだから」
「ははっ、わかってるって!」
二人はチャイナタウンの奥へ歩いていった。
店の呼び込みの声。
蒸籠から上がる湯気。
賑やかな通り。
その時だった。
リナの腕を、ぐっと誰かが掴んだ。
「リナ!!」
驚いて振り返る。
「心くん!?」
そこに立っていたのは、真っ黒なコート姿の心だった。
いつもの柔らかい笑顔じゃない。
どこか、暗い表情。
「帰りが遅いから心配して…
リナ、帰ろう」
「え…」
リナは慌てた。
「ごめんね…連絡しなくて…!
彼に…三本にお礼したらすぐ帰るつもりだったんだ」
「お礼?」
「うん…買い物付き合ってもらって…」
そこでリナは横を見た。
「あれ?」
三本がいない。
「さっきまでここに…」
キョロキョロ見回す。
「三本ー?」
人混みの中に姿はない。
「…さっきの同僚?」
心が穏やかな声で言う。
「うん」
「あぁ、彼ならさっき急用できたって帰ったよ」
「え?」
「リナに“ごめん”って言ってた」
リナは驚いた。
「へっ?そうなの!?
あんなに奢れ奢れって言ってたのに…」
心は小さく笑った。
「急に電話きたみたいだよ」
「そうなんだ…」
少し残念そうにリナは呟いた。
「じゃあ…今日は帰ろうか。
チャイナタウンは夜危ないし」
「うん…」
心に手を引かれ、二人は歩き出した。
――――――――――
その頃。
チャイナタウンの裏路地。
ネオンも届かない、暗い路地裏。
三本は地面に押さえつけられていた。
「んんーー!!」
口は布で塞がれ、両腕は後ろで拘束されている。
周りには黒服の男たち。
一人がしゃがみ込み、三本の髪を掴んだ。
「お前…命知らずだな」
低い声。
「“あのお方”の女に手出すなんて」
三本の目が恐怖で見開く。
「んんーー!!」
男は冷たく笑った。
「悪いがな」
後ろの男がナイフを取り出す。
「“あの人に近づく男は全部消せ”って命令でね」
「んんーーー!!」
「じゃなきゃ俺らが殺られる」
ナイフの刃が月明かりに光った。
次の瞬間。
裏路地に、短い悲鳴が響いた。
――――――――――
一方その頃。
チャイナタウンの大通り。
「ほらリナ」
心が優しく肩を抱く。
「チャイナタウンなんて危ないとこ、1人で来ちゃだめだよ」
「うん…ごめんね」
「リナみたいな無防備な子、すぐ捕まって悪いことに利用されちゃうよ」
実際――
この街は心の縄張りだった。
人身売買。
詐欺。
違法賭博。
裏社会の巣。
心が通りを歩くと、男たちが気付く。
一瞬で姿勢を低くし、頭を下げる。
「……」
心は視線だけで制した。
(バレるな)
リナは気づいていない。
そして心は指を軽く動かす。
それだけで部下たちは理解する。
“この女を覚えろ”
“俺の女だ”
裏社会でそれは絶対命令だった。
トップの女に手を出す意味。
=死。
(これで…)
心は横目でリナを見る。
(ここらでリナに手出す馬鹿はいなくなる)
でも。
心の胸の奥では、別の感情が渦巻いていた。
(……なんで)
さっきの光景。
リナが笑っていた。
あの男と。
楽しそうに。
(なんであんな奴と買い物してんの)
胸の奥が焼ける。
腸が煮えくり返る。
でも心は笑顔を崩さない。
優しい声で言う。
「帰ろう、リナ」
「うん」
リナは安心したように笑った。
その笑顔を見ながら――
心の内側で、狂気が静かに膨らんでいく。
(リナ…)
(そろそろ教えてあげなきゃ)
誰のものか。
大丈夫。
ここまで待った。
7年。
(怖がらせないように)
ゆっくり。
優しく。
檻を作る。
逃げられない場所。
そして。
自分から入ってくるのを待つ。
待って。
待って。
心はリナの横顔を見つめる。
(あぁ…)
唇が歪む。
(リナ…)
(大好きだよ)
どんな声で泣くのか。
どんな顔で縋るのか。
想像するだけで――
ぞくりと背筋が震えた。




