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6.甘い束縛

『甘い束縛』


それから数日後…

私はすっかり

心くんのマンションでの生活に慣れていた。

最上階の大きな窓からは

街が全部見渡せて…

朝起きると

朝日が部屋いっぱいに広がる。

最初は落ち着かなかったけど…

「ここ…本当に住んでいいのかな…」

なんて思いながらも

心くんは何も気にしていないみたいだった。

むしろ――

「リナが居ると家っぽくなる」

そう言って嬉しそうに笑う。

 

朝。

キッチンで料理をしていると

後ろから声が聞こえた。

「いい匂い…」

振り向くと

まだ少し寝ぼけた顔の心くんが

髪をくしゃっとさせたまま立っていた。

「おはよう心くん」

「おはよ…」

心くんはそのまま

私の肩に顎を乗せてくる。

「ちょ、ちょっと…」

「いいじゃん…まだ眠い…」

くすっと笑いながら

私の肩に体重を預ける。

「朝ごはんもうすぐ出来るよ」

「リナのご飯好きなんだよなぁ…」

ぽつりとそう言う。

「そんな大したもの作ってないよ」

「違うよ」

少し間をあけて

「リナが作ったから好き」

 

ドキッとした。

 

昔からそうだった。

心くんは

まっすぐすぎる。

 

食卓に料理を並べると

「いただきます!」

子供みたいに嬉しそうに食べる。

「うまっ」

「ほんと?」

「うん」

「これ毎日食べられるとか俺幸せかも」

そんなことをさらっと言う。

 

胸が少し苦しくなる。

 

(心くん…好きな人出来たらどうするんだろ…)

 

こんな生活

きっと長く続かない。

 

そう思うと

少し寂しくなった。

 

その日の夜。

お風呂を出て

リビングに行くと

心くんがソファで

仕事をしていた。

パソコンを閉じて

私を見る。

「もう寝る?」

「うん…明日仕事だし」

「そっか」

少しだけ

残念そうな顔をする。

 

「リナ」

 

呼ばれて振り向くと

 

腕を引かれて

そのままソファに座らされた。

 

「え?」

 

ぎゅっ

 

また

抱きしめられた。

 

「心くん?」

 

「今日さ…」

 

ぽつりと呟く。

 

「リナ帰ってこないかと思った」

 

「え?」

 

「仕事終わる時間遅かったでしょ」

 

「うん…ちょっと残業で…」

 

「事故とか事件とか」

 

「色々あるじゃん」

 

腕の力が少し強くなる。

 

「リナに何かあったら」

 

「俺どうしたらいいか分かんない」

 

胸がぎゅっと締め付けられる。

 

「大げさだよ…」

 

笑いながら言うと

 

「大げさじゃない」

 

少し低い声。

 

「リナは俺の家族なんだから」

 

その言葉に

また何も言えなくなる。

 

「だからさ」

 

「なるべく早く帰ってきて」

 

「…ね?」

 

優しく笑う心くん。

 

私は気づかなかった。

 

その夜

 

別の部屋で

 

心くんが電話していたことを。

 

「今日リナ遅かった」

 

低い声。

 

「会社の近く見張っといて」

 

「男とか寄ってきたら」

 

少し笑って

 

「分かってるよね?」

 

電話を切る。

 

窓の外を見ながら

 

小さく呟く。

 

「まだ早いよな」

 

「リナが怖がる」

 

くすっと笑う。

 

「ゆっくりでいい」

 

「どうせ」

 

「もう逃げられないんだから」

 

そして

 

リビングに戻る。

 

寝室のドアをそっと開けると

 

リナはもう眠っていた。

 

ベッドの横に座る。

 

髪をそっと撫でる。

 

「リナ」

 

小さな声。

 

「やっと一緒に住めた」

 

優しい笑顔。

 

でもその目は

 

どこか

 

狂気が混じっていた。

 

「もう誰にも渡さない」

 

静かな部屋の中で

 

心くんの声だけが

 

小さく落ちた。

 

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