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41,同窓会当日

同窓会当日



集合時間を前にして

リナは部屋で慌てて支度をしていた。

クローゼットには、先日心が買った服が

ぎっしり並んでいる。

どれも綺麗で。

どれも上品で。


どれも――


明らかに高すぎる服。

有名ブランドのロゴが主張しているわけでもないのに、

一目で分かる。

布の質感。

仕立て。

ラインの美しさ。

普通の店ではまず見ない服ばかりだった。

その中から選んだのは。

心が


「同窓会ならこれがいい」


と言った

淡い色のワンピース。

シンプルなアクセサリー。

ヒールの高い靴。

上品なバッグ。

鏡の前でくるっと回る。

ふわりと

ワンピースが揺れる。

やっぱり。

心の

リナに関するセンスは抜群だった。

ふと頭に浮かぶ。

もし心に言ったら

きっとこう言う。


「そりゃそうでしょ…俺リナしか見てないもん…」


リナはくすっと笑った。

薄くメイクをする。

髪を整える。

少し緊張している。

久しぶりの同窓会。

でも。


今日の姿を――


一番最初に見てもらいたい人がいる。

リナは急いで廊下を走った。

執務室のドアを開ける。


ドンッ…


「リナぁ…支度できた?ん?…」


書類を見ていた心が顔を上げる。

そして。

止まった。

完全に。

時間が止まったように

動かない。


「心くん…どうかな?」


照れながらくるりと回る。

ふわりと揺れるワンピース。

細い足を包むヒール。

光を反射する小さなアクセサリー。

心は一瞬言葉を失った。


「かっ………」


声が出ない。

数秒。


「可愛い!!」


机を叩く勢いで立ち上がる。


「俺の見立てに狂いはなかったね」


自慢げに笑う心。


「えへへ…ありがとう」


照れながらお礼を言う。


「こんな素敵なの買ってくれて…ありがとう心くん」


心は近づきながら

リナをじっと見た。

頭からつま先まで。

何度も。


「……あぁもう」


「可愛いなぁ…」


そして。

少しだけ眉を寄せる。


「なんで俺」


「同窓会いいなんて言ったのかなぁ…」


「えっ?心くん…」


心はため息をつく。


「こんな可愛いリナ見たら」


「男どもほっておかないでしょう…」


少し真面目な顔になる。


「いい?リナ」


「はい…」


「男は皆狼だからね」


「うん…」


心は淡々と続ける。


「俺と同じで」


「リナの事見たら」


「騙して…」


「犯して…」


「突っ込んで…」


「自分のものにしたいって思ってる…」


「全員が…」


(そんなこと思ってるのは心だけだと思うが)


リナは黙って聞いていた。

そして心は指を一本立てる。


「同窓会行く条件」


「知らない男と話さないで」


「俺が迎えに行くから」


「会場離れないで待ってること」


「約束できる?」


真剣な目。

完全に。

命令。

リナは少し困った顔で笑う。


「心配症だな…心くん」


「これでも会社で働いてたんだよ」


心は即答する。


「リナは分かってないよ」


「はいと言わないなら」


「同窓会は無しに…」


「待って!」


慌てるリナ。


「はい…言う事聞く…」


心は満足そうに笑った。


「よし」


「えらいね」


そして。


「じゃあ」


「行ってきますのキスしよ」


ぐっと引き寄せる。

長めの口づけ。

リナの顔は真っ赤。


そして。

そのまま送迎の車へ。


行きは――


会議があるため

真が送迎担当。

心は車の横で

真に小声で話していた。


「おい…真…」


「分かってるな…」


真は背筋を伸ばす。


「はい」


「リナさんに近づく男は報告」


「必要時排除します」


心は満足そうに笑う。


「くれぐれも」


「内密に」


「バレたら分かってるな」


真の背中に冷や汗。


「……はい」




車の中。

真がミラー越しにリナを見る。

一瞬。

固まった。


(これは…)


(ボスが外出させたくなかった理由)


「リナさん…その…」


「なんていうか…」


「今日の格好…綺麗っすね…」


「へへっ」


リナは嬉しそうに笑う。


「ありがとうね真さん」


「忙しいのに送ってもらってごめんなさい」


真は苦笑する。


(そりゃボスも心配するわ…)


「いいえ」


「ボスも言ってましたけど」


「知らん男に近づかないようにして下さいね」


リナは笑う。


「大丈夫だよぉ」


「心くん心配症なだけ」


そして。

本気の顔で言う。


「私のこと相手にする男性なんて」


「心くんくらいだから」


真は思った。


(鈍感て怖い)


(死人出るんじゃ)


(純粋培養怖い)




ホテルのレストラン。

同窓会会場。

リナは真に別れを告げ

会場へ入る。

すでに人が多い。

グループごとに分かれて

話している。


キョロキョロしていると――


遠くから声。


「リナ!久しぶり!」


振り向く。

小山内ココ。

高校の同級生。

よくからかってきた子だった。


「久しぶりだね…ココちゃん」


「綺麗になって…」


ココは笑う。


「きゃは」


「リナにしては可愛いじゃん」


服を見る。


「でもブランドじゃないみたいだね」


リナの服は。

一点物。

普通のブランドより

遥かに上のクラス。

だがココには分からない。

リナは愛想笑い。


「でもさぁ」


「リナもいい男捕まえなきゃダメだよ」


「私の彼なんてさ」


アクセサリーを見せる。


「これ」


「CHANEだよぉ」


誇らしげに胸を張る。


「私の彼ね」


「MGグループの専務なんだよ」


周囲の女の子たちが


「すごーい」と声を上げる。


ココは満足そうに笑った。

しばらく自慢を聞いたあと

リナは静かにその場を離れた。


ふぅ… 


心の中で思う。


(やっぱり…)


(心くんいる方が楽しいな…)


そんな時。

声がした。


「如月?」


「如月リナ?」


振り向く。

長身の黒髪の男性。


「葛城くん?」


「覚えてくれたん?」


「嬉しいわ」


高校の委員会仲間。

困った時に助けてくれた人。

葛城は少し緊張していた。


「俺…今」


「大手で営業やってるんだ」


「へぇ!すごいね!」


リナは本気で褒める。

葛城は顔を赤くした。


「あぁもう…」


小さく呟く。


「やっぱ好きやわ…」


「会ったら止まらんくなった」


「なぁ如月」


「今付き合ってる人おるん?」


「えっ?」


葛城は真剣な目。


「あん時は返事貰えんかったけど」


「俺真剣なんよ」


「なんであん時手紙無視したん?」


リナは困った顔。


「ごめんね」


「手紙が分からなくて…」


葛城の顔が明るくなる。


「そっか」


「良かった」


「なんか…入れ違いやったんやな」


「無視されたわけやなかったんか」


そして。


「俺さ」


「あんときから」


「如月の事好きで」


「はじめて手紙書いたんよ」


「付き合って欲しいって」


リナが知らないのは当然だった。

この頃から。

リナの周りの交友関係や

特に男の存在は

心によって

厳しく管理

整理されていた。

ラブレターなんて

危険物。

即刻焼却処理されていた。



「ごめんね…そんなだいじなの…私知らなくて」


「如月のせいやないよ…」


「それで…俺と…」


「あのね…葛城くん」


「私今好きな人…付き合っている人がいて…」


あからさまにショックを受ける葛城。


「そっ…そうだよなぁ!」


「こんな綺麗な如月…男がほっておくわけないもんなぁ…」


「ごめんね…でも…うれしかった…」


こういうフォローが相手を勘違いさせるのだが

純粋培養なリナは

全く気づかない。

葛城もまた

申し訳なさそうに

うつむくリナの顔に

完全にやられていた。

リナの手を取り


「あのさ…もし彼氏さんと何かあったりしたら」


「相談乗るし」


「困った事あったら連絡して」


「これ俺の番号」 


紙を渡す。


「またな」 


「まって…って行っちゃった…」


リナは困った顔で

紙を見る。


彼氏がいるから受け取れない…


そう言おうと思ったけど

言い出せる雰囲気じゃなかった。

リナは

その紙をそっとバッグにしまった。


_________________

真side


「ボス…葛木健人という男がリナさんに接触…対象リナさんの手を握りました…抹殺しますか?」


「いいや…もう離れたのならそのまま気づかれないように…制裁はあとで…」


「はっ…あと…何か紙を渡してました…リナさん返そうしましたが…返せずバックに…」


「へぇー…これから向かうよ…真、見張ってて」


地を這うような声だった。


こえぇーー…


あの葛城とか言うやつ…


可哀想なやつ…


真は心の中で合掌した。


もう何も起こらない事を祈った。


葛城と別れると


ココはまだ自慢が足りないようで

リナを探していた。


「りな…もうどこいってたの?鈍臭いなぁ」


「今ね…私の服の話とか皆でしてたの」


すると別の女の子が

リナに近づいてきた。


「如月さん…あなた…その服…」


「Riviaの一点物だよね?」


「マジで初めてみたー」


「Riviaって何?」


ココが不機嫌そうに聞く。

女の子は興奮気味に話し出す。


「私アパレル勤めてて詳しいんだけど」


「パリの新進気鋭のデザイナーで」

.

「一点物しか作ってないの」


「如月さん…そのシリーズ全部で」


「幾らかかってるの?」


「それ…3桁は余裕でいくよね?」


ココが噛みつく。


「まさか!そんなのニセモンでしょ」


女の子は首を振る。


「偽物じゃないよ」


「このブランド…ハイクオリティすぎてマネできないの」


「ロゴもほら…ここに細工してあるの」


「すごぉい…」


本気で服が好きなのか

うっとりした顔で

リナの服を見ている。

「さっきCHANE自慢してたけど」


「ブランドとしてレベル違うよ」


「あっ…でもCHANEが悪いわけじゃないけど」


止まらない。

好きなものを語るオタクの勢いだった。

ココは

顔を真っ赤にして

悔しそうに

その場を去った。

終了時刻となり

同窓会は解散となった。

みんなに別れを言い

リナは会場を出る。

外の空気が吸いたくて

ホテルの外へ出た。

エントランス前。

夜風が少し冷たい。

そこへ。

ココが再び近づいてきた。


「さっきは…よくも恥かかせてくれたね」


「えっ?」


リナには

本当にそのつもりはない。

しかし他の友達が近づくと

ココは一瞬で表情を変えた。

笑顔。


「リナに私の彼氏紹介してあげるね」


「これから迎えに来るから待ってて」


ココはリナの手を強く握った。



如月リナ。

孤児院育ちのくせに。

私より何も持ってないくせに。

なのに。

いつもみんな

リナばっかり。

葛城くんだって..

私好きだったのに…

リナリナリナって…


完全な八つ当たりだった。


そこへ男の声。


「すまない…遅くなったね…ココ」


「おや?お友達かな?」


「ダーリンまってたよ!」


「あのねこの子親友の如月リナちゃん」


男は

舌舐めずりするように

リナを

上から下まで

値踏みする。


「へぇー…いつもココがお世話になってます」


ココが笑う。


「ダーリンはねMGグループの専務なのよ」


「リナの彼氏って何やってるの?」


リナは言葉に詰まる。

ココが笑う。


「ほらぁやっぱり」


「ヒモでしょ?」


「顔よくても甲斐性ないとダメだよ」


「ココのお友達なら…いつでも相談にのりますよ…個人的に」


男がリナの肩に手を伸ばす。

その瞬間。

ガシッ

男の手首が

途中で止まった。


「どうも」


「俺の彼女が何かありました?」


心だった。

完璧な笑顔。

品行方正。

眉目秀麗。

ココが言う。


「なに…かっこいい…でもどうせヒモとかホストでしょ!」


次の瞬間。

ココの彼氏が

青ざめた。


「真田代表!!」


「ひぃ!!」


「ダーリン?」


「馬鹿か!!」


「頭下げろココ!!」


「リナさんの彼氏は」


「真田心さんだ!!」


「俺の会社なんて下請けの下請けだぞ!!」


「この人の一言で会社吹っ飛ぶ!!」


周囲がざわつく。


「あれ経済誌の…」


「真田心…?」


「日本トップ資産の…?」


空気が変わった。

完全に。

立場が逆転した。

心はリナの手を取る。


「遅くなってごめんね」


「ダメだろ」


「会場で待っててって言ったのに」


「何かあったらどうするの?」


「俺を殺す気?」


「心配で死んじゃうよ」


上着を

そっとリナにかける。

甘さ全開。

周囲に

見せつけるように。

ココの彼氏など

視界にすら入っていない。


「じゃあ帰ろう」


「愛しい人」


リナの手を引く。

その姿を

遠くから見ていた


葛城健人。


リナが見せる

甘い笑顔。

自分には

絶対向けられない表情。


そして

隣に立つ男。


地位

財力

容姿

余裕


全部。

桁違い…

葛城は


静かに悟った。

何もかも

勝てない。

完全な敗北だった。

打ちひしがれて立ち尽くす彼の姿を横目でみて…


心はニヤリと笑みを浮かべた

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