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34.火事の真相

『火事の真相』



sideリナ

______________________

ホテルの廊下は静かだった。

高級ホテルらしく、足音すら吸い込まれるような分厚い絨毯。


大浴場でお風呂に入って戻る途中、私は角を曲がろうとして――


ふと、足を止めた。


黒服の人たちの声が聞こえたから。


「……だから、あの火事はボスの指示で――」


「しっ、声でかいって。あれは リナさんをマンションから出すため だろ」


「結果的に上手くいったけどな。あの子、警戒心強かったし」


「ボス、何年も片想いしてたらしいからな」


――え?


心臓が、ドクンと鳴った。


「普通に誘っても来ないからって、マンション燃やすとか…」


「でも死者出てねぇし、ボスちゃんと計算してたろ」


「まぁ…あの人、あの子の事になると理性飛ぶからな」


足が、動かなかった。


頭が真っ白になった。


火事。


……私のマンションの火事。


まさか。


まさか、そんな――


黒服たちが歩き去る音がして、

私はその場に立ち尽くした。

逃げようと思えば、逃げられた。

普段の私なら、きっとそうしてた。

怖いことからは距離を取る。

それが一番安全だから。


でも――


私は、小さく息を吸った。


……だめ。


心くんと一緒にいるなら。

ちゃんと話さなきゃ。

逃げたら、きっとずっとモヤモヤする。

私は踵を返して、心くんの部屋へ向かった。

コンコン。




side心

__________________________


関西のシマ視察から戻ったばかりで、幹部との打ち合わせが続いていた。

部屋の前で黒服が控えている。

俺は腕時計を見た。


……リナ、そろそろ部屋に戻ってる頃か。


あいつは今日も、行く先々で挨拶していた。


「心くんをよろしくお願いします」


真顔でそう言うから、相手の黒服はみんな固まる。

マフィアのボスに向かって


“よろしくお願いします”って言う女なんて、世界であいつくらいだろう。


でも――


嫌じゃない。

むしろ、誇らしい。

そんなことを考えていた時だった。


コンコン…


ノックとともに扉が空いた…


リナだった。

様子がおかしい。

いつもより顔が白い。


「リナ?」


俺は少し眉をひそめた。


「どうしたの。お風呂いったんじゃ――」


リナが、まっすぐ俺を見た。

そして言った。


「火事の事、聞いた」


……ああ。

一瞬で理解した。

誰かが余計な事を言ったな。

黒服の顔が頭に浮かぶ。

後で締めるか。

リナは続けた。


「廊下で…黒服の人が話してた」


クソっ…


情報管理もロクにできねぇのか…


八つ当たり気味にイラついた。


リナは…


少し震えている。


「ねぇ…本当?」


俺はため息をついた。


「私のマンションの火事…心くんが…」


「違うよね?…心くんから直接聞きたくて」


隠す気はなかった。

今さらだし。

どうせ、もうリナはここから逃げられない。

だから俺は肩をすくめて言った。


「だから何?」


リナの目が揺れる。


「……今さらじゃない?」


そして、少し笑って言った。


「俺がリナの事、逃がすと思う?」


――次の瞬間。


パァン!!


乾いた音が響いて…

頬が横に弾かれた。


……え?


何が起きたのか、数秒理解できなかった。

俺を叩いた?

リナが?

俺を?


「……リナ?」


完全に頭が追いつかない。

リナは泣いていた。


「心くんの馬鹿!!」


涙をボロボロこぼしながら叫ぶ。


「やっていい事と悪い事があるでしょ!!」


……ああ。


そういう事か。

怒ってるのか。

俺がマンション燃やしたことに。

でも。

リナは続けた。


「もし心くんが……怪我したり…」


声が震えている。


「つかまったりしたらどうするの!!」


……は?


「そんな事になったら私……」


そこでリナは泣き崩れそうになった。


「危ない事する……」


俺を睨んで言う。


「自分の事大事にできない心くんなんて!!」


そして――


「大っきらい!!」


……ああ。


なるほど。

理解した。

こいつ、俺が犯罪した事に怒ってるんじゃない。

俺が危ない事したのが気に食わないんだ。

こいつ、本当に昔からそうだ。

孤児院の頃。

俺が誰かを殴ると、必ず怒られた。

説教された。


そして機嫌を損ねると――


一ヶ月近く口をきいてくれない。

マジで怖かった。

今も同じ顔してる。

あの頃のリナだ。


「リナ……ごめんて」


俺が言うと、


「なんで私が怒ってるか分からないでしょ?」


と言われた。

いや。

分かってる。

でもそれ言うとまた怒るからな。


「いや…だから…」


「今、話しかけないで」


ピシャリと言われた。


「……もう、嫌い」


……やばい。

これはマジのやつだ。

このままだと、ほんとに口きいてくれなくなる。

それだけは困る。


俺は迷わず――


リナの前に正座した。


俺は頭を下げて平謝りした…


「リナとどうしても一緒に住みたかったとはいえ…」


「やりすぎました」


リナは目も合わせない。

俺は続けた。


「もう危ない事はしません」


「人に迷惑かける事もしません」


頭を下げる。


「ごめんなさい」


「リナ許して」


……無視。


これは長期戦だ…

昔からそうだ。

こいつは怒ると、めちゃくちゃしつこい。

はじめは姉のように怒る癖して…

怒りはじめると退行して、手がつけられない…


結局俺は、


危ない事はしない


命に関わる事はしない


捕まる事はしない


大家にバレないよう火事の補償する


それを全部約束させられた。


そして。


「もうしません、ごめんなさい」


百回。


大げさじゃなく…


マジで百回言わされた。

途中で数え間違えたら最初から。


鬼か。


ようやくリナが言った。


「……次やったら」


顔を上げる。


「ほんとに嫌いになるからね」


それは困る。

本気で困る。

俺はすぐ頷いた。


「はい」


リナがようやく俺を見た。


その瞬間、思った。


……ああ。


そうか。

組織のドッブになって。


俺の事を本気で怒る奴なんて。


この世にいない。


みんな俺を怖がる。


誰も逆らわない。


でも…


リナだけは違う。

俺を殴る。

泣きながら怒る。

説教する。


俺を――


普通の男として扱う。

マフィアのトップ

真田心じゃなくて。

ただの男。

真田心として。

その時だった。


部屋のドアがバタン!と開いて…

慌てて黒服が駆け込んできた


「ボス!!」

「緊急で――」


目の前には…


星座してる俺…


俺の前で仁王立ちのリナ…


「ヒィ!!失礼しました!!」


見てはいけない物を見たように…

走り去った…


俺は立ち上がって、リナを見た。


……はぁ。


とりあえず。

あの黒服。

あとでヤルか……。


直々に記憶を消してろう…




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