16.支配
『支配』
翌朝……
リナはまだ起き上がれず、体はだるく、昨夜の余韻が身体中に残っていた。
それでも心は涼しい顔で支度を始めている。
「もう起きたの?…足りない?もう一回する?」
反射的に身体がびくっとなる。
「俺に抱かれるって思って反応してる?可愛い…ちゃんと教えたこと覚えて偉いね…チュ」
瞼にキスが落ちる。
心くん……昨日は怒っていたのに、今はいつもの、優しい顔。
「今日は俺、出かけないよ…家で指示出すから…一日リナと一緒…」
「電話とか書類受け取りはするけど…いつでも抱いてあげられるから」
「なに…真っ赤になって…期待してる?」
赤面してうつむくリナに、心はにやりと笑う。
「もう…えっろぃなぁ…朝までしてたのに…止まらなくなる…そんなトロトロの顔…俺の教えた通りじゃん」
顎をくいっと上げられ、キスされる。舌の感触に、腰がふらつく。
立っていられなくなるリナを見て、心は満足そうに微笑んだ。
「おっと…大丈夫?待ってね…もう少しで部下が書類届けに来るから…そしたら…ねっ♡」
ピーンポーン
「いいところだったのに…」
むくれたまま、心はドアへ向かう。
リナは、秘書としての自覚を取り戻すため、身だしなみを整えてリビングへ向かった。
リビングには、書類を持った黒服の男性が立っていた。
少し怖そうで、組織の人間と一目で分かる。
「あの…私、真田代表の秘書になりました。如月リナです。まだ慣れていないので、ご迷惑をおかけするかもしれませんが…よろしくお願いします」
リナは丁寧に頭を下げた。
男性は短く「どうも…ご丁寧に…」とだけ返す。
しかしその直後、部下の一人がドンッと壁際に吹き飛ばされる。
心の蹴りだ。
恐怖で体が固まるリナ。
倒れた部下の髪を掴み、耳元で低く、何かささやく心くん。
「誰がしゃべっていいって言った?見ていいって言った?俺のリナを…」
言葉は聞き取れないが、低く危険な響きだけがリナの胸に刺さる。
「心くん!」
咄嗟に気をそらそうと、リナは声をかける。
「あぁ…リナごめんね…こいつ、一番やっちゃいけないミスしてさ…怖がらせちゃったね…」
倒れた部下は血がにじむ顔で、ゆっくりと身体を起こし、視線を合わせないように会釈して帰っていった。
心はリナを見て、普段の冷たい目はなく、少しほっとしたように笑う。
「大丈夫だよ…加減してるから…そんな顔しないで…リナ…あんな奴の心配なんていらないんだよ。俺、不安になっちゃうから…」
リナは顔を上げて、心くんをまっすぐに見つめる。
「リナ…おいで」
膝をポンポンと叩き、ソファに座る心。
リナは逆らわず、ゆっくり膝に腰を下ろす。
少しずつ、心も身体も、リナを支配しはじめる。
リナはまだ気づかない……
もう、逃げられない。




