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14.手料理とデザート

『手料理とデザート』


朝の光がカーテンの隙間から差し込んでいた。

リナはゆっくりと目を開ける。

「……ん……」

体が重い。

まるで全身の力を使い切ったあとみたいに、少し動くだけでだるさが広がる。

昨日のことを思い出した瞬間――

顔が一気に熱くなった。

「……っ」

シーツを胸元まで引き寄せる。

肌のあちこちに残る感覚。

抱きしめられた腕の強さも、耳元で囁かれた声も、全部鮮明に思い出せてしまう。

そして――

体の奥から、ゆっくりとこぼれる温もり。

それを感じた瞬間、リナの顔は真っ赤になった。

(あ……)

慌ててシーツを握りしめる。

昨日、何度も何度も。

「……心くん……」

小さく名前をつぶやく。

身体のだるさも、残る感覚も。

全部が「本当に起きたこと」だと教えてくる。

(大好きな心くんと……両想い……)

胸がじんわり温かくなる。

まだ夢みたいだ。

再会して。

顧客として関わって。

会社のことも、家の火事も。

住む場所まで用意してくれて。

三本のこともあって。

そして――

恋人になった。

偶然にしては出来すぎている出来事。

でもリナはまだ知らない。

そのすべてに心が関わっていたことを。

「……」

ベッドからゆっくり起き上がる。

(心くん……仕事かな)

何かしてあげたい。

その気持ちがふと湧いてきた。

「そうだ」

小さく笑う。

「何か作って待ってようかな」

子供の頃。

心が好きだった料理を思い出す。

「ハンバーグ……」

くすっと笑う。

「小さい頃好きだったけど……今も好きかな」

そう言いながらシャワーを浴び、クローゼットから服を選ぶ。

軽く化粧をして。

リナはマンションを出た。

その頃。

別の場所で携帯が鳴る。

「ボス」

低い声。

「リナさんが外に出ました」

少しの沈黙。

「捕まえますか?」

電話の向こうで、心の声が聞こえる。

「えぇ?」

驚いた声。

「リナ出かけたの?」

小さく笑う。

「待って。すぐ戻るから」

そして少しだけ楽しそうな声で言った。

「手荒なことしないで待ってて」

電話を切る。

心は車のキーを回した。

「……リナ」

くすっと笑う。

「まだ動ける体力あったんだ」

瞳が細くなる。

「じゃあ……」

エンジンが唸る。

「もうちょっと本気出して抱いてもいいってことかな」

低く囁く。

「俺が出かけてる間に外出するなんてさ」

ポルシェが走り出す。

「誘ってるみたいじゃん」

リナはコンシェルジュにスーパーの場所を聞いて歩いていた。

車を出しましょうか、と言われたけれど。

「少し歩きたいので」

と断った。

高級マンション街は静かだった。

でも――

意外とスーパーは遠い。

「こんなに遠いんだ……」

袋を持って歩く帰り道。

そのとき。

横に一台の車が止まった。

窓が開く。

「りなぁ」

聞き慣れた声。

「もう寝ててって言ったのに」

「えっ」

リナは驚いて振り向いた。

「心くん!?」

心は笑っている。

でも――

どこか冷たい気配が混ざっていた。

怒っていた時の表情に少し似ている。

「なんでここに?」

「えっと……」

リナは袋を持ち直す。

「お仕事してるし……帰ったら何か作ってあげたくて」

少し照れながら続けた。

「昔ハンバーグ好きだったでしょ?」

心は一瞬ぽかんとした。

「……え」

外出の理由。

それが自分のためだと理解した瞬間。

「リナ」

小さく笑う。

「どうしてそんな可愛いことするの?」

リナは慌てた。

「えっ」

「俺のこと殺す気?」

「そんなつもりじゃ……」

「でもさ」

優しく言う。

「買い物はコンシェルジュに連絡して手配すればいいんだよ」

少しだけ声が低くなる。

「リナは外出ないで」

「え?」

「心配で仕事にならない」

リナは笑った。

「大げさだよ」

「子供じゃないんだから」

心は少し黙る。

そして。

くすっと笑った。

「……そっか」

車のドアを開ける。

「帰ろ」

「え?」

「運動したかったんでしょ?」

意味ありげに笑う。

「じゃあ帰ってから付き合うよ」

リナの手を取る。

「運動」

助手席に乗せながら囁いた。

「足りなかったみたいだし」


リナは意味が分からず首をかしげた。

___________________



マンションに戻る。

キッチンでリナがハンバーグを作り始める。

玉ねぎを刻んでいると。

背中に腕が回った。

「リナぁ」

甘える声。

「もうお腹すいた」

振り向くと心の顔が近い。

色気のある目。

「我慢できない」

軽くキスされる。

「ん……」

リナは慌てて言う。

「もうちょっとだから」

包丁を指差す。

「危ないよ」

心はため息をついた。

「ちぇー」

でもすぐ笑う。

「まぁいいや」

耳元で囁く。

「リナのハンバーグ食べたいし」

小さく付け足す。

「リナもね」

「何か言った?」

「なんにも」

にっこり笑う。

「楽しみって言ったの」

食事の時間。

心は本当に嬉しそうだった。

「うまっ」

「久しぶり」

「リナの料理」

慌てて食べる姿が少し可愛い。

リナはくすっと笑う。

食事が終わり、片付けを始めると。

後ろから腕を引かれた。


「いいよそれ」

「え?」

「リナ」

ソファに座る心。

「俺のこと構って」

甘えた声。

リナは少し笑って隣に座った。

その瞬間。

腕を引かれる。

「リナが足りない」

近づく顔。

「キスしよ」

唇が触れる。

優しくて。

でも逃げられないキス。

「リナってさ」

少し離れて笑う。

「キス好きなんだ」

「……」

「ほら」

頬に触れる。

「とろけた顔してる」

リナは胸がドキドキした。

なんだか。

少し危ない空気。

「ねぇリナ」

心の声が低くなる。

「今日さ」

耳元で囁く。

「俺すごく傷ついたんだよね」

「え?」

「リナが外出して.帰ったら居なくて…」

少し笑う。

「だから」

指先がリナの腰に触れる。

「安心させて」

リナは真っ赤になった。

「心くん……」

「デザートちょうだい」

「デザート?」

リナは首をかしげる。

「買ってないよ」

心は笑った。

「何言ってるの」

ゆっくり囁く。

「デザートはリナでしょ」

その夜。

リナは心に翻弄され続けた。

甘い言葉で。

優しい声で。

逃げ道なんて最初からないみたいに。

気づけば。

意識が遠くなっていた。

「……リナ?」

動かない体。

心は頬を軽く叩く。

「あ」

少し考える。

「やりすぎた?」

でもすぐ笑う。

「まぁいいか」

髪を撫でる。

「これで明日動けないでしょ」

囁く。

「快楽に落ちるリナ」

優しく頬に触れる。

「最高」

そして低く言った。

「俺がいないとダメになるくらい」

目を細める。

「もっと躾けてあげる」

唇が耳元に触れる。

「逃がさないよ」



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