表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家族に売られてたどり着いた先は、王女様の侍女でした。 ――掃除だけは誰にも負けません。  作者: 月城 蓮桜音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/10

第7話 王城への道

 馬車の揺れは、思っていたよりも静かだった。舗装された道を進んでいるらしく、車輪が跳ねることも少ない。私は背もたれに身を預け、膝の上に手を重ねていた。


 外の景色は、少しずつ変わっていく。見慣れた畑や林が途切れ、道幅が広くなる。人の往来も増え、馬車とすれ違う回数が多くなった。王城へ向かう道なのだ、と今さらのように思う。

 

 馬車の中は、私一人ではなかった。向かいの席に、年の近そうな娘が二人座っている。どちらも、少し緊張した顔で、時折ひそひそと声を交わしていた。

 

「……侍女って、何人くらい採るのかしら」

 

「さあ。でも、侍女として差し出せば、家にお金が出るって話だもの。きっと大変なのでしょうね」

 

「でも、王城勤めなんて、縁がなければ一生ないわよね」

 

 小さな声。私に聞かせるつもりはないのだろうが、馬車の中ではよく通る。私は、黙って外を見ていた。彼女たちの会話に、口を挟む理由も、持っている情報もなかった。


 王城が見えたのは、それからしばらくしてからのことだった。最初は、城壁の一部だけ。灰色の石が、空の下に水平に伸びている。近づくにつれて、その大きさが少しずつ分かってきた。高い。そして、広い。屋敷とは比べものにならない。住むための建物というより、街そのものだった。

 

 胸の奥が、わずかにざわつく。不安なのか、圧倒されているだけなのか、自分でも分からない。私は、膝の上で指を動かした。無意識に、縫い針をつまむ時の癖で、指先を確かめている。――大丈夫。そう言い聞かせる理由は、はっきりしていた。


 文字は分からない。作法も、きっと足りない。王城のことも、何も知らない。それでも……。掃除のことなら、自信がある。それだけは、胸を張って言える。それが、私の仕事だったのだから。

 

 馬車は、ゆっくりと速度を落とし始める。正面には、開かれた大門と、その向こうに続く道が見えた。王城は、もう遠くなかった。


 ――ここから先が、私の新しい仕事場になる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ