表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家族に売られてたどり着いた先は、王女様の侍女でした。 ――掃除だけは誰にも負けません。  作者: 月城 蓮桜音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/20

第12話 仕上げの空気

 窓を閉め、私は寝室に残った空気を確かめた。――軽い。澄んではいるが、このままでは少し落ち着かない。これは冬の空気だ。冷たく、乾いている。そこまで悪くはない。けれど、夜を過ごす部屋としては、少しだけ足りない。

 

 私は指先を擦り合わせる。きしり、と乾いた感触がした。……懐かしい。実家で過ごした冬も、こんな空気だった。水は冷たく、雑巾を絞るたびに指先が痛んだ。荒れた皮膚に水が染みて、何度も息を止めた。だから分かる。このままでは、眠りが浅くなる。

 

 寝室は、長くいる場所だ。一晩を過ごし、何度も呼吸を繰り返す場所。一時的に気持ちよければいい、という空気では足りない。私はベッド脇に立ち、魔力を静かに流した。足すのではない。変えるのでもない。

 

 ――戻す。乾きすぎた空気に、ほんの少しだけ湿り気を含ませる。冷たさを和らげるほどではない。ただ、呼吸のたびに喉が引っかからない程度に。香りは加えない。寝室に、強い匂いは要らない。布と人と、夜の気配だけでいい。

 

 天蓋の内側、シーツの上、床の高さ。空気は均等に、静かに行き渡る。一息、吸い込む。胸の奥まで、抵抗なく空気が入ってきた。冷たいが、刺さらない。乾いているが、荒れない。

 

 ――これなら、眠れる。私はもう一度、部屋を見渡した。整えたのは、目に見えるものだけじゃない。けれど、それが伝わらなくても構わない。寝室は、これでいい。布巾を畳み、道具をまとめる。

 

 次に向かうのは、書斎だ。派手な部屋ではない。

 

 ――けれど、生活には欠かせない場所だから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ