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第二章:取り立て遅れ

「なんで、なんでよぉ」


すがった魔術師は墓から蘇った男に殺された。

姉さま、姉さま、戻ってきてくださらないなら、私がそちらへ向かいます。


”グサッ”


胸へと滴る暖かさを感じながら、私は敵と心中した。

それを龍はじっと見ていた。

「ふぁ〜あ、もう時間か」


寝ぼけながらも黒い外套を羽織り、銅の紋章入りネックレスをかける。

事務小屋から出ると、昼過ぎのギラついた日差しが俺を照らしてきた。

教会の警護なんて退屈な仕事だが、日雇いとしては悪くない報酬だ。


「ゼノンさん、今からですか?」

「はい、今からぐるっと回ってきます」


おまけにシスターも優しい。これは就職先としても検討しないとな。

朝に案内された通り教会の扉から祈りの間を抜けて修道院の外周を回り、

聖具室を覗いて裏口から外へ出る。

墓地の墓石の間を抜けてゆきながら、寝違えた首をコキンと鳴らす。


「いや〜、やっぱお昼のあとは眠みぃわ」


大きく背伸びをしていやいやながらも、目線を足元に移した。


「で、これを日雇いの俺がどうしろってんだ?」


足元には色白の少女とほぼ裸の男が倒れており、

少し目線を上げると俺と同じ教会の外套を羽織った男が倒れていた。

木々は所々朝にみた景色に比べて惨然としていて、土は赤く染まっている。

そして墓のうちの一つは棺桶が掘り起こされており、修道女たちが見たら間違いなく卒倒してしまうだろう。

しかも時間が経っているのか腐敗臭が俺の鼻の奥を突いた。


「う〜ん、カオス...」


苦笑いするしか無い。


「でも、これ面倒だしなぁ」


顎に手を当てて少し考えると、俺は名案をひらめいた。


「なかったことにしちまうか」


再度見渡す。

死体三体、血痕、棺桶一基、砕けた墓石、傷のある木々...片割れ一本で事足りる。


"トランスフェロ・ドゥオ・イナニス・カエルレウム"


掲げた手に大剣を握り、自分の視界の端を剣先でなぞる。

端をつなぎ終えると、囲まれた空間が徐々に透明になってゆく。

片手で数えられるほどの秒数で目の前の惨劇は収拾がつけられ、死体も、血も、破壊された墓石も、掘り起こされた棺桶も。


全てが、まるで最初から存在しなかったかのように消えていった。


「よし、これでよし」


満足げに頷くと、俺はドゥオ・イナニス・カエルレウムを再び虚空に返した。

剣は青い光と共に霧散する。


「さて、と。見回り終了!」


何事もなかったかのように、俺は教会へと歩き始めた。

しかし、俺は足を止めた。


「ん?」


さっき消したはずの場所に、何かが残っていた。

一つだけ、消えなかったものがある。


裸の男だ。いや、少年か。


「...生きてんの?こいつ」


近づいて確認する。

心臓が僅かに跳ね、体に温かみが残っている。


「マジかよ」


あんな状態で生きてるって、どんな体してんだ?刺し傷あっただろ。

俺はしゃがみ込んで、少年の顔を覗き込んだ。

骨と皮だけのような痩せた体。出っ張った腹。栄養失調の子どもみたいな体だが、確かに生きている。


消せなかった。今回俺は死という現実を虚にした。

こいつは死んでいない。だから残った。


このまま放置すれば死ぬだろう。だが、死体は残る。

かと言って今から殺して処理し直すのも手間だ。


「はぁ、やっちまったよ」


こんなんなら一旦生死を確認すればよかった。


「...いったん事務小屋まで運ぶか」


担ぎ上げると、呆れるほど軽い。なぜ生きているのかという疑問が更に高まった。

___


事務小屋の扉を蹴って開け、備え付けの寝台に転がす。

外套を一枚、右手で掛けてやった。


息は細いが、乱れてはいない。

処置もしたし、今すぐ死にはしないだろう。

シンプルに気になった。それだけの話のハズだ。


椅子を引いて向かいに腰を下ろすと、俺はずっと少年の顔を眺めていた。

黒歴史第三弾。なんでこんな筆が乗るんだろう。1週間後に頑張って「散ることな彼」の新話上げます。乞うご期待。

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