第85話 vsオリアーナ リベンジマッチ!
オリアーナが作った別空間へ突入したケイ。
今までの覚悟、怒りを彼女にぶつける。
「(リサがどう言う扱いを受けているかは想像に難くない。今は…)タクトをどこにやった…!」
「タクト?あぁ、これの事?」
ポケットの中から取り出したのは、恐らくタクトを閉じ込めているボール。
長い期間、閉じ込められ続けたのだ。彼の精神は……
(いや)
それは今考えるべきじゃない。
全員助けるのだ、誰も取りこぼさない…!!
「返すよ」
ボールを開き、ケイの下へと投げた。
そのボールの中から突然人が出て来て予想外な事だったのか受け身を取り損ね、地面に激突。
「タクト!大丈夫か!?」
「ケイ……くん…か……!?」
彼は安堵し、ケイに抱きついた。
「うお〜!!!助けに来てくれたんだね〜!!もう最悪だったよ……お腹は空かないし喉も乾かない。そしてボールの中からは洗脳されたリサさんがー!!」
「洗脳!?」
まさか…自身の妹となる様にオリアーナが刷り込んだのか!!
ルティアという妹がいると言うのに………!
「洗脳だなんて人聞きが悪い」
白髪をたなびかせ、赤い目でケイ達を睨みつけるオリアーナ。
神と呼ばれる事はある。その圧迫感と威圧感は凄まじい。常人ならここで失神してもおかしくない。
「なぁ……ケイくん。もし僕が戦えるって言ったら…信じるかい?」
「信じない」
「即答!!でも、今回の僕は前とは違う…!なんだか体が軽いんだ!!」
そう言ったタクトに疑いの目を向けながら見つめると、驚いた。
彼に魔力が備わっているのだ。
オリアーナの魔力を最も至近距離からくらい、体が少しずつ魔力に適応したのかもしれない。
「どうやらタクトにも何かの才があるかもな!」
彼の背中を叩き、オリアーナを睨み返す。
もう逃げない、もう油断しない。
「でも、下がっててくれ」
ここは一人でやる必要があるのだから。
「話し合いは終わり?」
彼女が怠そうに呟くとケイはゆっくりと頷く、頷く終わった瞬間戦いが始まってもおかしくはない。
オリアーナの能力は『時空』にまで干渉できる最強に近い能力だ。
何をされるかは不明。
何が来ても対応してみせ──
「はぁ」
するとオリアーナは人差し指と中指で時空を切り出した。開かれた時空からレイピアを取り出しケイへと向ける。
「始めましょう」
“しょう”と言い終わる前にはもう目の前。レインの様な魔法使いかと思ったらゴリゴリの近接タイプ!!
なんとか回避し攻撃に転じようとするも一切の反撃を許さないオリアーナの剣術は流麗。
「ッ……!!」
この世界の誰よりも圧倒的な力にケイは押される。
突き技が剣戟の最中に行ってくる為に姿勢を乱され反撃ができない。
少し吹き飛ばされ、背後にオリアーナが剣を構えて───
急速に迫る“死”が冷や汗と共に背筋を伝う。
「はい。終わ──」
「[燃焼]!!」
体に雷を纏い身体能力を大幅強化。
背後の一撃に一瞬で振り向き対応。
鍔迫り合いが起きる。
(速い……!!これが[燃焼])
「まだまだ!!」
オリアーナを吹き飛ばし、不利だった状況が一旦振り出しに戻った。
死ぬのはまだだ。
中途半端な不完全[燃焼]を強いられてきたケイにとって今の状態は正に好調。
武器が先に負けるリスクを加味した戦いをしなくて良い。つまり今ケイは攻め百%の“完全な殺意”!!
最初に戦った時とは圧倒的に違う。
(この人…最初に戦った時とは圧倒的に違う…!!手を抜いていた……いや、これが“本領”か)
彼の攻めを容易に受け流し、カウンターを狙おうとするが……
(────…速い!!)
カウンターが一切狙えない、そんな隙がないのだ。
ヒットアンドアウェイに徹している以上此方がリスクを負わねばいけない。
「チッ……」
ここでオリアーナは反撃の構えを取った。
それはケイが行うであろう全ての攻撃に対応する為の苦肉の策。
彼女の周りを雷速で周り様子見をしていたケイはそれを察知。攻めれば死ぬ。ならやり方を変えて攻めれば良い。
「どうした…?来ないのか?(先から魔法が使えない…これもケイによる妨害?)」
「ッ………」
二本目の剣を作りそこに雷を込める。二刀流で勝負だ。
オリアーナの背後に強烈な魔力が籠った“モノ”が此方に接近。
研ぎ澄まされた彼女は異様な反応速度でモノに対応すべくそこに剣を置いた。
(とった────ッ!?)
顔に迫るのは、雷を纏ったケイが作った剣。一か八かの投擲。
「クッ……!」
なんとか弾き、再び同じ振り出しに────
「知ってるよ」
(後ろ─!!)
「あなたなら反応できるだろうな」
ケイの全身から溢れる雷が彼女の後ろにいる事を理解。
振り出しに戻る事はなかった。
「まぁ…でも……反応できない速度じゃない!」
彼女とケイは同時に剣を振るい再びぶつかる、意志と意地の戦いだ。
「グッ!まだだ……!」
「………ッ!!」
力じゃ互角。謎に魔法が使えない彼女にとって今ケイは間違いなく有利な状況。
そんな中、一人の少女が二人の争いを見て驚いた様に口を開く。
「お姉ちゃん?」
(リサ──!?)
隙を見せたのはほんの一瞬。気を緩ませたのも一瞬。ただその一瞬はオリアーナにとって大きな隙でしかなかった。
「そこだ!」
ケイの剣を吹き飛ばし腹を刺す。血が溢れて止まらない。
剣を腹から抜き、蹴り飛ばした。
木に頭から激突。なんとか頭は守ったが……
「リサか!?」
でもさっきお姉ちゃんって……!?
「ルティア!!来ちゃダメ!!」
オリアーナが“妹”に向けて叫ぶ。俺達の事をなんだと思っているんだ。
(ルティア…!?同姓同名!?いや、リサとルティアを混同し間違えたのか……?)
嫌な可能性は何度でも浮かぶ。ではさっき出会ったルティアが何者なのか、頭の中がごちゃごちゃになった。
ただ、少なくとも確定しているのは……
「(彼女が……俺の仲間である事!!)リサ、思い出せ!!今までの冒険の日々を!!」
「ぼうけん?あなたと?いや…そんな事は一回も─」
── すごい…!!相棒っぽい!
──言ってる場合か!!
「ッ!?」
彼女の頭の中に、この人との会話が頭の中に浮かんだ。相棒みたいな感じに喜んでいる自分と、それにツッコむ彼。
戦いに身を投じて……色んな人に出会って…戦った様な……
「ルティア!!忘れちゃダメ…!!」
悲哀に満ちた表情でオリアーナは彼女を見つめる。
何かを思い出してしまう事をオリアーナは恐れている様だ。
「リサ!!大鎌を振るっていつも俺達の前を切り開いたのはお前なんだ!!ウチのパーティの前衛はお前しかいないんだ!!」
「リサさん!俺の好きはリサさんに…戻ってくれ…!」
タクトが後ろから懇願、苦痛だったこの数ヶ月間。
リサがどんどん“ルティア”に染まっていく様子をじっくり見せられ狂うかと思った。
「それでも、この人を助けてくれる人がいるって信じていたから…今の今まで正気を保てたんだ!」
必死なタクトの呼びかけに、ルティア……リサは頭を抱え出し、地面に膝をつく。
「頭が……いたい…!!お姉ちゃ──(私に姉……?)」
─── いいなぁ!!私、一人っ子だからさ〜!姉か…憧れるなぁー!!
(姉は……いない??いないなら…なんで……)
──── 愛してる、大好きよ
(そう言ってくれる姉が……でも…私には…)
どちらが真実なのかは分からない。二人の強い呼びかけにどちらも強く呼応するのだ。
酷い頭痛に襲われ、どちらかに委ねたい気持ちにも襲われた。どちらかが真実でどちらが嘘。
「真実……私は……」
「リサ!!」「ルティア!!」
オリアーナがリサの方へと駆け寄り、抱き寄せた。
心配そうに見つめるオリアーナ。
「お姉ちゃん──」
彼女の表情がぱぁっと明るくなる。勝ったのは…家族の絆で───
「さようなら」
「ガッッ!?」
突然ルティアが彼女の腹を蹴り飛ばした。
「リサ!!!」
「(ごめん………みんな)待たせたわね!!ケイ!タクト!」
“戦士”リサ、復活!!
するとリサは早速、大鎌を作り出しオリアーナへと向ける。
「勝負だ!!オリアーナ!!」
次回:託した。
お楽しみに!!




