第84話 一歩の布石
「お姉ちゃん!?(オリアーナがお姉ちゃん!?いやでも、リサの事を“妹”って言ってたし三女以上の可能性もありえない話ではない。
「うん、お姉ちゃん」
笑顔で答えると茶髪の長髪をたなびかせながら彼女はそう答えた。
正直何も隠さずに“お姉ちゃんを止めてくれる人”なんて言われ混乱中。
「……その話はさておき、このループ…そして結界に干渉したのは君であってるよね?」
「はい!お姉ちゃんの能力と魔法を知っているのは私だけだから!!」
えっへん!!と誇らしげに胸を張る彼女にケイはある事を聞いてみる。
「君は…まぁいいや、君の名前は?」
「ルティア・シェインです」
ケイは「良い名前、よろしく!」と返したが、後々これが混乱を生む。
お互いに自己紹介を済ませ、ケイは自分の目的を話す。
「俺はオリア───君のお姉さんの!結界を壊したい」
ルティアも同じ考えだそうだ。
「………こんな所で話すのもアレだし、別の所へ行こう」
こうして近くにあった飲食店に入り二人は作戦会議を始める。
「どうやって結界に綻びを?」
「…それは言えない」
「言えない?」
ルティアは言うから言わないか悩んでいる様子だった。それを見てケイは─
「ま、言いたくなった時でいいよ」
特に気しなかった。無論教えてほしいが今重要なのは“方法”ではないからだ。
「それで…彼女はどこにいるんだ?」
「遠く」
天井………いや、空を指しているのか?
『神』と呼ばれているだけはある。
まさしく別世界の存在。
初めて会った時もボコボコにされたし当然だが…
また………死ぬ。
そこはかとなく───なんて曖昧ではなく、確実に死ぬ。
恐怖と焦りを深呼吸と同時に吐き出すとルティアを見据える。
「俺はオリアーナに挑みたい。一人でだ」
ルティアは驚いた様にケイの目を凝視した。怪物に一人で挑みたいと思う人間がこの世にどれくらいいるだろうか。
「死んじゃうよ…!!」
心配そうにみつめる彼女、子供らしい大きな目と赤い目。そんな目でみつめられてもケイの意志は変わらない。
勿論その時に倒せればいいが無理だ。
その為には彼女の協力が必要不可欠。
結界を破壊しレノア達を知覚者にする、もしくはループor[永劫]のルール概念を破壊するかのどちらかは成し遂げたい。
みんなにはとんでもないものを背負わせてしまうが、自分が必ず彼女に爪痕を残す。
「俺には仲間がいる、俺の事は赦さなくてもララ達を倒しオリアーナを倒す事を信じているんだ」
元の世界に帰る……と言うのは叶わなそうだ。元々向き合える気がしなかったし丁度いいかも。
「その仲間達の為にあなたは命を賭けるの?」
それが反撃の狼煙になればそれでいいのだから……
ルティアはそれを理解した様で、重い口を開く。
「私が何故、結界に綻びを作れたのは……この結界を考えたのが私だから」
「……!?」
「だから……お姉ちゃんはそれを実現しようとしているの」
どうして?何故?オリアーナは何のために?
様々な思念が湧いたがケイは一旦黙る事にした。
「お姉ちゃんとみんなが笑顔になれる楽園を作ろうって約束したの、ずーっと前に」
悲しそうな表情のまま、ルティアは続ける。
「お姉ちゃんは……家族と楽園に囚われている……」
ケイの目を真っ直ぐ見つめ返し、ルティアは大声で叫ぶ
「だから私!!お姉ちゃんを………」
するとケイは彼女の頭を撫で、驚く事に彼女は一切抵抗せずにそれを受け入れていた。
「………怒りますよ…!」
「なんか……長いループの中で“俺が世界で一番不幸”みたいに思っていたのが馬鹿らしくなるくらい、君は頑張って来たんだなぁって」
オリアーナが何歳かは知らないが、離れていてもそこそこだろう。
そんな中誰よりも彼女の身を案じ、暗闇の中を模索していたのかと思うとケイの苦労だなんて短い話。
照れている彼女を横目にケイは話を続ける。
「それで、どうやって彼女を止めるんだ?」
「結界を完全破壊するには致命傷を負う事か自らが解除するかのどちらか」
それには心当たりがある。ドライヴとの戦いで結界を使い、奴に勝った時に結界は壊れた。
自分が無意識のうちに解除した──とは考えにくい、つまり前者。ギリギリで奴に勝ったしな。
「お姉ちゃんに致命傷を与えてくれれば結界は私が壊します」
「保険はなし。一発勝負だな」
すると彼女は指を振るい、チッチッチ。とケイの方を見る。
「私が作ったこの[脱出ゲート]があれば“一回”は逃げられますよ?」
「一回……」
一つだけあったケイの懸念がここで消えた。
その様子を見て“ケイは安心した”と判断したルティアは作戦の本筋を話す。
「お姉ちゃんがいる空間は別空間にいます、そこを私が飛ばしてみせます、自信はないですけど……」
彼女が言うには結界術の“応用”らしい。正直この先結界だなんて極まるつもりはないし、話半分に聞いていた。
リサとタクトがレノア達と合流できれば、ララ戦でも大きく有利になるだろう。
ある程度作戦を決め、彼女に一つだけ耳打ち。
「作戦が成功したらレノアという金髪の少女がいる。その人を探して会いにいって、これからやるべき事を話してくれ」
ルティアは大きく力強く頷き、外から鐘の音が響く。
人々がなんだなんだと外に出て正体を確かめようとしている。もう見慣れた光景だ。
「よし……次のループ、作戦開始だ」
─────────────
[ララの秘密基地]
「傷が治るのに時間がかかっちゃったね」
ようやく治ったララの怪我。数ヶ月かかってしまった。
他のメンバーはケイの動向を探っているのだが一切見つからない。
鍛錬に時間を費やしたい思いだったが、どこの地区を探してもケイがいなかったのだ。
(逃げた──?いやありえない。仲良しな彼らの事だ)それならこの数ヶ月、仲間と行動せずに何を……
嫌な予感がララを襲うが、それを確かめる方法はない。今はただ、決戦の日に待つ。
それだけだから。
──────────────
[場所はオリアーナ大聖堂]
ケイとルティアは、そこの中心。
オリアーナを模した像の前にいた。
神に対する信仰の中心地で神への反逆を行うのだ、これほど痛快な話はない。
「……始めますよ、ケイさん」
「…………これ、貰ってくれ」
胸ポケットからルティアに差し出したのは手紙だった。
「これは?」
「俺の仲間に会ったら渡してくれ、“後は任せた”」
どこか寂しそうなケイの表情。それを察したのか察せなかったのかは分からないが少なくとも、寂しさだけではないと思っただろう。
「さて、やろうか」
ルティアの空気が変わり、ケイは目を瞑る。
いろんな所に飛ばされる様な感覚に陥った。
水に溺れる様な何者かに撫でられている様な、様々な感触を味わい高い所から落ちてる感覚を最後にケイは目を開ける。
そこにあったのは自然豊かで山々に囲まれた所。一軒の家とたくさんの森。
一昔前のプリンセスがいそうな所に着いた。
地上にいるのはオリアーナ。確かに見えたのだ。
「勝負だ…!オリアーナ!!」
遥か彼方にケイはいる。そんなものは風にかき消され聞こえないだろうが。
託す、救う、成し遂げる。
この三つの思いが具現化し、もう戻るわけがないと思った物が復活。
(手甲剣!?折れた筈じゃ……)
理由は分からない。ただ一つだけ。
これで[燃焼]を使って武器が破損する可能性を頭に入れて戦う必要はなくなった。
「振り絞れ……[燃焼]!!」
落雷が彼女に迫り───
激突。
瞬時に反応された防がれたが、神への宣戦布告には充分だろう。
「どうしてここに……!!?」
手の甲から生えた剣。
その光沢と共に砂煙からケイが現れた。
「託されたんでね」
リベンジマッチだ。
〜どうでも良い話〜
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