第82話 背負うのは
レノア達を裏切ったケイ。その中には後悔や自責が押し寄せてくるが、
“レノアを斬った。後戻りできない”という考えが今のケイを冷静にさせる。
ただどこまでも空虚で……
(もしいつか戻ったら……みんなはどう思うだろうか…)
裏切り者としての烙印を押されるに違いない。
みんなに嫌われて生きていける自信はないが、少なくとも今。この時…オリアーナからみんなを離すことには成功した。
“あの時”感じた違和感。
─── 「…………?」「………!?」ケイとララが同じタイミングで宙を見つめた……
この時である。
ドライヴ戦で、結界術を使った事のあるケイだからこそ気づいた、“結界の綻び”
何者かが、もしかしたらオリアーナ自身が結界に何かを加えた……のかもしれない。
結界を崩した人間が一人、心当たりがあるのだ。
もしかしたら“彼女”こそが……。
彼女を見つけ出し頑張って貰って、ケイのやる事は一つ。オリアーナに挑む。
そうして、結界を破壊し……
(全てを託す、英雄になるのは……レノアさん達だ)
おそらくオリアーナに何かされ『知覚者』となったララ達。オリアーナに何をされたかは分からないがケイもその一人だ。
現在夜の七時。
探す時間はたっぷりある。
なるべく気配を消して気づかれない様にしよう。
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[場所はララの秘密基地]
「はぁ……あぁクソ……いった…!」
腹部を抑え血を止めようとするララ。それをオロオロしながら見るリシャウ。
「そんな心配そうに見つめるなリシャウ。余計惨めになるよ……」
「でも……私はララが死んだら…私は…!」
完全に取り乱しているリシャウをなんとか宥めるララだった。
取り乱したいのはこっちだよ。とため息の一つや二つでかかったが、今そんな暇はない。
なんとか血を止めなければ。
「しょうがない……焼くか。フェレター、火…持ってない?」
彼はララを無視。代わりに鎧の女が自身の剣に火を通し、ララの腹を焼いた。
この焼くという行為に一応意味はある。治癒魔法をかけて貰った方が良いのだが………
このループではララ達の悪名は広がっている可能性があり、教会に行き僧侶に頼った所ですぐバレるだろう。
次のループまで待てば良いのだが、待つまでには死ぬ。緊急の応急処置だ。
「ありがとうリル。そう言えばヘルは?」
「鍛錬」
「あいつらしい」
リルとヘルは姉妹。リルは“鎧の女”ヘルは妹で“槍の女”である。リシャウも然り彼女達はララに拾われてここまでの力を得た。
親に捨てられた孤児姉妹と親も友人も全て失った女の子。
リシャウは最も深い絶望を得た者。
[時は十年前。ララ・オーシャン:二十歳]
その時のリーバはまだ魔物との戦争が絶えず、近くの村などは魔物によって滅ばされ人間は次々と殺された。
「酷い有様だな」
ララも魔物と同じく人を殺し拉致をしようとしていたのは言うまでもない。
ただその荒唐無稽さは魔物の特権だが。
理性のカケラもない破天荒な戦い方はあまりにも無残で………
そこにちょこんと座っていたのは目をつぶっている一人の女の子。
ガキでもなんでも良いから人を拉致って武器を作りたかったララはその子供を連れていった。
すると子供はララに深い忠誠を誓ったのだ。
確かにある程度働かせる為にある程度の衣食住は提供した。
特に理由はない。
助けて貰った恩義を感じているのかは知らない。
実際それはどうでも良い。
彼女がララの為に“命を賭ける”と言った時から気づいた時にはもう隣にいた。
自分と同じ『オーシャン』という名を付け………
特に意味もない。
そこからは姉妹を拾ったりした。
するとなんと言う事か、リシャウもあの姉妹も力を付けララ達が裏社会の大物として言われる様になったのは。
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「ララ。もしかしてまた戦うつもりか?」
そんなリシャウも、今はララなしでは生きていられない人間。
その様子を見た他の裏社会の人間は、
“女が女を抱いたのか?”
など、
“依存する様にコントロールしたのか?”
などを聞かれたが全く何もしていない。むしろ彼女を抱く…なんて事をしたら更に依存されそうだからやめておいている。
「まぁね。ボクには野望があるから」
野望?ときょとんとした様子で聞くリル。彼女の野望は野望と言うには小さく、夢というには大きい。
「そうだね……今ここで宣言しようか?[燃焼]を世界に広め、“殺戮の世”を作る事だ」
[燃焼]が誰でも使える様な技術になれば、雷・風を扱う時、天候の都合を無視して使える。
魔石なんて言う[燃焼]の劣化版に頼らずとも誰でも全ての魔法を扱える世界。
(その為にはオリアーナの[楽園]だなんて邪魔だし気持ち悪い。順序で言えば、ケイ達に雌雄を決して次はオリアーナ……か)
敵としては申し分なし。
ただ、勝利するにはケイを殺す以外に他ならない。
(そして、ケイの事だ。そろそろ気づいただろ…!彼らが五傑を仲間にする所をボクたちが美味しいところを取る…とね。そして……あの時の違和感は一体…?)
まぁいいか。と先程の違和感は忘れ、いつかくるであろうケイ達との決戦に備え療養へと向かったララ。
そんな決戦にケイはいなかった………
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[場所は街の中:南地区]
花売りの少女探し。
そこにいるのか、どこにいるのか、一切分からない。
ガイル、フレアにも缶バッチを配っていた所を見るに他の地区にいる可能性も大アリ。
もし缶バッチを渡したのは偶々で、結界にも何も関係していない場合もある。
(ただ知りたいんだ…もし関係者だった場合は、レノアさん達に“勝利”が舞い込んでくる…!!)
リサ、タクトを救出し、オリアーナの結界を破壊し後は任せる。
こればかりはケイ独りでやった方が良い。
そして、独りでやらせてくれないと思ったから……そうした。
一番最初の、フレアを仲間にしようと四苦八苦していた際のルートに少女がいて、金貨を渡した所までしっかり覚えている。
そこに少女はいなかったが。
(次だ……)
こうして南地区を歩き回ったが特に進展はなし。
次のループへ行く為の鐘の音。
視界が真っ暗になった。
すると………
(位置が……変わってない…!!)
結界の綻びはもう日時までに干渉できていなかった!
ただ、他の人物は同じ日にちで同じ朝を迎えていた。
服屋にはレノアとハウ。
「よし!!リサちゃんを救う為に…二人で頑張ろう!!」
「そうだな…!」
そんな様子が聞こえてきた。
これが……裏切り者の末路。
そして、オリアーナがララについた最後の嘘だ。
『知覚者』になると、人々はゆっくりとその人物の事を忘れる様にと画策していた。
完全な後出し。
仲間全員が知覚者に囲まれているララはこれに気づかないだろう。
[現在のループ数:5]
たった五回のループで全てを終わらす覚悟を『彼女』は持っていた。
(……………………)
空を眺め、一つだけため息を吐いたケイ。
もう……後戻りは出来ないのだから。
東西南北にある地区の一部分に少女はいる。
それを当てるまで彼は争い続けるだろう。
リサ達を“救う為に”
主人公交代。




