第76話 折れた心と燃える翼。
「どれくらい寝たんだ…」
現時刻、二十一時。
ノクシアがまさかの裏切り者と発覚。レノアとハウを殺され怒り頂点の時に何者かによってケイは気絶。
ケイは血を流し虚な表情で地面に倒れている二人をただ見つめてる。
「れのあさん……はう……」
ありえない、信じたくない。様々な感情が入り乱れては消えを繰り返し、最終的には虚無に行き着いた。
どうせ次のループでは時が戻り蘇る。
そんな事すら忘れ、ただ二人の遺体を眺め……
──────
[別の場所、西地区騎士団所]
『五傑』という居場所を裏切り敵味方問わずに戦いを望む殺戮人形と化したフェレター。
両者、剣術はトップレベル。
フレアは彼の様に何か特別な技術は要していないが経験で、フェレター最速の一太刀を弾いていた。
「フレア。もう分かってんだろ」
「何がだ!!」
真顔のまま剣を振り、続ける。
「お前じゃ俺に勝てない」
ただ太刀音が部屋中に響き渡るだけ、誰も気づかない。
恐らく部下はもう再生不可能と呼べるレベルに………
「チッ!!」
動揺と怒り、本来任せてはならない感情に身を任せ剣を振るう。
フェレターの剣技を戦争中常に見てきたのだ。
仮にそれが自分の命を脅かす者でも対処できる。そう思っていた。
ただ唯一、一つだけ見た事がない技術がある。
奴の能力だ。
「[加速]」
そう呟いた時、フレアの胸から血飛沫が飛ぶ。
何が起きたか分からぬまま地面に倒れる。
気づけば体中の炎は消え、袈裟斬りされたという感覚だけは残った。
フェレターが彼女の首を刎ねようとした瞬間、胸ポケットからある缶バッジが彼の目につく。
「んだこれ……不細工すぎるぜ」
子供が作ったのだろうか、それにしてと下手くそなバッジに奴は鼻で笑った。
“不細工”と呼ばれ怒りが更に込み上げてくるが特に何もできない、[再]唯一の代償である膨大な“体力消費”がここで足を引っ張ったのだ。
(つい…反射で怒りが込み上げたが、そもそも……あの缶バッジはなんだ…?)
「………じゃあな」
フェレターはトドメを刺さずに、上から飛び降り何処へ行ってしまった。
だがトドメなんて不要。彼女はもう死ぬ。
ケイの最初の作戦は失敗に終わったのである。
───────
[数時間後……]
もうすぐで三回目のループが終わる、ケイは現場から一歩も動いていない。
心ここに有らず……と、言うわけだ。
ノクシアの裏切りもそうだが、悲しいというよりは怒りが勝つ。
ただ裏切られた事による“結果”が、ボロボロである証明。
次のループで何か出来るだろうか、今度こそララ達に叩き潰されて終わりだろう。
(あぁ………死んだんだな……二人とも…)
何よりも大切な仲間が自分の手から溢れた。
そうして、次のループを知らせる鐘の音が鳴る。
視界が真っ暗となり、また──あの時へと戻った。
[現在のループ回数:4]
視界を開けるとフレアをスカウトする為、出発を今か今かと待っている…ハウとレノアがそこにいた。
その顔はとても明るく、先刻死んだなんて一ミリも感じない。
「……あ………!!!」
ケイはよれよれの状態で、立つこともままならなくなっていた。そう言えば時間が巻き戻るんだったと丁度思い出した。
力が抜けて、全く立てずそのまま四足歩行で歩きレノアとハウに抱きつく。
「ケイ君!?」
「どうした参謀?」
困惑した二人を一切介さず、ケイからは涙と言葉が溢れる。
「ごめん……!!助けられなくて……ごめん……ごめんなさい……!!」
もう次の瞬間、前回のループの様に刺客が来てもおかしくはない。
それを意識できるほど余裕はなかったが。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃ……!!」
その様子はレノアのトラウマに酷似していた。ケイの記憶が戻った時と───同じ…
息が荒い…声が出ないし言葉を紡ぐ事も出来ずにただケイを抱きしめ返したレノア。
何があったの?
大丈夫?
私が……私達がいるよ!
それに近い励ましの言葉が浮かんで消えた。
今のケイにはどんな言葉も届かないだろうと思う。
「何があったんだ……参謀……!」
ハウも同じく抱きしめ返し、あまりにも痛ましい顔をしたケイになんて言えば良いかわからなかった。
「ごめんなさいごめんなさい……!!」
涙が止まらない。もうこのまま逃げたい。それを許してくれないと言うのなら、人は立ち向かうしかないのだが……
もしループしているのがレノアならハウならザルツなら、きっと良い方法を見つけられたと…そう思っている。
「大丈夫……私は“ここ”にいるから。絶対!!」
ケイだけではなく、レノアさえも涙が溢れてきた。ハウもその言葉に強く頷き、三十分以上…このままだった。
───────
[場所はララの秘密基地]
「お〜!お帰りー裏切り者二人〜!!」
煽る様に嬉々として大声で語るララ。その様子に苛立つ二人だが事実なので何も言えない。
「しっかし、お前のメンバーは女ばかりだな」
「何?嬉しいの?」
ララは揶揄う様に返すがフェレターはつまらなそうに答える。
「胸も尻も小せぇ女に興味はねぇよ!しかもララ直属の部下とやらは全員スレンダーだし」
吐き捨てる様に言ったフェレターを横目にノクシアはこの男を睨みつける。
「さて、部下三人と裏切り者二人で何をするつまりなんだ?ララ」
仕切り直しと言わんばかりにノクシアは口を開く、ララは突然真顔にかり、何かを考え出した。
「ララ?」
「…………オリアーナめ…ボクを嵌めたな…」
舌打ち混じりにそう語ったララは突如窓を開けて外を身始める。
「住民が………減ってないか?」
アジトの近くにあるクレープ屋、そこには老夫婦がやっていた筈だ、だが……そこにはもういない。
オリアーナが笑みを浮かべているのが分かる。
彼女の目的は………!!
─────
[場所は???]
「『楽園』の創造。そして……この世界の刻を戻す。ルティアと一緒にね?」
日差しが心地よい草原でピクニックを行っていた二人。
外は暖かく妹は寝てしまった。
リサ……兼ルティアは、オリアーナが行おうとしている一部始終を知らない。
能力[永劫]。
ララを出し抜き、ケイを置き去りとした彼女の野望は現在進行形で……進んでいた!!
───────
[場所は服屋]
思いっきり泣いたケイ。
心はボロボロで、今もレノアの背中をギュッとしたまま次の作戦へと駒を進める…と言うわけではなかった。
「……本当に……大丈夫??ケイ君…」
「無理するなよ」
二人から頭を撫でられ「……やめて」と返すも抵抗する素振りはない。
“嬉しい”と顔に出ているだろとつっこみたかった二人だが、今ここで揶揄うと良くなさそうだから黙る。
もし彼が動物で尻尾があるならぶんぶん動くだろうと思ったレノア。無論それも言わない。
更にそこから数十分。
「え〜っと………ごめん」
頬を赤らめながら二人に謝る。ごめんなさいモンスターになった事は本当に申し訳ないと思っている。
「あぁ大丈夫だ」
「うん…大丈夫…」
レノアの体を掴んで離さずに抱きついたエロガキ事ケイについては特にお咎めなしだ。
ケイ自身、罪悪感と謝意の気持ちしかなかった。それはレノアも分かっている。
分かっているのだが……
(ちょっと…恥ずかしい……)
現在午前、十一時。
オリアーナの野望、ララの予想外。
もう躊躇っている場合ではない。
このループでケイは何を成すのか……。
もう少しで100話いきそう……




