第75話 裏切り者
ごめんなさいいつも通りでした。
「神殺しに協力してくれませんか」
ケイの真っ直ぐな目に少なくとも『嘘ではない』と判断したフレア。
彼女の背中にまとわりつく様なとんでもない予感がきた。
「神殺し?神って……誰だ」
「オリアーナです」
マジか。
神を殺そうと画策する人間がいるとは。
「……マジで?」
「マジです」
頷くケイを横目にフレアはある事を考える。
(こいつは多分良い奴だから多分、誰かの為なんだろうが…いまいち信用しずらい)
後ケイの目がキマッているのを見て少し怖さを覚えた。
「お前……人…殺した事あるだろ」
低く呟いたフレア。ケイの目は一瞬虚となったがすぐ元に戻り、
「………はい」
と返す。彼にとってそれは人助けの為であり仕方がない事だが、ケイはその罪を忘れた事なく常日頃、記憶に刻みつけている。
『英雄』の一人が悪人を何度も斬り殺した…なんて事は世間には伝わっていないし、伝わった場合人殺しとして見られるかも知れない。
「……まぁ私もあるからそこを非難するつもりはさらさらないよけど」
──────
話し合いが始まる中、他の場所では……
[場所はララの秘密基地]
「お!ララの姉御!帰ったのか!?」
先刻ハウと戦っていた女は本を読んでいるララを見つけ嬉しそうに声を上げる。
ララの表情は少しだけ悲しそうだ。
「ディアンが死んだ」
本をばたんと閉じると再び口を開く。
「まぁでも、まさかあれほどだとはな。ディアンを一人で戦わせたボクの責任だ」
「責任とか……今はいいよ」
面倒くさそうに答える彼女を横目にララは続ける。
「恐らくフレアはケイの味方になるな………まぁボク達にとっては手が一つ失われたくらいで騒ぐほどじゃない。現在十二時……次のループまで残り十二時間」
「そう言えばオリアーナに“暴れるのは禁止”って言われてなかった?」
不敵な笑みをララは浮かべた。
それと、オリアーナが言ったのはこうだ。
─── “万が一”彼が能力を突破する事があったら暴れる事を許可するよ
「ルール内なら……『つまり逸脱した行動をするな』と言うわけさ」
するとララは相手のいないチェス版に目を向けある駒を捨てた。
その駒はポーン。
大量にあるポーンの駒を全て捨てたのだ。
「ボク達に必要なのは“最強の駒”」
次に触れたものは二つあるナイト。
盤上にあるのはキングとナイト、そしてクイーンの三つだけ。本来ゲームを成立させる上のものがあまりにも少ない。
「期待しているよ…ナイト。君の欲望をバシバシぶつけてくれ」
「黙れ、そのケイ達を殺ったら次はお前らだ」
「はいはい」
ララはもう一つのナイトの駒を握り、誰にも聞こえない声量で呟く。
「案外近くに……ナイトはいるかもね……」
第一と第二の矢を今、この瞬間───…放つ。
──────
[場所は西地区騎士団]
ケイは今までの事を端的に説明した。
「成程ね、[永劫]……彼女がやった事なのか…」
全然気づかなかったよと雑に返すとフレアは考える姿勢を取る。
「(こいつの言いたい事はなんとなく分かった。まぁそれが…)お前の一人芝居じゃないならな」
「………ッ…!」
「で、お前はなんでそれが分かんの?説明されなかったけど」
何処に持っていたかは分からないナイフをケイの首元へと優しく当てる。
「………それは……分からないです」
馬鹿正直に答えたケイを見て思わず笑ってしまったフレア。
ケイの額に見事なデコピンをかまして笑顔のまま答える。そこには信頼と安堵があった。
「お前みたいな馬鹿野郎そうそういないよ…本当。良いよ信じるし味方になる。私にも目的があるからね」
「目的?」
彼女の表情が少しだけ曇る。
「イリス──殺された親友の仇討ちだ。私とそいつは幼馴染であり親友だったんだ……他の『五傑』も動いてくれてると良いんだか……」
そんな中ある考えがケイに浮かぶ。
何故、フレア達がいる西地区へ行くとバレたのか。
そもそも先取りされるのはまだ分かるが、フレアを狙っていることを知っていたのか。これが一番不明だ。
(まさか……誰か話したのか?)
知っているのは、俺とレノアさんとハウ。
いや……まだいる……ノクシアさん。
取り敢えず二人はありえない。絶対に。
裏切り者がいるかも知れないと考えた時、入り口に一人の男が剣を腰掛けたまま入ってきた。
武器を何処からでも出し入れ出来るこの世界で、ドライヴの剣以来鞘を久々に見た様な気がする。
するとフレアの表情が少しだけ明るくなる。
「フェレター…?随分と久しいな!」
「あぁ」
フェレターと言う名の男は鞘に手をかけた。
その一瞬。鞘から剣を抜く瞬間。
ケイは無意識に───
「!!」
フェレターとフレアの間に入り込むことに成功した。
一秒にも満たない抜刀術。自分の力に感謝したのはこれが始めてだ。
「フェレター……!!お前……ッ!」
怒りと動揺のまま剣を作り、奴へと斬りかかるがすんでと所で躱された。
フレアは怒りに満ちていた。彼と言う人間を理解していたフレアは心当たりでもあるのだろうか。
「焦んなよフレアぁ……太刀筋がブレてるぞ」
親切なアドバイス。フレアの怒りを更に増幅させた。
「何故だ……何故私に剣を向ける」
「はぁ……もう分かってんだろ?五傑〜なんて呼ばれて満足するか?お前は。俺は良い戦いがしたいんだよ、それが……“元”仲間でもな」
フェレター・ローレ。
『五傑』の一人。圧倒的な戦闘能力と“殺し合い”の貪欲さでここまで上り詰めた剣才。
抜刀術で右に出る者はいない。
「人殺しの俺達がクズでいないのは人を救うと言う大義があったから。それに反した俺はただのクズだ」
再び奴は鞘に手をかける。
「さぁ……殺し合いだ」
「チッ!!」
ケイも応戦態勢───と何か思い出したかの様にフェレターはケイに一言。かける。
「あぁそうだ……俺みたいな“裏切り者”はもう一人いるんだぜ?」
「………え?」
その言葉にケイの頭に思念が消えた。
それと、一VS一でやりたいフレアは丁度良いと思い頭が真っ白となったケイの腕を引っ張り……
「ケイ!!落ち着け!」
「!!」
「お前はその裏切り者という奴を探せ!!こいつの相手は……私がやる」
フレアは体に炎を纏い始めた。天井を壊して炎の翼で上空へと飛ぶ。
ケイは[燃焼]の雷で壁を壊し、自分の予想を確かめるべく『服屋』へと向かう。
──────
こうして数分かかったが、服屋のドア前に着いた。
扉をゆっくりと開けるとそこには血の匂いがケイの鼻腔を強烈に刺激してくる。
嫌な予感が漂っているからか、いつもよりも五感が研ぎ澄まされている気がするのだ。
動悸と激しい息遣いのまま、扉を勢いよく全て開けた。そこにあったのは二人の死体。
そして───剣だけ血に汚れた『女』がそこに佇んでいた。
「…………何してんだよ……アンタ…!!」
その女は世話になった人の幼馴染で…この国について教えてくれた……ノクシアだ。
「………濡れ衣…ですよね……偶々そこに…出くわして……偶々その剣を…握ったんですよね……そうなんですよね!!?」
捲し立てる様に叫ぶケイの言葉なんか聞こえているのかいないのか分からない感じだ。
「………違う、ワタシが殺した」
ログロさんの知り合いなら……幼馴染なら…良い人だと無条件に無根拠に思っていた……だが、一つわかったことがある。
「…………………」
「どうした……?何も言わないのか?“犯人”がそこにいるだろ?」
「斬る…」
言葉をなんとか紡ぐ。
「斬る…!殺す……殺さなきゃ………俺は…アンタを!!!」
そう言った後、背後からの衝撃で呆気なくケイは気絶する寸前へとなった。
ノクシアは最後にこう呟いた。
「今や私も『知覚者』だ。次のループからはお前らにそう簡単には近づかないから安心して……寝ていろ」
激昂して視野が狭くなったケイに、その言葉一文字一文字を理解できるほど今の彼は冷静じゃない。
二人の裏切り者は、ケイとフレアに……いや、レノアとハウにも牙を向いた。
その出来事はとても…………
〜どうでも良い報告〜
この作品ではそこそこの数の悪人が出来てきますが、子供をガキと言ったり、黙れと会話を止めるものが今までいなかったと言う事実。
“黙れ”と言う単語を80話近くやって初めて今使った感じがする。




