第74話 『不死鳥』顕現。
男が大量に押し寄せ今もケイ達を斬らんとしているこの状況。
ただ彼女……フレアは冷静だった。
(操られているな、そっとやちょっとの攻撃で目を覚ますならいいが…)
迷わず男の腕を切断したが勢いこそ弱まるものの、意識が戻る事もなかった。
ケイは剣を用いる事なく格闘で応戦。殺したくないと言う思いが強い。
「…………舐めやがって…」
フレアは男達の首を斬り始める、ケイはそれを止める前にはもう勢いが弱くなっていた。
「フレアさ……!この人達は民間人ですよ!!」
静止虚しく彼女の手は止まらない。怒りに身を任せているのかはわからない。
少なくとも今の彼女に他の手がないのはわかった。
「よし」
民間人の死体が山積みとなっている状況を見てケイは怒りと疑心に満ちていた、頼りになると言われてここに向かったが間違いだったかもしれない。
「なんで……この人達に罪は!!」
「知ってるよ」
淡々とそう言った彼女は階段を上る。この犠牲は仕方ないと言うのか。
ただ彼女のお陰でこうして状況を打破できた、それは揺るがない事実。
「安心しろ、私のいる戦場に死者は出ない」
先刻もそう宣言していたが、真反対の現状にこの人が五傑かどうかさえも怪しくなってくる。
お互い無言のまま階段を上ると、殺意と怒りに満ち溢れた男が血まみれのままそこに座っているのを見た。
「お前……!!」
[燃焼]を真正面で受けたダメージ…にしては随分とくらっている。
辺りには死体。その中にはあの副隊長も、どうやら彼らに削られたと見た。
「部下達に手こずったみたいだな」
「黙れ、これは『代償』だ」
血まみれの男、その顔は狂気的な表情を浮かべこれから起きる事に楽しみにしているのだ。
(ララの指示ではここであいつを殺すか足止めをする事。ただ…ただな!俺のバイブスはもう最高潮だ!!)
すると男は地面に大きく穴をあけた。
「俺の名前はディアン!!勝負だ不死鳥!!」
この建物の高さはおおよそ十二メートル。
ケイ達がいるのはそこの最上階。
その穴は一階まではっきりと見える。
「よっと!!」
男は穴に飛び降り、剣に全ての力を込め始めた。
(俺の能力は[破壊]!!)
万物を知り、万物を理解する事で初めて[破壊]は可能となる。
その為彼は能力を最大限活かす為には事前に情報収集が必要。
あまりにも不便な能力に人々は彼を嘲り見下した。
しかし彼は違う、能力の本領……今、明かされる。
「(本来は死に最も近い時発動する!)[破壊]!!」
数秒後、建物が大きく崩れ始めた。
能力[破壊]の威力を変える事は不可能。
変えられるのはどこを破壊するかのみだ。
それをより細かくより具体的にする事のは至難。
[破壊]に付属品である代償は支払う代償ごとに破壊できるものがより細かくなるの言うもの。
(今!この瞬間!!皆殺しだ!!)
どうせ次のループですぐ蘇る、五傑の本領を見れずに終わるなんて勿体無い。
(見せろよ!!本気をよぉ!!)
一階へと着地したディアンは着々と崩れる建物を自慢気に見つめる。
このまま落下して死ぬ。もう終わりだ。
場所は変わってケイ達のいる最上階では[破壊]の効果をモロに受けていた。
彼にある選択肢は三つ。
1.ここままやり過ごすか。
2.彼女を連れて脱出するか。
3.自分だけ脱出し次に託すか。
「フレアさん!!」
手を彼女に差し伸べ[燃焼]を用いて脱出を狙う。
ただ……彼女はそれを拒否。
手を地面に優しく置き、彼女の背から炎の翼が生えた。
何故彼女が不死鳥と呼ばれるか。
それは、ある伝説が所以。
二十年前、人の形をした数名の魔族が大量の魔物を率いてリーバへと押し寄せた。
『五傑』と『魔族』
二つの陣営の戦争。
二年という長い年月で戦いは収束したがその結果はまさかの死者ゼロ。
リーバへと帰還した彼らの頭から足にかけて傷さえも残っていなかったのだ。
剣も武器も同じ。
この事を五傑は無言を貫き理由は不明。
(なんだ…!フレアさんの体がどんどん燃えて…)
炎の翼は今も燃え続けている中で彼女は一言だけ低く──呟いた。
「[再]」
揺れもなく、熱くもなく、冷たくもなく、痛くもない。
舞う様な炎が建物全体を覆う。
ただ暖かい火に包まれながら、ケイはゆっくりと目を開けた。
そこにあるのは崩れそうになった建物が元に戻り、部屋の中にはフレアとケイの二人きり。
理解できていないケイだがそれはディアンも同じ。
「何が……起こった」
もう体力も魔力もすっからかん。
ここらが潮時。そう思った時───
「見つけた」
副隊長の男が……ディアンを剣で貫いた。
「………何故…!」
ディアンは驚きと疲労でこれ以上声が出ない。
殺したはずなのにと驚きを隠せないディアンに男は一言呟く。
「うちの騎士団は死んでからが本番なんだよ」
フレア・セリス。
能力[再]
不死鳥を模した、慈悲と悲嘆と炎は『死』をも克服する。
死を『簡単』に乗り越える為には彼女に命と力を差し出す必要がある。彼女の騎士団に死を恐れるものはいない。
フレアが死ねば彼女と契約した者は否応なしに死ぬ。
その代わり、完全適応できるというもの。
契約なしで復活する為には死亡してから十五分以内であるもの、自身に大きな代償を払う事で契約なしでも復活可能。
物体、治療、そして死さえも治す彼女の炎。
「さて、任務クリアだ」
差し出した力は蘇る事で使用可能となる。
─────
[別の場所]
レノアとハウの二人は鎧を着た女と戦っていた。
殺伐とした殺し合い……と言うわけではなくただダラダラと攻撃をし、返すだけだったが。
(この女殺意がないな、あくまでも時間稼ぎか)
(う〜ん面倒だな、と言うか…ディアンが死んだ。ララの姉御も撤退しているし…)
二人の一撃を軽く返しながら作戦の失敗を悟った彼女が選ぶべき次の択は、
「ごめん二人とも!帰る!」
大ジャンプで建物の中に入り何処かへ行ってしまった。気配も感じない、中々優秀な戦士だと二人は悟る。
──────
「それで……さっきのなんですか、とういうかなんで俺の名前を─」
フレアはケイの唇に指を置き黙る様促す。なんだったんだと建物内から外へと出ていく住民を見届けていた。
「私と契約した部下達と仲間以外私の能力を知らない」
蘇るなんていざ知らず、死んだことすら気づかないだろう。
住民達が一人残らず家へと帰った事を確認した後、彼女は重い口をやっと開き始めた。
「カミリーズを救った一人ケイ・タケダ。流石の私でもそれは知ってるよ」
「……でも姿は知らないはずでは?」
「体内から雷を放出し加速する男という情報を見てお前じゃないと考えない方がおかしいからね」
ケイに向かって微笑むフレア。この人の力は異様だ。
死者を蘇られせるなんて……
警戒は解けないがそこはひとまず置いておこう。
「フレアさん、協力して欲しい事があります」
「協力?」
「もしかしたらの話ですけど…。神殺しに協力してくれませんか」
強く、真剣にフレアを見つめるケイ。そこに恐れも焦りもない。
今この瞬間。
ただ強く……見据えた。
次回展開が大きく変わるので長くなるかも。




