第73話 フレアを狙え!
前回のあらすじ。
オリアーナの能力[永劫]により世界全体をループさせるようにした。そこにルールを設けた彼女、渋々ルールに従いながらも彼女を倒す手をケイは探す。
現在夜十一時。後一時間で次のループに移る。
時間がただ巻き戻っているだけなのは分かるが、みんなの記憶が消えてしまうという条件がケイの精神を少しずつ蝕み続けていた。
その様子を見抜いた二人がケイを見据え同じ言葉を呟く。
「頼んだよケイ君!」「頼んだぞ!参謀!」
二人してケイの背中を叩くと雑念がふっと消える、今やるべき事はシンプルだ。
仲間を増やす。そしてオリアーナへと宣戦布告。たった一回のループで戦い勝つ為の布石を打つ。
そうして時計の針が十二を指す瞬間。
外から鐘の音が聞こえケイの視界は真っ暗に染まる。
[現在のループ回数:3]
「よし」
目が覚め、レノアとハウがケイを心配そうに見つめているこの状況に戻ってきた。
「二人とも悪い、黙って聞いてほしい事が───」
そう言い終わる前に殺気。背後から斬りかかる様な……
「!!」
「へぇ…やるじゃん!」
剣を持ち鎧を着た女がケイに斬りかかるが、寸前に武器を作れた為ガードに成功。
新しいループのタイミング+敵襲
これを踏まえると彼女がやろうとしたい事などある程度推理できる。
「ッ!!」
女を弾き飛ばし少し遅れて臨戦態勢となった二人を止め、ケイは口を開く。
「お前、どっちだ」
女は?を浮かべていた。ただすぐ何を言いたいか理解したのか言葉を返す。
「さぁね」
再び斬りかかってきたが余裕で防御する。もしかしたら知覚者が前回のケイの如く全てを話して彼女を動かしている…かもしれない。
ルール1の、『ループしている事を話すのは可能』が足を引っ張っているのだ。
(誰の命令で俺を?そもそも他にいるのは分かるが彼女が知覚者ではない可能性も……)
ただ一つだけ、彼女が知覚者か知覚者じゃないかを確かめる必要がある。その方法はハイリスクハイリターン。
ただこのまま時間を無駄にするべきではないと判断しケイは剣を地面に突き刺し、無防備な状態となる。
「こい!!」
恐怖に震える手を抑えながら女の剣をじっと見つめて見極める、彼の予想が正しければ………
「ッ…チッ!」
彼女が狙うは腕!つまり!
「[燃焼]」
雷速で回避したケイ。女は驚きの表情。
「ハウ!レノアさん───頼んだ!!」
ケイの身に何が起きたかは分からないが、頼る事を知った彼が一人で動いたという事は、何かあったのだろうと理解した二人は女の足止めにかかった。
背後から太刀音が何度も何度も響いている、ケイはやっぱり助けに行った方がいいんじゃないか、
ルール全体がそもそものフェイクの可能性などを疑った。
彼らが記憶を失うところまでは割り切る事が出来なくもなかったが、死ぬのは絶対耐えられない。
(………俺は!)
再び雑念を振り払いケイは走り出す。目指すは西地区、騎士団隊長フレアの元へと向かう。
走っている以上、住民の人達もケイに声をかける事も出来ずに目で追う事しか出来なかった。
一応彼は走り去る瞬間に『本当に困っている人』がいたら助けるつもりだ、無論いない事は確認済み。
たった十五分辺りで騎士団到着。フレア隊長を仲間として口説き落とせるかと言われたら微妙だがやってみせる!
扉を勢い開け内部を確認………した……ら…。
「ララ!!」
部屋の中でララがちょこんと座っている所を目撃した。
「やぁ、ケイ。『お互い』に大変だねぇ」
「お互いって……チッ!!」
どうやらオリアーナ前に最も厄介な相手が出来てしまった様だ。
「彼女を味方にしたいなら無駄だよ、ここはもぬけの殻」
一瞬彼女が皆殺しにしたのかと思ったがどうやらそうではないらしい。
「何処にいるんだ?」
「この上。ボクの部下と彼女達で籠城戦…と言った所かな」
嘲る様に笑う彼女を横目に嫌な可能性と一気に信頼を得れるチャンスの両方がケイの頭に流れる。
(籠城……ここに来ることが分かっていたと思うのが妥当か…それでいて玄関に待っていると言うことはつまり)
彼女はここでケイを足止めしフレアという策を徹底的に潰す気だ。
ララが知覚者である事は確定、そして妥当オリアーナに動く為には同じ知覚者同士で動いた方が効率が良い。
合理的な奴ならケイとの協力を力尽くでも求めてくるはず、奴はオリアーナ側の人間である何よりの証明。
(そもそも知覚者にある条件はなんだ!?ルールについてもまだ分かってることも少ない…!)
現時点でわかる事は一つ、ループを積み重ねて経験を得る事で成功…は出来ないと言う事だ。
最低限のループでやらなければ、ララによって手がどんどん失われていく。
「………まぁなら…どけ!!」
[斬]を放ちララがそれを剣で受け止めた所を[燃焼]で走り去る。
ただララは追いかける事なくケイを見送った。
「………行ったか」
ララは気が抜けた様に地面へと再び座り込んだ、腹部を強く抑えて───
『五傑』の一人、イリス・グラファイトを殺す事に成功したララ。
彼女はある戦争により戦いから身を引いたがララに目をつけられた。
結婚して妊婦だったイリスは不自由な体のまま剣を持ち懸命に戦ったが敗北。ただ傑物と呼ばれるだけはあり、そんな状態でもララの腹を斬ったのだ。
ララは満身創痍の中で残った夫と腹の中にいる子供を斬殺。
それはまだ治っていない。
(あ〜〜!しんど!!)
他の五傑は全員現役。オリアーナの後ろ盾がある以上無理やり戦う事も出来たが不明すぎる点が多い以上こういう回りくどい択をとっているのだ。
(来ないのか?まぁいい)
燃焼で階段を駆け巡り上階の喧騒の下へと向かう。
「な……!」
階段を上がると兵士達の死体が次々と見えてきた。
「もしかしてもう遅かったのか?」という考えが浮かぶがひとまず確認の為階段を駆け上がる。
すると上から太刀音、交互交互に響く金属音は誰かが一対一で戦っている証明。
そこにいたのは険しい表情で敵の剣を返す騎士と乱雑に尚且つ殺意に満ちた剣筋で騎士を斬ろうとする男。
「どうしたどうした!!?仲間殺られてなんも悔しくないのか!!?」
男がそう呟くと女騎士はつまらなさそうに答える、こちらをチラッと見て呟く。
「私にとって死などありふれたものだ、心を痛める訳がない」
そう呟いた時ケイはすでに男の背後にいた。
「誰だテメ──」
「[燃焼]」
下から上へと斬り上げる形で男を吹き飛ばしたケイは彼女を真っ直ぐ見つめる。やっと……と言う訳ではないがケイにとってはやっと会えた。
「初めまして、フレア・セリスさん…で合っていますか?」
「あぁ合ってる。初めまして───ケイ・タケダ」
ケイは驚き目を大きく開く、彼女はその様子を見てふふっと軽く笑う。
「君分かりやすいね、で……まぁなんで名前を知っているのかと言うのは……この問題を片付けてからにしようか」
「…下から足音」
ドタバタと階段を上がるその音はどんどん大きくなっていく。
「ッ!!?」
「……へぇ」
その正体は大量の男、剣を持って今まさに二人を斬りかかろうとしてくる。
「クソっ!」
「焦るな。私がいる以上死者は出ない」
フレア・セリス。
彼女の異名は畏怖の対象。
その名は──『不死鳥』
風邪をひいて投稿が遅れてしまいました。
すみません。




