第71話 『永劫』開始。
ケイ達はログロが寄越した助っ人のノクシアの手を借りつつ、リーバでリサ達救出作戦を考えていた。
これからどうするか、どれから始めるかを今は考えるべきだ。
「頼れる人を探してるんだよね?残念ながら南地区に『五傑』はいない」
「いない?」
怪訝な顔になるハウ。彼は聞いていないだろうが船の中で噂になっていた。
「うん、何者かによって殺された。これは噂の範囲だけど体中切り傷だらけだったらしいよ。今はマシになったけど、当時は最悪だったよ……みんな家に籠って酒場は閉店状態で……あぁいやなんでもない」
「切り傷………!」
レノアの拳に力が入る、心当たりがあると言いたげな顔だ。
「多分それララさんが犯人です」
「ララ…ってまさか…裏社会の大物じゃ…」
奴はそこまで有名なのかとケイは心の中で思った、確かな強さはある奴だったところを踏まえるに表社会でも名だたる奴なのは合点がいく。
「………まさかアンタ達そいつに喧嘩売る気?」
彼女は戦々恐々としている。無理もない、だがそんな大物を小物に成り下げてしまうくらいの大物に挑もうとしているのだ、ララ程度を恐れている時間はない。
今はっきりと敵なのはララとオリアーナ。こっからはスピード勝負。彼女達が何かをやらかす前に味方を増やし、挑む。
「南地区に頼れる人はもういないだろうから、西地区に行ってごらん。フレア・セリスという騎士団の隊長がいてね。真っ直ぐな人で頼りになると思う」
ノクシアさんによるとリーバ全体で有名な人らしく、明るく、強い人らしい。
ただ人柄などの情報は多いがどれくらい強いのか、どの能力を持っているのかとかは一切不明。
「それじゃあ翌朝、行動開始だ」
ハウとレノアは頷く。西地区に至る道のりを調べて、なるべく時間をロスしない様に作戦会議を徹底した。
そんな事をしていたら日が暮れ彼女の店で寝る準備をしていた時、突然ハウが呟く。
「?なんだ今の」
あまりにも突然呟くために二人は驚きながらも彼に聞いてみる。
「ハウ君どうしたの?」
「………いや、今なんか魔力が通り過ぎた様な……」
もしかしてハウの本能が何かを察知したのかもしれない。しかし……
「襲撃にしては……随分と遅れがあるな」
実際、今もこうしてハウの魔力探知?から刻々と時が過ぎている。
「気のせい………なのかな?」
不安げに語るレノアにハウはあまり納得がいっていない。
「参謀達は寝ててくれ、俺は暫くこの辺りを見張る」
ケイ達の返事を待たずにハウは飛び出して行ってしまった。そんなケイ達も気になりはじめハウを追いかける。
─────
そんな中、別の場所で女性二人が誰もいない真っ暗なオリアーナ大聖堂で何かをしようとしていた。
その人物とは……
「で、本当にそんな事が出来るわけ?ボクは信じられないな〜」
「……………昔、私が神の立ち位置にいた時いつも人類に良く説いていた事があったの」
ララとオリアーナ。二人の黒幕、これから起きる史上最大の事件首謀者。
「『能力とは魔法を補佐するものだ』とね。でもそれは人が増えていくにつれ変化していった。持ちつ持たれつの関係から能力は独立したものに、魔法の補佐を行う能力を持つものの方が希少となって行った」
長々と語るオリアーナの話を黙って聞くララ。
すると彼女は「ここかな?」と言い残し────
地面に手を突き刺した。
「ま、そんな古い時代から生きてる私の能力も補佐とは一切関係ない独立した能力なんだけどね」
彼女は深呼吸をして、言葉を吐き出す。
「さて、やろうか」
「なっ……!!」
ただならぬ威圧感に押されるララ。そんな様子は気にせず彼女は一つだけ唱える。
「[永劫]」
そう唱えた瞬間、魔力が爆発………するかと思ったがどこか霧散した様に消えてしまった。
ただ確実なのは、たった一瞬だけだが異次元の魔力爆発があった。という事。
「これから私の野望の為に“この街全体”が答えてくれる。[永劫]による支配を受けないのはあなたとあなたの部下四人だけ」
「ちょっと待て、それだけか?」
「うん、それだけ。万が一彼が能力を突破する事があったら暴れる事を許可するよ」
舌打ちをしたララ、完成に彼女に振り回され続けて怒りが頭の先まで来たがギリギリで耐えた。
「はぁ……まぁ楽しみにしてるわ。ボクもケイに勝つ為に頑張るとするかな」
遂に発動した[永劫]。
その能力がケイ達……いや、ケイに牙を向く。それを知る事になるのはもう間近だ。
─────
こうしてこの街で初めての朝を迎えたケイ達。
ただそれはあまりにも特殊で…………
「結局三人で交代交代に魔力の発生源を調べようとしたけど………無駄足だったな………」
眠そうにそう呟いたケイ。
日にちが変わる直前まで探索したが特に収穫はなし。
ただ眠くなっただけだった。
「すまん二人とも……俺の杞憂だったみたいだ…」
申し訳なさそうに語るハウを二人は宥める。
「ハウの勘にはいつも助けられてるんだ。そんなお前でも失敗はあるさ」
「そうだよ、ハウ君はそのままでお願い!」
二人の言葉に微笑みで答えるハウ。改めて良いパーティにいるなと実感したのだった。
三人は前日詰めていた作戦通りに西地区へと向かい、フレアと呼ばれる人物へと会いに行く。
現在時刻は八時。
昼前には会いに行きたい。
「へいにいちゃん!これ食べるか!?」
「そこのお兄さん、これ食べる?」
「少年よ、空腹になるな」
ここの街並みは暖かい。
そこらへんをただ歩いているだけでいろんな人が話しかけてくれる。
一人一人の善意を受け取っていたら想像以上に時間がかかってしまった。
食べ歩き……ならぬ食べ走りをしながら西地区へと向かうとボロボロの服をした少女が花を売っている所が見えてしまう。
「あの……お花……おはなを…かって…ください…銅貨一枚で……かまわないので…!」
涙ながらに語る少女を住民の人達は皆無視。
誰も花を買わない。たが少女が売る花はなんて綺麗な事か。
「……二人とも、ちょっと待ってて」
レノアとハウの返事を待たずにケイは少女の下へと走った。
「この花って君が育てたの?」
ケイが少女の目線に合わせてしゃがみ質問する。
涙目の少女は黙って頷くとケイは銅貨一枚…ではなく金貨二枚を彼女の手に握らせた。
金貨二枚とは一週間散財しても余裕で生活できるくらいの値段だ。
ネオニィシティ並びにカミリーズを救った時に金貨はそこそこ貰った為、金の余裕はある。
「それじゃあその綺麗な黄色のお花を貰おうかな」
小さいが存在を強くアピールする様な黄色い花をケイは手に取ると、少女は金貨を返してきた。
「え?いいよ、君のものだ」
ケイも負けじと金貨を返すが少女はいらないといった様子。
「代わりにこれ…受け取って?」
渡されたのは瓶に付いてるフタみたいなものだった。それをフタを缶バッチの様に使って欲しいらしい。
「……本当に良いんだね?」
こくりと頷いた少女。ケイは目の前でフタを服の胸ポケットに付けた。
するとレノア達も駆け寄ってきて、少女はそれを見越した様に二人にも缶バッジを差し出す。
二人は迷わずそれを付けて少女のポケットにこっそり金貨を入れてその場を去った。
現在は午後二時。
これが全て人の善意による妨害。腹は立たないが焦る。
なんとか西地区に着いた三人は騎士団を探して奔走、数十分経ってしまったがなんとか目的地らしいものが見えた。
「え?入る?入るよね?ね?」
堂々として入る三人。頼もーーと言うわけではないが緊急事態なのは確かだ。
どんと扉を開けると騎士の人達がケイ達をジロッと見てくる。どこか見定める様な目をしていた。
「おい、ここはガキが来るところじゃ………」
年配の男が叱ろうとした時、ケイが口を挟む。
「俺はケイ・タケダです。後ろにいるのはハウ・ゲレーロ、レノア・マフォード」
ログロが言うにはケイ達の名は世界に広がっているらしい。強いと言われる騎士団。世界情勢に疎い事はないだろう。
「成程、百歩譲ってそうだとしてそんな英雄サマが俺達になんの用?」
面倒くさと言いたげな顔だ、ケイ達は年上の恐怖を感じたが怯んでいる場合ではない。
「あなた達騎士団が頼りになると知り合いに聞きました」
「…………頼り?」
男は怪訝な表情となる。
「内容は……あなた達のリーダーに話したい」
冷や汗をかきながらもケイは男を見据えた。
この男の圧が異様でさっきから背中にかけて汗が……
服に染みて気分が悪い。
少し……と言っても数秒の間。それがケイにとってかなり長いものだった。
「…………良いだろう。それじゃあ中で…」
男がそう言った時、外から大音量で鐘の音が鳴る。
「なんだ?うるせぇな」
苛立ちながらも男は外へ出る瞬間。
視界が────真っ暗となった。
─────
(……なんだ?突然真っ暗に…)
……ん!!
(もしかして敵襲?誰が…)
………君!!
(一体何が起きた?)
「ケイ君!!」
「ッ!!」
目が覚めた感覚。目に光が注入された感じがする。
あの真っ暗闇から何が起きたのか。
それと、光が入ってやっと分かった。
「あれ?なんで服屋に?」
レノアは不思議そうにケイを見つめる。
「え?なんでって……それはまだ出発してないよ?」
「…………は?」
驚きに包まれたケイ。そう言えば太陽がまだ上がったばかり。東側にあり綺麗に輝いていた。
「待て待って!今何時だ!?」
「今は……八時だけど……」
『永劫』
開始。




