第66話 負け
リサが敗北し、タクトの意地がハウとケイという強者を戦場へと間に合わせる事に成功。
静かにケイはタクトはと呟く。
「タクト、状況は?」
自身に落ち着けといくら促した所で落ち着ける訳がない。
「リサさんが何処かに連れて行かれて……彼女はオリアーナと名乗ってた。なぁ、これってそんなに凄いのか?」
簡潔に状況を伝えたタクト。この世界に来たばっかの彼なら『この名前』について不可解なのは理解できる。
「お前は宗教の神様が地球に今も実在すると思うか?」
「え?しないと思うけど…」
「この世界の神が彼女なんだよ」
タクトはかなり驚いた評価を見せた。当然だ、神なんていたとしてももう故人なパターンが多い中で現実に、尚且つ敵として今いる。
(彼女はおそらく、レインと同等、もしくはそれ以上!それ程までに重くのしかかる様な魔力…!)
魔力の細かい性質は血液中の細胞の如く十人十色。その者の思想、経験、生き様にそれが反映される。
絶対的な強者の格。二人はそれを理解していた。
ここは村から離れている、巻き込む心配はないだろう。
「ハウ、俺に合わせてくれ」
「了解だ」
宝剣は一度村に返したが、緊急事態の可能性を考慮して(無断で)持ってきてた。
誠心誠意謝れば許してくれる……筈だ。
そしてハウは彼女の後ろへと一瞬で回り込む、挟み撃ちの態勢で奴を倒す。
躊躇ったら……死ぬ。
「……………」
三者は黙って氷の様に今の状況を観察する。ハウとケイレベルの近距離アタッカーに近づかれても汗一つ見せない。
二人が圧倒的な剣士である事を彼女理解しているだろう、従って今の状況は……
「速度で……」
「潰す!!」
此方をチラッと確認した後、彼女の手に魔力が込められる。まさか手刀で迎撃するつもりか!?
ハウとケイは真横に振りかぶり、狙うは脇腹。
「!!!」「チッ……!」
彼女の手によって一瞬で掴まれた。
武器破損の恐れはないがこのまま力を入れても埒が明かない。
「遅い」
二人は投げ飛ばされ先程と同じ態勢。
「………良いわ。かかってきなさい。体術だけで決着をつけてあげる」
低く告げた彼女は動かずに此方の出方を見ているのか挟み撃ちの状況でも隙なく二人を視線から外さない。
彼女が後ろを見る時たった一瞬の時でもケイやハウに対する警戒を解かずに二人を凝視する。
「ハウ……短期決着だ」
「応!!」
その警戒を上回る為には此方も本気を出す。お互いに出し惜しみするのは良くないと判断した。
「[燃焼]」
「[刻刹]」
ケイの雷とハウの能力。
自身のポテンシャルを完全に引き出すこの力で決める。
斬りかかる───その瞬間。
彼女は呟く。
「[神手]」
そう呟いた僅か。彼女はほぼ同時に手を振り下ろしていた。
二人が気づいた頃には、ケイの背中とハウの腕を綺麗に斬られて………
「ッ!?」「ガッ……!?」
ケイとハウはあり得ないと言った表情で彼女を見つめる。
神オリアーナ。
レインの様な大規模な魔法も使えるのだろう。
だが彼女は純粋な体術だけで二人を一撃。
魔力を込めた手刀がここまでの威力を誇るのは紛れもなく彼女が怪物である証明。
事実二人は彼女を斬ろうとした瞬間にダメージに襲われた。速く──鋭い。
「………ッ〜!クソっ…!」
二人はなんとか立ち上がり、まだ戦う様子。
その熱さを彼女は内心で讃えていた。
「その執念に応えて私の能力を見せて上げる」
すると彼女は魔力の球を作り出しケイ達に向かって投げた…と思ったが。
(……!?止まった!?)
投げるから止まるまでの間のモーションが特になく、側から見れば第三者が何かをした様にしか見えない。
その球をケイの下へと向ける。
「ばーん」
真っ赤となった魔力の球は────
ケイの心臓を貫き、即死させた。
支えを失った人形の如く地面に倒れたケイを信じられないと言う様子で見るハウ。
「参…ぼう?おい……どうなって……」
ケイの目は虚ろ、そこに光がない。絶望……した人間よりも光が足りない。
「待て、おい何が……」
体の緊張が抜けてしまい、ハウの腕から血がダラダラと流れ出る。
そんな事を気にせず、ハウはケイの体を揺さぶる。あまりにも突然過ぎる別れに彼の頭が追いついていない。
「[治癒魔法]」
するとハウの腕とケイの背中と胸がみるみる治っていく。
彼女の表情は依然として氷の様に冷たいままだ。
「妹があなた達と楽しくやっていたらしいからね、これは警告と情け。もし私から妹を奪いたいなら…リーバで会いましょう」
一瞬の内に彼女は消えた。能力?もしくはそれ以上の何かを使っているのか不明。
「………参謀!」
ケイの息が聞こえ、取り敢えず安心したハウ。
その力はレインを遥かに超えている。
もし彼が住民の魔力吸収を成功させていたらあれレベルと戦わなくてはならなくなったのかと考えると
あそこで勝てて良かったという場違いな考えが今のハウに浮かんだ。
「俺達……負けたな」
苦笑いがハウから溢れた。今ケイが生きているだけ良かったと思う。彼女程の魔法使いによる[治癒魔法]で完治していない訳ないが一応見てもらいたい。
ケイを抱えゆっくりと村へと戻ろうとした時、ある事を思い出す。
「待て、タクトは!!?」
辺りにいない。まさか……
(連れて行かれたのか……)
何故彼女がタクトを?一番可能性が高いのは……
(いや、今それを考えるのは後回しだ、さっさと村に戻って村の人達に捜索を手伝ってもらおう)
こうしてケイを軽々と抱え、村へと向かう。
できる限り駆け足に颯爽と。
着いた瞬間村の人達はハウ達を見る。
やっときた。そう言わんばかりの表情。
すると村長の娘マリが此方へと泣きながら走ってきた。
「マリ!どうした?」
「ハウさん…大変です!レノアさんが…!!」
「ッ!!」
ケイを彼女に任せて村の奥、ケイとレノアとタクトの三人が鍛錬していた場所でレノアは血まみれになって倒れていた。
幸い切り傷は多いがどれも致命所には至っていない…と思う。
「レノア………一体誰が……」
これを見たら参謀は悲しむよな。と密かに思いつつ村の人達に状況を聞く。
彼らはぽつぽつと語り出し、その情報は驚くべき事だった。
(改めて、本物の天才はレノア……か)
そう強く思ったハウ。ケイはどうやらとんでもない怪物を育てようとしているのかもしれない。
[今から十分前、レノア視点]
────レノアさんはここで待機!!
結局レノアは戦いには加えさせてもらえなかった。
だが何故か彼女の胸がざわつくのだ。
(変な気持ち……)
ケイ君が村の人達を助けに行く時はこんな感じじゃなかったと言うのに…。
酷く暴れるこの気持ちと向き合うべく、剣を抜き鍛錬を始めようと思った時、扉が三回叩かれた。
「…すみませ〜ん」
「?はい(聞いた事のない声…)」
剣を持ったまま、彼女は迎える。
扉を開けると見えたのは女性。
黒や白髪が多いこの村でかなり特異な銀髪。長い髪をたなびかせながら彼女の剣を持ちレノアへ笑顔を向ける。
「あなたが、レノア?」
「はい?そうですけど………」
「そっか、じゃあ………バイバイ」
「なっ!?」
剣を大きく振り上げレノアへと振り下ろす。偶々手に持っていた剣で防ぐが突然の事で理解が追いついていない。
反射的に防ぎ、銀髪の女を見つめる。剣は金属音を鳴らしながら火花を散らしていた。
「ちょ…なんなんですか!!」
そんなレノアの言葉を無視して、彼女は衝撃の一言を告げる。
「[燃焼]」
(!?この人なんで──)
彼女の剣に『風魔法』が蓄積されていく。
「[嵐]」
強烈な風がレノアを押し上げ家ごと貫通。
森の奥へと飛ばれた。
「今ので終わり?あっちゃ〜ボクの[燃焼]に付き合える人材がいるって、オリアーナに聞いたんだけど…まぁ彼女も間違える事もあるか!」
ケイと交えたボス。ララ・オーシャンが腕を元に戻し
再び村へと襲ってきたのだ。
村の人達が騒ぎを聞きつけると悪のボスがまた村に来たと知った暁には気絶するもの、逃げようとして上手く走れないもの、その場に座り込むもので村は溢れていた。
(じゃあいいや、まずはこいつらを拉致る)
剣の矛先を村人達へと向けた瞬間。背後から声が聞こえる。
「思い出した、あなたがララね(ケイ君の情報によると[燃焼]は使わないと思っていたけど)」
「……!!生きてるか!!」
嬉しそうに語ったララの目には輝きが戻り、剣をレノアへと向ける。
両者、死や敗北の恐怖を噛み締めながら同じ事を考えていた。
───こいつを倒して[燃焼]の理解を深める!
───この人を倒して[燃焼]を知る!!
と言ってもまだ剣技など素人近くの二人。
才能が試される。
「よしよしよし!!ボクと勝負だ!!」
「さっさとやろう」
────両者!臨戦態勢
作品の内容で今読んでる漫画がバレる。




