第62話 全部
[夜…]
乗り込む前にある程度の作戦会議を行い、娘さん救出を急ぐ。
急ぐ必要があるからこそ念入りに、広い視野で物事を見つめる必要がある。
「さて、男達が吐いた情報を共有しよう」
お婆さんを含めた五人で話し合う。
「ここから森を越えた北に拠点があるらしい、この村や他の街から拉致った若者を働かせて『あるもの』を作り出しているらしいが詳細は不明」
すまないとハウが謝る。ハウがいなきゃ拠点を特定できていなかったのだ。
「謝る必要なんてない」
リサがそう返すとお婆さんが口を挟む。
「その『あるもの』。もしかしたら…何ですけど…」
「心当たりが!?」
ケイの言葉にはい、と頷いたお婆さんはゆっくりと語り出す。
「もしかしたら『宝剣』の量産かもしれません…」
怪訝な表情でハウは返すとお婆さんは続ける。
「うちの家宝である剣を盗んだ時、下っ端の人が話していたのを聞いたんです。『この剣を増やせるって本当か』…と……」
(その為に若い人間を集めて働かせる…簡単に考えられるのは肉体労働、それとも若い人ではないといけない何かが…?)
今それはどうでもいいとケイは割り切る。最悪の場合宝剣を持った奴らが襲いかかってくるかもしれないとだけ思えば良い。
「…話を戻そう、建物の構造は三階建てと地下一階があり、そこで働かせているとの事。三階に『ボス』と呼ばれているものいる。一、二階には大量の兵士達だと」
あの男達レベルが束になって襲いかかってきても大した問題ではない。『宝剣』の可能性を除けば。だが。
「今敵の全容がだいたい分かった今、重要なのは救出…か」
ケイが思いついた作戦を提案しようした時、背後から声。
「なんでだよ……なんで…!!!」
突如扉を勢いよく開け、タクトが声を荒げた。
「タクト!!?」
ハウとリサが驚き声を漏らす。
村に居るはずじゃ……?
「タクト、悪いが今のお前では力不足だ。足を引っ張りたくないなら……」
ケイが冷静に答えるが……
「なんでそんなに慎重なんだよ…!!人が!!捕まってんだぞ!!!」
大声で捲し立てる様に彼は激昂した。
「(僕の………妹だって……)ッ!!」
リサの怒りが頂点に達そうとする瞬間、タクトは走っていってしまった。
「おい!待て!!」
ケイが止めるがもう遅い。おそらく敵のアジトへと向かっていってしまったのだ。
「………あいつ!!」
リサはいつまでも自分たちの足を引っ張る彼に怒りが収まらない様子。
(作戦をもう少し詰めたかったが仕方がない。救う対象が増えただけ…と思いたいが……)
ハウとケイは同じ考えだったが、今ここでチンタラするとタクトの命が危ない。
直情的な彼のことだ。きっと捕まって『はい降参します』とまではいかないだろう。
「あいつはいつまで、自分を崇高な人間だと思っているのだろうな」
誰かに言うわけではなくハウはそう呟いた。
「ハウとリサは人の救出にあたってくれ、有象無象がいるなら俺が引き受ける!」
ケイは剣を作り出し、敵のアジトへと向かう。
「レノアさんは村の護衛!!挟み撃ちを防ぐ!」
「ッ…!」
戦力としては……数えて……
「レノアさん!!」
「え?」
「頼んだ…!」
「………はい!!」
レノア目から迷いが消える。
(この剣で[燃焼]が使えれば良いが………)
一抹の不安がケイを襲うが、今は気にしない事した。
────[視点はアジトのボスへと変わる]────
「報告ご苦労」
低い声でそう答えた。
ハウの隙を見て逃走した男達はボスに強い奴が何人かいる事を報告。
だが、特に何もせずにのこのこと帰ってきたこいつらがボスの逆鱗に触れた。
「あまり期待してなかったが……裏切られたな……本当に」
現に体はボコボコに殴られ、血だらけで骨も折れている。
「はぁ……アァァ……!」
もう後ろの二人は死んだ。なら最後にと残った体力を
声を出すのに使う。
「………さっきから仮面ばっかかけて……!!お前の顔くらい見せてみろよ!!!俺達の『ボス』を名乗るくらいならどのくらいの『男』なのかを!!」
必死の訴えに『ボス』は考え込み、剣で男の手を刺す。
「がァァァ!!!」
「……そうだな……良いだろう」
仮面をゆっくりと外し男を一瞥、すると銀髪の長髪をたなびかせた。男は驚愕の表情。
「女……だったのか?」
「なんだ?知らなかったのか?その様子じゃ、お前らの女を見る基準は声と胸と尻か、下品な奴だな」
剣を振り下ろし、男の首を切る。
「いい加減大物振るのも疲れた………そろそろ戦いによる『血』が見たいな。この宝剣でね」
残虐極まる『女』の表情。彼女が、ケイ達を待ち構えている者だ。
「え?あれがボス…?あぁいや失礼しやした。ガキが一人アジトに突っ込んできました!!」
「一人?」
案内されるまま、一階へと向かうとタクトが男達にボコボコにされていた。
「ちくしょう……!!」
腹を蹴られ浮かんだところに背中を蹴られる。骨は何本か折れている様な気がする。
(なんで僕には………力が何もねぇんだよ……!!あいつにあって……なんで……僕には!)
悔しさと惨めな気持ちが自分を襲う、こんなに惨めなものなのだと、こんなに……自分の力不足を恨んだことはない。
「こいつか?」
「はい」
ボスがタクトに近づき髪を掴む。
「なんで一人で来たんだか……」
呆れた様子でボスは呟く。しかも殺したか奴らの報告とは違う奴だと理解。
(ボクの名前は知らない筈、ならこいつは一体…?)
少し混乱したボスだったが見たところ若く肉付きの良い男となれば労働力として申し分ない。
「僕は…………僕には!!やる事─ガッ!!」
ボスによって足の骨を折られる。
「アァァァァ゛!!!!!」
叫びがどんどん高くなり、痛みに体が支配された。
もう動けない。
「もういい、最後に言い残すことは?」
何も言葉が出ない、出てくるのは涙だけ…
(なんか…出ろよ……チートォォォ!!!)
「そうか……じゃあ…な!!」
剣を振り下ろす瞬間。後ろから爆音。
「?」
後ろの階段からゆっくりと、下りるものが一人。
足音が
一つ。
二つ。
三つ。
その男の体はピカピカと光っていた。
「なんで……君が……」
「全員動くな」
男達の動きが止まる。その圧に押されたのだ。
「[燃焼]」
雷光が男達を覆い血を吹き出し倒れていく、止める事は出来ない。
(成程……こいつが…『雷光』!!)
シンプルイズベストのあだ名をもらっていたのは…
「ケイ……君。なんでここに……こんな……クズの為に……」
呆然としたタクトに優しく微笑みかけたケイ。
「タクト、お前は間違えちゃいないさ。時には感情の昂りも……大切だ!!」
体を雷で覆った状態で助けに来たケイは、ボスを見据える。
「君がケイ・タケダ。英雄か!」
嬉しそうに答えるボス。その容姿は女性でレノアと同じくらいのほっそりとした体つきだった。
「参謀!そいつは任せたぞ!」
ハウとリサはそのまま地下へ向かい、救出を目指す。
「英雄なんて称号俺はいらない。ただの人殺しにそんな称号を与える必要はないしな」
「いやいや、ボクには君の強さを間近で見たい気持ちでいっぱいだ!!」
こいつがどれ程強いかどうかは知らない。一つわかることがあるとするなら、彼女が持っている剣が特別な物だと言う事だけだ。
「でもな〜ボクにもやることはあるし……」
「随分と冷静だな」
「冷静?」
どうでも良さそうにボスは答える。
「仲間が殺されたと言うのに」
「あいつらは踏み台さ」
こんな奴らに仲間意識なんて期待するだけ無駄だと理解したケイはこれ以上無駄な詮索はやめた。
「それに殺されたは嘘だろ?全員生きてるね」
微かに吐息が聞こえたのだ。ダメージによるショックで気絶しているだけで死んではいない。
「……まぁ別にどうでも良い」
確かに『動くな』と言ったのは、殺さない為だが今はどうでもいい。
雷が急速にケイの体に纏われる。
「お前を動けなくすればそれで良いのだから」
「ふふ……まぁボクも同じ考え、かな♪」
両者の集中が深く沈み、殺意が次々と醸成されていく。
今年にはストーリーが終わると言う恐怖




