第61話 新たなる主の誕生。
「は?」
自分勝手に話を初め、終わらない行動を貫くこいつの思考が全く分からない。
ため息を吐いたリサがタクトを見下す。
彼女のその目を見て本能的な恐怖を覚えたケイ達だったが彼は違う。
「その目が……素晴らしいよ!!」
この世界をゲームだと勘違いしている?とケイは冷静に分析した。
確かにゲームなら、訳の分からない行動をとっても数秒も経てば忘れる。
残念ながらここはもう一つの現実だ。行った事は消えないし一生残る、自分の行った事が無かったことになれば良いのにと思った事のあるケイ。
ただそれは逃避に過ぎない。人を殺した事は一生消えない。それをみんなで背負う。そう決めたのだから。
「タクト…君、嫌がっている人にそう言う事を言うのは良くないと思うよ」
すかさずレノアが釘を刺すと彼はしょんぼりとした。
「……別に良いわよレノアちゃん。綺麗って言われて嫌な人はいないからね」
タクトの背中に鋭い冷たさが走る。
「(目が……笑っていない…!)あ…はは…ごめん」
その恐怖がタクトを成長させるきっかけになることを願う。
この空気をなんとか変えるべくケイは口を開く。
「夜になったらお婆さんと作戦会議だ、相手の拠点、人数だけでも知っておきたい」
全員頷き、一旦解散となった。
作戦会議前の夕暮れ、ハウは捕らえておいた黒スーツの男達三人に尋問を始めようと二人は剣を構える。
「お前らのアジトの場所を答えろ」
ハウが単刀直入に話す。さっさと話してくれるなら無駄な時間も労力も必要ない。
「……なんでお前らなんかに話さなきゃいけねぇんだよ」
男の一人は断固として話さない姿勢。だがこちらにも考えがある。
「そうか……それ残念だ。それならお前らに獣族式マッサージをご提供しよう…!!」
ハウは一歩、また一歩と男の方へと近づく。
「おい待て、やめろ!!ァァァァァァァァ!!!」
男の絶叫が村中に響く、この夜。この叫びを肴に酒を飲む老人達。
大切な娘が酷い目に遭っている中、大切に捕らえたケイ達に無意識の内に不満が募った。
が、それはこの為だったのか!!と嬉しそうに酒を飲んでいた、自分達の無念を晴らしてくれる人達に会えた!そう言う思いがあったのかもしれない。
その叫びを横目にケイは一人であることを考えていた。
(ドライヴの雷は人との相性は良いが、これを完璧に使いこなせる人がこの世にいるのだろうか)
この剣を『託す』か『使いこなす』か悩んでいるのである。
(改造魔物が作った剣。あまり気は乗らないけど今一番親和性が高いのは……レノアさん)
彼女の体質は全く知らない。だが分かるのだ。
剣との親和性を高めたケイより更に良い主人がいると剣が嘆いているのを感じる。
(でも彼女が強くなりたいと思っては……いないか。と言うかいて欲しくない)
そんな思いがケイにはある。ただ……
そんな中、レノアはリサにある頼み事をしに二人きりとなった。
「リサちゃん。お願いがあるの」
「お願い?」
レノアは真剣な眼差しでリサを見据え頭を綺麗に下げる。
「私を……鍛えて欲しい!!」
リサは驚いた表情でレノアを見る。
貴重なヒーラーが前線に出るなんて!!
彼女の魔法のセンスは一流、もしかしたら……
私を超える人間になれるかも……?
ケイを悲しませる……
その思念を一旦消し、今も頭を下げている彼女に一つ。聞く。
「どうして?」
レノアは唇を噛む。今まで治療役に満足していた自分。そんな役回りより命を賭けて自分も戦いと思う様になった。
「………神の四天王との戦後、失ったものを手に入れた筈のケイ君が全てを失った様な虚な顔を見て私は……自分の弱さが嫌になった」
弱い。弱いすぎる。自責の念に駆られているのは何もケイだけではない。リサもレノアもハウもザルツもみんな。
あの時私はベストを尽くせたのか?
頭の中でそれが反芻する。
「私には…まだ何かが出来ると信じているから」
「………………」
リサの中には彼女を誰よりも強くしろと、心がそれを後押ししてくる。が、理性がそれを強く否定した。
「僧侶として『治す』のではなく、一人の剣士として『戦う』とそう言うわけね?」
真剣な眼差しでレノアを見つめるリサ。彼女の覚悟が本物なのは知っている。
知っている。だからこそ慎重に問う必要があるのだから。
「でもそれは私が決める事じゃない。レノアちゃん。ケイの考えも聞いてみな、レノアちゃんがどんなに強くなっても今…いや、これからもケイはあなたを『守る対象』として見るでしょうから」
その言葉に黙るレノアに言葉を更に続ける。
「隠れてコソコソ強くなるのは私達のやる事。レノアちゃん。あなたは……堂々と強くなれば良い」
レノアの目が少しずつケイに重なった様な気がした。
その様子に少し驚いたリサだったが、取り敢えず作戦会議前にケイと話す事を勧めた。
レノアはケイのいる寝室へと足を踏み入れる。
「ケイ君…いる?」
ゆっくりと扉を開けて、部屋に入るとケイが何かを察した表情となった。
「私の言いたい事は……もう分かってる?」
「………あぁ」
ゆっくりと頷いたケイはベットから椅子へと座るところを変えた。
レノアをそこに座らせ、対面する。
「強くなりたい…で良いんだよな?」
「うん、私の意志は変わらない」
ブレる必要はない。確固たる意志がそこにはあるのだから。
「……………(もし立場が逆でもきっと俺はそうするよな)」
壁に立て掛けてあったドライヴの剣を机に叩きつける。
大きい音がなってもレノアに驚きはない。
「この剣を使ってみてくれ」
鞘を抜き、レノアは剣に触れる。
重い。
そう感じたのも束の間。
「!!」「!!?」
今にも溢れて出ようとしていた雷が霧散した……
(……?体が……軽い?)
その恩恵を確かに感じていたレノア。重かった剣もひょいっと持ち上げられる。
人より重いその剣が何も持っていないかの様に軽いのだ。
「……………軽い」
心に思った事をつい溢してしまった。
その親和性は、彼女が天才だからか、それとも想いで全てを掻き消したのか。
『天才』はまさかここまで行けるとは思わなかった。
「すごい……凄いよレノアさん!!」
感じていた確かな親和性がここまでとは…!!
そこに嫉妬は全くない。
嬉しさと興奮に感情が支配される。
だがすぐさま冷静となり剣を置かせる。
「けど、鍛錬は娘さんを救出した『後』で。ね?」
有象無象の相手をさせる事も考えたが今は万が一の可能性を考えまだ実践には出させない。
「………うん」
「だから、今は安心して───」
そう言って剣を掴もうとした瞬間……
「───いッ!?」
剣から雷が放出され、ケイの左手を焼いた。
雷に耐性のあるケイだからこそこれで済んだが、他の人間なら完全に貫かれていただろう。
「ケイ君!!」
黒焦げになったケイの手を急いで治療する。
「いった……クソ…ドライヴめ……!!」
もう剣は決めたのだ、彼女こそが『二代目ドライヴ』であると。
それ以外の人間、魔物も例外なく剣は主人以外の人間を『拒む』。
百二十%の親和性。これからのレノアの成長に期待しつつもその天才さにかなり驚かされたケイだった。
よし!!あの女に剣を持たせるんだ!!ケイ!!
byドライヴ




