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半端者の戦い方  作者: 半端者の柑橘系 
第六章 第二都市編
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第57話 ケイの家族。

魔力供給の要である杖を破壊したケイ。

そのままレインを断ち切り、『夢』を終わらせた。


「………………あ」

レインはその場に倒れ、青空をただぼーっと見つめている。


体がボロボロと崩れ、自身の死を悟った様だ。

レインは誰にも話しかけずに一人で突如喋り出した。


「私の………『夢』は……こんなので……良かったんだなぁ……もう……全てが………遅いですけどね…」

後悔した表情…と言うより、自らの人生を振り返る様なそんな喋り方にケイは何も言えなかった。


『夢』

それは何個あっても良いものなのに……彼は貪欲に、()()()()選んだのだ。


妄執の果てにあるのは悔恨か、それとも………


「っ……!」

体に限界が来た、そろそろ……落ちる。


ブレイも、リサも、ハウ、ザルツも全員倒れていた。

ケイもそれに続き、倒れる直前……


腕だけとなったレインがケイの足を掴んだ。

ノアと同じ様にどこか機械的な動きで。

何者かに操作されているかの様な……?


「!!」

流し込まれる記憶の数々。そこに強く映し出されるのは女性と男性の顔だった。


それはきっと……家族とのやり取りなのだろう。

それが頭の中で再生される。


───啓〜またゲームばかりして!勉強したの?少しは真ん中より上の順位を取ろうと思わないの〜?


母親と思われる人物が、ケイを挑発する様に話す。

どこか優しげに話していた。


───そうだぞ!啓!学年一位になったらモテるぞ〜

父親…か?彼はゲーム中のケイの背中を肘でつつく。


───モテたいとは思うけど、学年一位まで頑張りたくはないな。

そう言ったケイだが、どこからあっけらかんとしている。


───啓。

突如父親が真剣な顔立ちでケイを見据える。勉強とか将来の話になるといつも彼は同じ事を話すのだ。


ケイはゲームを停止し、父親の目を見る。

また『いつもの』か……と思っているがどこか悪い気はしない。


───勉強が普通でも女の子にモテなくてもいい。

その代わり、友達は大事にしろよ。お前の性格的に…言えば仲間を頼れ。


───それ何回も聞いてるけどね。


ここで母親が突如手を挙げる。


───それじゃあ私も啓に自伝!


───自伝て。

ケイのツッコミを無視して母親は答える。

まるで今初めて話しますと言わんばかりだが、これも何回も聞いているのだ。


───どんな事があっても、私達は啓の味方だから!!安心して喧嘩しましょう!!

シュシュ!とシャドーボクシングをしながら母親はそう言った。


確かに喧嘩は何回かするが、どんなに酷く喧嘩しても謝ったら簡単に許してくれる母親には頭が上がらないケイ。


味方……なのだ。親というのは。


───一人で抱え込む事だけが強さじゃない。きっと…啓の友達も啓に頼られたら凄く!!!嬉しいと思うよ?


心配そうな顔をして母親がそう呟いた後、意識が現実世界に帰ってきた。


「どんな事があっても。か…母さんは……こんな…こんな……人殺しさえも…許してくれるのかなぁ…」

不思議と涙は溢れて来なかった。だが、取り戻した記憶はケイの心に深い闇を落とした。


そうして……

全員がボロボロになって死にかけている中、

強い意志で彼女が目覚めようとしていた。


「はっ!」

目が覚めた。私は何日寝て……みんなは……?


(魔力が戻って……一日で回復出来たのか)

私は急いで仲間の下へと向かおうとする。

扉を開け外に出たら衝撃的な状況を見た。


「城が……なんで……」

あれほど大きく厳格に佇んでいたカミリーズの城が、瓦礫だらけのボロボロな城になっていたのだ。


その近くにはハウ君とログロさんが倒れていた。

「ログロさん!ハウ君!!」


「レノア・マフォード……随分と速い……お目覚めだな」

息を切らしながらログロは答える、彼曰く他の人達の方が重症だから早くいけとの事。


「でも、ログロさんは…」

歩ける様にはしたが全快した訳ではない、安静にしなかったら悪化するかもしれないという状況で、ログロはこれ以上の治療を断った。


「すまない、俺は行く所があるんだ」

ゆっくりと苦しそうに立ち上がり、早歩きで何処かへと行ってしまった。


(ログロさんなら…大丈夫かな)

全員の応急処置を済ませ。というのは正論だ。

ボロボロの体を少し癒しただけで大丈夫と見栄を張るログロに少し心配したが、今はやるべき事をやる。


ハウの体を見ると外傷がほとんど治っていた。

獣族と外傷治療速度は舌を巻いてしまうが、血やダメージを完全に治った訳ではない。


体の応急処置は自動で行われていたと判断したレノアは瓦礫の中へと入る。


恐らく中にいるのはケイ、リサ、ザルツ、ブレイ。

現場と思われる場所に最も近い。


「あ!リサちゃん!ザルツ先輩!!」

二人は同じ所に倒れていた。リサが血だらけの体を這って来たのだろう。


血の道が彼女の行動の証明だった。

ザルツはそこそこだが、リサがマズい。腕を切断され腹も貫かれた痕があったのだ。


「フ〜……!」

これ程の怪我を死なない様に応急処置するだけでも体の負担がしんどい。


魔力を使い切り眠った事により魔力は全快したが肉体がまだだった。


(僧侶の私にしか出来ないんだ、全うしろ……)

きっとケイ君ならこんな状況でもそうする。


腕と腹の出血を治した。

ザルツは外傷を治しただけで大丈夫と判断する。


「誰か……ケイ君、ブレイさん……あ!」


暫く歩いた後、ブレイを発見。

(酷い……)

リサと同等もしくはそれ以上の腹部の怪我。

治癒魔法をかけるが、なかなか血が収まらない。


「ッ……!!」

鼻から血がゆっくりと流れてくる、肉体の限界がそろそろ近いのだ。



(こんないい人が死んでいいわけが無い!)

テンションが高く、いつも楽観的なブレイだが優しさは誰よりもあったと思う。


「……よしっ!!」

数分でやっと出血が止まった、これでケイの下へと行ける。


再び辺りを見回す、そうしたら一人の男がぽつんと…座り込んでいた。


怪我だらけの体でただ悲しそうに泣き出しそうな表情で憂鬱としている。


「ケイ君!!!」


「……れのあ…さん」

どこか疲れ果てた表情をしていた、ケイの目には生気がない。


ボロボロになったみんなを見て堪えていた涙が、今のやつれたケイを見てレノアの涙が決壊しそうになる。


「なんで……ケイ君……!!」

治癒魔法を早くかけなければと考えるより先に……抱きしめてしまった。


無論、自分の役割を忘れた訳ではない、抱きしめつつも治癒魔法をかける。


「レノア……さん……」

彼女の耳元で、弱々しく呟くケイ。


「教えてよ……ケイ君…私も……一緒に背負うから…だから……そんな顔をしないでよ……お願い……」

涙ながらに話すレノアにケイはボソボソと語りだす。


「神の四天王に触れて、転移前の記憶が戻ったんだ…

そしたら……家族…俺の…家族が……」

ケイの言葉に少しずつ嗚咽が混じり、『話す』より『紡ぐ』になってきていた。


「俺さ…おれな…人をころしちゃってさ、心が重くて、でも君が…()()()って言ってくれて……軽くなって…」


暖かみのある理想の家族だった武田一家。

その暖かみが、ケイをより苦しめる。


「思い出した家族が……みんな……みんないい人で…

でも俺……人を殺して……!なんで……いい人達なんだろうね」

親はどんな人だろう。

そんな事を考えた事はあった。


「もし親が……俺が殺したクズみたいな人だったら…こんなに…もう悩まないって決めたのに……こんな…

悲しい気持ちにならなくて……良かったのに……」

涙がポロポロとレノアの服に落ちる。

こんな事考えるなんておかしい。


それは分かってる。

だからこそ、両親の優しさと厳しさがケイの心を深く傷つけた、


「俺は……俺はもう……帰れない……でも一回だけ!会いたいんだよ……会わせてくれよ…『家』がこんなに暖かいものなんて……知りたくなかった!」


堪えきれず、レノアからも涙。

「ケイ君、私も……みんないるから。お願い!私達を置いていかないで…一人で背負わないで!!」

感じた事をそのまま話す、少しだけ重たい感情がレノアから出てきた。きっとみんなもそう思っている筈だ。


転移者で中途半端に抜け落ちた記憶を取り戻した時、現状とのギャップにどれ程苦しんだか、レノアは分からない。


「っ…!!」

私にも背負わせてと、言ってくれたレノア。

それがケイにとってはとても………


「……ごめん…ごめんなさい…!」

ただゆっくりと涙を流す。


「今はゆっくり……ゆっくり……」

目立った外傷を治し、ケイの背中をゆっくり叩く。

赤子を眠らせる様に──ゆっくりと。


こうして、ケイはまた一つ。

半端なまま『何か』を背負った。


だが、その道は一人じゃないと…気づかせる人は…いる。


今は大丈夫。ゆっくりと進もうと、子供の様に泣きながらケイはそう思った。




第六章 第二都市編:完。


次章:

第七章 冒険編・二


後書き。

もう少しここに残って話を進めますが、この話で第二都市で起きるトラブルは終了です。


ここまで読んで下さった方、ありがとうございます。

第二都市編、皆さんにとってどうでしたでしょうか?

思った事をそのまま感想を頂けたら幸いです。

もう少し続きます!!よろしくお願いします〜!!

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