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半端者の戦い方  作者: 半端者の柑橘系 
第六章 第二都市編
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第53話 意思と意地

レインの地下研究所、そこで三人の戦いに決着が着く。



「ログロ、後ろにある研究所はどうする」

悔しそうに呟くブレイ。気持ちはログロも同じだった。


「重要なものだ…が、今それを意識して勝てる程俺達にも奴にも余裕はないだろうな」

閉じ込められている冒険者達はもう死んでいる。なるべく遺体は綺麗な状態にしておきたかったが必要なら見捨てる他ない。


助けられないやるせなさが二人を襲うが、複製の圧倒的な威圧感にすぐさま現実に戻される。


「さて……勝負だ複製クン!!」

ブレイの姿が消える


「!!」

勘頼りで背後に裏拳。だがそこにブレイはいない。

ブレイは一瞬で複製の()()()へと転移。


隙だらけとなった複製の腹部にアッパーを叩き込んだ。


「ガバッ……!!!」

胃液と血を含んだものを吐き出す。

もう最初程の力は残っていない。


だがそこで折れる程複製は弱くはなかった。


「ッ…!!」

大振りのフックの様なものでブレイを殴り飛ばす、

その拳はスピード重視であくまでも距離を取る為にある。


その衝撃でブレーキが効かず地面をガリガリと引きずったが、壁ギリギリで止まった。


「俺と距離を取るのは間違いだったな」

少し離れた所からブレイが居合の構え。[残刀・撃]を完成させ今なら一撃で切れると思った。


[撃]は圧縮。

弾丸の様に空気を圧縮させ、ピストルの如く放つ。


今ログロの調子が上がっているのは、能力ではないのだ、実際、[撃]にそのようなバフ効果はない。


しかし、高められた集中と好調な肉体が威力の底上げを図ったのだ。


複製はそんなログロの好調を感じ取ったのか、残った腕を防御に回した。今の[残刀]をまともに喰らえば即死する。


速度も威力も上昇した残刀に対応できるまでにはまだ時間がかかる。


「[残刀]」

「!!」

複製の予想に反して、二つある能力発動条件の一つである剣を振ることはなかった。


詠唱だけの残刀。

威力は下がるが攻撃速度は抜刀時より速い。


複製の顔にかすり傷ががついただけで大したダメージにはなっていない。


全体の集中が一段階下がった…と思われたが、まだまだ調子を上げ続ける男が一人。


「そこッ!!」

ブレイが複製の右斜め後ろに転移し頭を蹴り飛ばす。

鈍い音が研究所に響いた。


この街に来てから温存。それを全て解放できて喜んでいるのはログロだけではない。


「ハァ……フッ…。」

軽く笑った複製は静かにログロの方へと殴り掛かる。

 

剣と拳がぶつかる。

人の拳からは絶対出ない金属音もここに響いた。


(もう俺の剣を折る力はないだろ!!)

力勝負では互角になるほど複製は弱体化。

今複製が引き出せているレインの力は三分の一。


それくらいなら、ログロとブレイ(人間達)にも勝つ事ができる。


弱体化しているのはログロも同じ、能力は底上げできても肉体の損傷はそのまま。


この姿勢のまま膠着態勢。

そしてそれを許さないものが一人。

「複製。お前の悪い癖だ…!俺の事を忘れんなよ!」


背中に転移しそこを全力で殴ると複製は吐血した──

が、意思が芽生えようと殺戮人形。


更に工夫が加わったのであれば低減した力をカバーできる。


「!!?」

突如ここで複製が剣から手を離す。驚きつつも複製の脇腹を切断。


複製はここで低姿勢からの全力アッパー。

隙だらけになるリスクに合ったリターン。それは……


(そんなおもっきり殴り掛かるのは得策じゃないんじゃないか!!)


ブレイが背後に[転移]を発動する瞬間。

「(発動しない──)くそっ…!」


焦りながらも防御姿勢。だがもう遅い。


「ガァッハッ……!!」

ブレイの腕ごとそのままアッパー。滝の様に血を吐き出しその衝撃のまま壁に激突。


「[残刀]」

狼狽なく、ただ冷静に複製の片足を切断。首を狙うには少し遅かった為、今は出来る最高の判断だ。


「グッ……ガァァァァ!!」

「なっ!」

まさかの片足で全身を支え、片腕で殴り掛かる。


お粗末な威力だが、予想外の行動に距離を離す事に成功した。


「ログ……ロォ…!!たく……すぞ!!」

ブレイは血を吐きながらも声を荒げログロに伝えた。


([転移]は……使えても後一回か?てかもう…限界…)

ここでブレイは気絶。もう起きる事は………


「ありがとう。ブレイ」

普段見せない優しい微笑みを見せたログロ。

律儀に待っている複製を鋭く見据える。


ログロが一歩歩くと、

片足がない為少し跳ねながら複製も一歩。


二歩。

三歩と歩き、

両者を力を溜める。


複製は拳を振り上げ、ログロは居合の構え。


沈黙。

長い沈黙の後、


「!!」「ッ!!」

同じタイミングで剣と拳がぶつかる。


先程の金属音より更に重い音が研究所…並びに地上中に響いたと思われる。


(クソ……どんなに力を入れても全然進まねぇ!!)

それは複製も同じ。

結局勝つのは意思による欲望なのかもしれない。


(意思の勝負で人間が負ける筈がない!!)

ストライド、ロズ、ケイ。

二人は死に、一人は業を背負い。


自分が間違えて無ければ、こんな事にはならなかった。全て……言い訳になってしまう。


(ケイに謝罪したのも、自分の罪から無意識に逃れたかったのかもしれない……)

ただ、純粋に……シンプルに。

怒りも後悔も過ちも全て……


「この剣に乗せるまでだ!!」

ジワジワと複製の腕を押し上げていく。


「さらばだ複製!![残刀]!!」

複製の拳を無視して、脇腹から肩にかけて切断する逆袈裟斬り。


逃れられない致命傷。

壊れた水道管の様に血を吹き出した複製はその場に倒れた。


一言も言葉らしいものを喋ってはいなかったが、その表情には満足さを含んでいたのは間違いない。


「咄嗟にやった事だが、[残刀]と剣技の合わせ技って…出来るんだな」

勝手に腕が動いた事なので、どうやったかは分からない。


飛ばした斬撃と同タイミングで剣による斬撃を合わせるなど出来るとは思っていなかった。


灰になって消えていく複製を見届け、ブレイ共に地上へと飛んだ。


地上で息を切らしながら地面に膝を着くログロ。

丁度いいタイミングでブレイが目を覚ます。


「お……勝ったのか。やるな」

当事者の自覚があるのかないのかブレイは適当に呟いた。


「そんな怪我しといてまだ起きんのか?しぶといな」

ニヤッと笑ったログロにブレイは自分の体を叩き、出来がちげぇんだよ。と返した。


「本当は、ケイ達を助けに行きたかったんだが……少し無理そうだ……」

ログロはそう呟き、地面に倒れた。


「……俺も……」

出し尽くした二人。


一人の戦士と魔法使いが全てを出し抜き得た勝利。

それはレインに色濃く現れた。


[戦いはケイ達へと変わる………]


「!!!」

レインにドクンと強い心臓の鼓動。力がどんどん戻る感覚がある。


だが……

(負けたのか?私の複製が…しかもなんだ!途中から意思が芽生え戦いだけに身を投じた!?何が起きた?)


接近してくるケイ達をハエの様に叩こうとしては避けられを繰り返している中。レインはここで失敗を悟った。


(感情を入れる事によるイレギュラーを危惧して人形にしたのは間違いだったのか?初めから私に従順にすれば今この状況にはならなかった!!)


アドラスの様に自身に依存させれば、住民の魔力吸収とログロとブレイの殺害なんてどっちが正しいかなんて簡単に分かる。


(だが力はもう回復した!!このまま押し切れば勝てる!!)


突然ハウが大声を出す。

「どうした!?攻撃がどんどん小さくなってるぞ!!

お前の『夢』とお前の攻撃。どっちが小さいか比べてみるか!?どっちもどっちだろうがな!!」


下手くそな挑発。レインは苛立つどころか少しだけキョトンとした表情をした。


そして軽く笑い、ケイ達を見据える。

「いいでしょう、ここで()()諸共叩き潰して差し上げ───!!」


背中に違和感。

何かが突き抜けた様な痛み。

そして、()()()()()()()()────


「いつ俺達が三人で戦ってるって思ったんだ?レイン!!」

不敵な笑みを浮かべたケイ。

レインはすぐさま背後を確認。そこにいたのは………


「僕もうボロボロだけど……君を貫くくらいなら訳ないさ」

ザルツ・シッヴァカーネ。

最初で最後の急襲。


四人が──勝ちを確信した瞬間だった。







後二、三話くらいで終わります。


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