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半端者の戦い方  作者: 半端者の柑橘系 
第六章 第二都市編
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第50話 『夢』

ケイの登場。

ザルツもレインも予想だにしないタイミング。


「フッフッ。遅かったんじゃないか?ケイ!」

ザルツの一言に申し訳なさそうにケイは答えた。


「改造魔物が一階からここ(最上階)に至るまでびっちりで……全部倒すのは時間がかかっちゃって。すんません」


「二度言うけど……最高だ!!」

その言葉の後、ハウ達全員が遅れて登場。


「…………ッ!!」

禍々しい気配の正体を見て冷や汗を流した。

ケイの急襲が効いたのは幸いだ、少なくともスピードでは勝てる可能性がある。


「ザルツ!大丈夫か!?」「ザルツ先輩!無事!?」

ハウとリサがザルツの方へと駆け寄り、怪我を確認する。


死にはしないと軽く返したザルツ。

だが、限界は見えていた。


「……中々…良い一撃です…」

奴の黒スーツはボロボロになっていたが、顔や手などに目立った外傷はない。


手応えはあった。

絶大な魔力量が防御力を底上げしているのだ。


「ケイ!奴の狙いは国民全ての魔力を奪う事、決して外には──」

ザルツの警告を、レインは心外そうな顔をして言葉を重ねる。


「そんな事はしません、あなた達を叩き潰さなくてはなりませんので」

嘘をつく感じはしない、ただ淡々と奴は事実を語った。

そんなレインはスーツの汚れを手で払いながらケイを見据える。



少しの間があった後、奴の口から語られるのは嫌悪でも怒りでもなく───感謝だった。


「ドライヴを殺してくれて、感謝しています。ケイ君」


「……どう言う事だ」


「もし私が数年鍛錬を重ねずに生きていたら彼は私に並ぶ人間になっていた。芽が出る前に潰すにはもったなく、花が咲く頃には遅い。」

ドライヴと戦っている時、奴の口からは父への執着や愛は感じなかったのは事実だった。


「ドライヴの才を伸ばせるだけ伸ばして……殺す。私の悩みをあなたは両方叶えてくれたのです」

不本意だが、今目の前にいるこの人でなしの役に立ってしまった…と言うわけ。


息子とは名ばかりで、実際は自身の知識欲を満たすオモチャに過ぎない事をドライヴは分かっていた。


元魔物として格上を潰す事がドライヴの狙いであり、夢だったのかも知れない。


「………それはどうでも良い。今はただ殺す」

どんな野望を持っていようとも変わらない、ケイが手に入れた純粋な殺意は最も恐ろしい事をレインは知っている。


(……()()を葬る方法は至ってシンプル。吸収の儀に集中する為に能力は()に移してある。従って……)

するとレインは自身の胸に手を突き刺した。

突然の光景に全員は硬直。


「ガァ……アァァァ…!!ガッ!!」

奴は軽く息を切らしながら球体の様な物を胸の中から取り出した。


その球体はどんどん人の形へのなっていく、最終的にはレインとは似て否なる存在へと変わった。


奴と顔と服装は同じ、だがその肉体はかなり筋肉質で無駄がない。スラっとしているレインを見てからこいつを見ると更にムキムキに見える。


「ふぅ……専用能力は使えないのでこれを。

魔法が使える私とパワーがある彼。今相手をして欲しいのは……」

奴は奥でじっとレインを観察しているログロとブレイを……見据えた。


レインには考えがある。

(あの二人はかなりの実力者、実際兄弟三人をほぼ無傷で殺していた。)


レインの視線。自分が狙われると心で感じたレインとログロはケイ達を巻き込まない様に前に出た。


「ケイ」


ブレイとログロは同時に話す。

「こいつは任せろ。だから───勝て」


「……必ず」


二人の様子を見て、レインは指を鳴らす。


「では、頼みますよ」

パチン!!と高い音を響かせる。

するとレインのコピーは軽く息を吐いた後、姿を消した。


「こい──」「ッ!?」

奴は腕を大きく広げて、二人を掴んだまま外に飛び降りてしまった。


「心配、しないのですか?」


「ログロさんが任せろって言ったから任せたんだよ」

少し口調を荒げながらケイは返す。

今問題なのは……ザルツ先輩だ。


「そうですか……なら!![土魔法・柱]!!」

ザルツを狙った数本の柱が急速に迫る。

最短で殺すと言うのは本当だ。


だがその柱は真っ二つに切断された。

それを行ったのはハウでもケイでもない。


「うちの先輩に手ェ出すな、レイン。」

怒りが頂点に達したリサ・セイト。彼女の大鎌であの柱を一振りで豆腐の様に切断した。


「チッ…(………どうやら、この三人とも実力者。か)」

軽く笑みを浮かべつつ、レインはそう判断。


そんな奴を無視してケイはザルツに話す。

「ザルツ先輩、まだ行けますか?」


「流石に足手纏いだ。今は」


「なら…………………」

レインに聞こえない声量で話し合う。

聞こえるのは四人だけ。

ケイが提案した作戦にザルツは驚愕。


「君良く鬼畜って言われない?」


「だったら諦めますか?」

ニヤリと返すケイにため息を吐いたザルツ。


「はぁ………それじゃあ()()な」


「えぇ、()()

ハウがザルツ周りの地面を切り抜き、ザルツは落下。

参戦離脱だ。



(……切り捨てたのか?)

その様子にレインは訝しむ、ただ見捨てただけ?それとも何か作戦が…


「(まぁ良い。今は……ここで殺す)[土魔法・柱]!!」


地面や壁から無数の土柱が襲う。

(なにを…?)


無数の柱が天井や壁を全て破壊して行く。

数分経った内には空がくっきりと見えた。



「ここなら全力でやれる。さて……始めましょうか?」

三人は構え始める、大剣、大鎌、手甲剣。


この戦いで決まるのは意地の強さだ。

どれ程自分が思い浮かぶ未来の渇望が強い方が勝つ。


(今度こそ取りこぼさない)

誰を助けるではない、全員助ける。


(『夢』を必ず叶える)

もう後一歩なのだ。


長い沈黙。


それを破ったのは……………




「ハウ!リサ!今だ!!」

ケイ・タケダだった。

ほぼ同時、且つ別々に飛び出す事でレインの的を散らす!


「(そうくると思っていたよ)[土魔法・針]」

レインもギアを上げ、土針を生成。何本もケイ達に飛ばす。



ハウとケイには同じ思考が流れる。

(近寄らせない気か!!)


一本一本の対処は大した問題ではない。

だが…的を散らした意味が無いと思う程に…密度が凄まじい。


「[燃焼](出し惜しみはしない。速戦即決)」

綺麗な半円カーブでレインに接近。

壁も天井も全て破壊した奴の失態だ。


レインの背後に接近。


「一斬り目!!」

威力+速度の加算で柱だろうが針だろうが全て破壊してみせる!


「[土魔法・壁]」

ケイの方へと一切振り向かずに、土壁を生成。

破壊したのはいいものの、そこに奴はいない。


「[土魔法・甲]!!」

「ッ!!」

腕全体に土を纏い、一撃。ケイもそれを受け止め、甲高い金属音が空に響いた。


「グッ……」

少し飛ばされ奴との距離が再び離れてしまった。

(威力はそこそこだが、手数が凄まじいな)


今距離を離されるとまた……

ここでケイにはある違和感に襲われる。


(近接もやれるのに徹底して距離を離そうとしてくるのは何故……?)

それに答えが出る前に更なる柱が、ケイ達を襲い始めた。


密度がどんどん増えて行く。

刹那、レインの視界には小さい鎌が飛んでくる。

「ッ!![柱]!!」

強固な柱を一本作り、防ぐ。


(馬鹿な。攻撃を掻い潜った……そしてこの鎌…彼女の能力は…)

レインの柱によって弾かれた鎌はリサの方へと戻って行く。


彼女の能力は[操作]。

自身の魔力を込めた物を遠隔で操作できる。

先程は鎌を小さくして、柱と柱の間を狙ったのだ。


(先刻の大鎌とは違う…つまり、あの(リサ)は武器を自由自在に変える事もできる……のか)


[燃焼]、[刻刹]、[操作]。

この三つの業を掛け合わせて近づかれたらひとたまりもなく、今の肉体ではどんな一撃でさえ致命傷になりかねない。



そこで見たのはハウ。



「……ふふ、なら!!」

[土魔法・柱]を維持しながらレインは奇策に身を投じる。


「[厳格な大地よ、その怒りを留める事なく、ぶつかり、発散し、我が命を聞き賜え!!]」


三者には嫌な予感が体中を駆け巡る。

そこに根拠はない、あるのは直感。それだけだった。


出来るだけ距離を離し、余裕を───

そう思った三者は後ろを下がろうとした瞬間、ハウの体に激痛が走る。

「……ガハッ……!(クソ……カイザル戦のダメージか……)」

ハウが……吐血した。


「[土魔法・(そう)]!!」

レインの前方。

ハウ一人に穂先を向け────放った。


「ッ……[刻刹]!!」

視力を上げた所でそれに対応できる肉体があるハウだからこそ、この状況を突破できる。


(魔の目と合わせれば消せる!!)

ハウの目によって、魔力が込められた物は消せる筈だった。


しかし、いくら凝視しても土槍が消えることはなかった。


「………ッ!!?」

大剣で土槍を受け止める。ドリルの様に回転するこの槍がハウの剣をじわじわの削っていく。


問題ない。

凄いパワーだが行ける…そう思った。



が……

「ガッ!!……あァァ…」

ハウの剣を砕き、土槍によってハウの胸部に突き刺さった。


刹那、再び吐血。カイザルとの戦いでハウの肉体は限界に近かった。治したのは、あくまでも外傷。


彼は地面に膝を着き倒れ込んでしまった。

「!!ハ───」

ケイがハウの方へと向かおうとした瞬間。大きな魔力を背後から観測。


「よそ見」

土魔法・針が顔に接近。


「グッ!!」

なんとか腕で受け止めたが、魔力を充分に込められず左腕を貫通してしまった。


今は左腕よりもハウだ、槍は自分で抜いたようだが非常に苦しそうにしている。


ハウに攻撃が行かない様にリサとケイは無理矢理合流した。


「ハウ……大丈夫か!?」


「すまない……出血が止まらん」

獣族特有の肉体。そのフィジカルの強さに最も依存していたのは自分だったのだとケイは己を責めた。


心の何処かでハウならなんとかしてくれると期待していたのかもしれない。


「また一人。ですね」

余裕綽々といった様子で再び針攻撃。

ハウを守る為に全てを防ぐ。


リサとケイの体に何本か軽く刺さったが、すぐさまに抜き攻撃。


「[燃焼]」

正面からレインに挑む。大量の柱が迫るが大鎌によって何本か切断された。



ケイが近くに接近。

「!…チッ」

甲で防ぐ……が


「なっ!」

背後から大鎌。速度も威力も中々に高いのか!


「私の事、舐めす……ぎ!!」

横から双剣を持ったリサが右脇腹を斬りかかろうとしている。


このままじゃ押し切られる。なんとか脱出を……!

畳み掛ける様に左脇からハウ。吐血しながらも斬りかかってきたのだ。


(ハウ・ゲレーロ!!いつの間に…!!)

もう立ち上がるのは不可能だと思っていた、人をみくびり、油断した。


奴は舌打ちをした後、ある魔法を唱えた。


「………[氷魔法・散]」

(土魔法じゃない!?)

ケイが驚いたのも束の間、小さい無数の氷った針が三人を襲う。


体中擦り傷になってしまったが大したダメージではない。


「やはり……」

原理は不明だが魔の目でも消せない魔力を込めて戦うレインに動揺は隠せてなかったハウだった。


そんな彼らの様子など気にかけずレインはため息を吐き、独り言を溢す。     


「……傲慢さは身を滅ぼす…か」

そこには苛立ちも含んでいた。

お互いの沈黙を保った時、突如レインが口を開く。


「あなた達と、亡き息子達の為に今ここで宣言しましょう。私の『夢』…現在もどこかに潜んでいる……」


焦らす様に間を開け、レインは再び口を開く。


「神オリアーナへの宣戦布告ですよ…!!」

奴にとって今は途方なき夢の中間地点。

奴の野望が遂に───明らかとなった。




遂に50話!!

ここまで見てくれた方。本当にありがとうございます!

序盤を改めて見返すと……地味だなぁと思います(笑)でもこのままのスタイルで行こうと思います。これからもよろしくお願いします〜!!

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