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半端者の戦い方  作者: 半端者の柑橘系 
第六章 第二都市編
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第48話 マフォード家、レノアの覚悟。

前回のあらすじ

カイザルとの戦いに勝利したハウ。

同時刻にレノアはケイの治療を行っていた。

[視点はレノア。時間はおおよそハウ勝利後]


「……ケイ君」

ドライヴとの戦いを経てケイは瀕死の重症。

息こそしているが意識が戻らない。


取り敢えず今は治癒魔法で瀕死の状態は治した。


(これほどの傷を全部治療すれば……私は…)

多分、最後の戦いでは支援が出来なくなる。


彼女は体が弱い。

膨大な魔力量だが、魔力を使い切ると最低でも三日は眠る。魔力の回復がパーティの中でダントツに遅い。


かなりの痛手。

恐らく最善なのはケイの怪我だけ治し、このまま残ったメンバーで戦うのが一番なのだろう。


だが、彼女の心の中ではそれ(判断)が間違っていると強く自身の考えを否定してくる。


「……何故だか分からないけど、私。ケイ君なしでは勝てない気がしてならないの……」

裏社会に出た後の彼の目は冷たくなっていた。


自分を人殺しだと責め、何かとても重いものを一人で背負ってしまった事をレノアもハウも感じていた。


人殺しの業。

それはどこまで付いてくる枷。


「私の前では無茶をしないっていう約束だけじゃ……

駄目なのかな」


もしこれから負傷者が出たら最低三日はレノアの治療を受けられない。


自分がどれ程重要なポジションにいるかを理解しているからこそ、彼女の判断はどんどん鈍る。


どうする……?

ケイ君を信じる……?信じたい……!

けど………


いや、私がやらなきゃ。


(ブレるな。私!!)

頬を軽く叩く。

そして、辺りにあった紙に私の気持ちを書いた。


「ケイ君……ごめんね。[治癒魔法]」

緑色の光がケイの体をみるみる治す。

欠損した指も、斬られた背中も、活動不可能になった腕も。


レノアの鼻からゆっくりと血が流れる。

体への負担。


(頭が割れそう……!!痛い……!)


数分もせずに外傷はほぼ完治。

後は、使い切った魔力を流し込み完全にケイの体を元に戻す様にする。


ここが山場。

彼女の肉体に最も負担がかかる作業。


「ハァ………フッ……フ〜」

頭の中には辛い、としんどいの二文字が駆け巡っている。いくら大切な人でも痛みを忘れ無我夢中でやるなんて不可能だ。


乱れていたケイの呼吸がどんどん通常の静かな呼吸へと戻る。


こうして三十分。

ケイの魔力も肉体も全て完治した……が、


レノアの体は限界を迎える。


(後は………お願い……ごめんね…ケイ……くん)

最後まで、ケイをまた戦地へと行かせてしまう罪悪感との葛藤を抱えたまま、レノアは勢い良く地面に倒れた。


ケイが目覚めるまで、そう長くは掛からなかった。


[五分後、視点はケイ]


目が覚めた。

左腕の感覚と、斬った指が戻っている。


まさかドライヴが?

あいつに治されるなんて屈辱………


こうして視界の端に金色の何かが映る。


(なんで………誰が……え?)

ケイが見たもの。

地面に倒れ、出血していたレノアの姿だった。


「レノア……さん?」

返事はない。それは分かっている。


「レノアさん!!!」

体を揺らさずにレノアさんをゆっくりと起こす。

息は……している。


と言うか……寝てる?

「……………大丈夫か?」


取り敢えず立ち上がり辺りを見回すと、そこには手紙があった。


多分、彼女の字だ。


『ケイ君へ。

多分ケイ君の怪我を治したら私は暫く寝ます。大丈夫!!寝ると言っても3から5日くらいだから!!!

私の心配はしなくて大丈夫。私が心配なのはケイ君とみんな。主にケイ君は無茶ばっかりするから、気をつけてね!!本当に!!』


「レノアさん……」

彼女やみんなからは心配ばかり掛けていたんだな……本当に申し訳ない。


こんなに心配させてしまったと言うのに、どこか笑みが溢れてしまう。


嬉しさが勝ってしまった。


「ん?」

手紙の裏には少しだけ文字が書かれてあった。


『ps.ケイ君が背負っているもの。きっと私には想像つかない。けど……私にも背負わせて?ちょびっとだけで良いから!!』


「ッ……」

レノアさんにはそりゃバレるか………多分ハウも気づいている感じか…?


その言葉に、ケイ目が滲む。

ダメだ……泣くな……!!


俺一人で背負わなきゃいけない筈なのに……


ストライドの言葉とレノアの言葉にまた少し心が軽くなったケイ。


百が九十八になったくらいの変化だが、それをちゃんと実感できる。


目を軽く拭い、レノアを見つめる。

「……………とか何とか言って、君が無茶したらダメでしょ?」

軽く─────本当に軽く、レノアの頭に拳を乗せるような拳骨。


少し恥ずかしさが勝ったが、レノアの頭を撫でる。

彼女は少しだけ……笑っているような感じがした。


彼女は空いた家にベットが置いてあった為、少し申し訳ないがそこに寝てもらう。


『彼女は英雄だから見守ってくれ』と置き手紙を残し、ケイは最後の敵を倒す為、前進する。


家を出ると、改造魔物の死骸が辺りに散らばっていた。


(俺達が戦っていた間にログロさんかブレイさんが動いたんだろうな)


その考えは正解。

少し歩くと地面に横たわって熟睡しているハウと煙草を吸って咽せているログロがいた。


吸い慣れていないのだろうか、一本の煙草で彼は何度も吸う・吐くという行為を繰り返していた。


「ケイ・タケダ。怪我は治ったのか?」

驚いた様に呟いたログロはケイの方へと向かう。

そうして………


「すまなかった」

頭を───下げた。


頭を上げてください。そう言う前にログロは言葉を続ける。


「お前に不要なモン背負わせちまった。本当に……すまない」

ログロさんに非はない……と思う。どちらかといえばあの時裏社会へと戻る判断をしなかった自分が悪いと思う。


「大丈夫です、背負ってくれる仲間がいるんで」


「…………そうか」

どこか嬉しそうに答えるログロなのであった。


「つか、ハウ!!大丈夫か!?」

いびきをかいて完全に『休日の親父』状態のハウ。

驚くことに、上半身の怪我がどんどん治っていく。


「こいつは特別だからな。獣族の中でも怪我の治りが早いらしい」

そう言っているログロもハウの化け物級フィジカルに驚きを隠せていない。


────怪我を治すから寝る。

そう言って地面に横たわって熟睡し始め怪我が治っていく所を見たログロの気持ちは考える必要もないだろう。



ケイとログロは苦笑。

(化け物め………)

と、同じ事を考えていた。


そんな中、突如城から爆音。


「なんだ」

ログロ達は城の方へと振り向く。

そして数秒後、街全体を包む魔力の気配が襲った。


ずんと重くのし掛かる重い気配。

何かが体に乗っかっているんじゃないかと錯覚してしまう。


気配とは本来隠した方がまだ良いもの、

だがこの気配は留まるところを知らないと思うレベルだった。


だが肺を殴る様な気配しかない。

つまり……


「………もう改造魔物の気配は感じない」

つまり、残るは神の四天王(大将)しかいない、

というわけだ。


「ログロ!!大変だ!!」

どこからか転移してきたブレイも合流。

そこにはリサもいた。


どうしたとログロが冷静に返す。

その冷静ぶりにブレイも冷静になったのか静かに答える。


「街の人達が全員、昏睡した。一体何が起こっているのかは不明。だが……間違いなく緊急事態だ」

冷や汗がブレイの首を伝う、もう時間はない。


「そうか…リサ・セイト。そちらの状況は?」

息を切らしながら、リサは答える。


「ザルツ先輩が………恐らく神の四天王と思われる者と接敵。私は……空に投げ出された……」

今頃ザルツがどうなっているかは想像に難くない。

ノアに勝利した彼とは言え、一人では間違いなくしんどい筈だ。


「そう言えば、ケイ。レノアちゃんは?」

ブレイがそう聞くと、ケイは申し訳なさそうに答える。


ログロ達もそれは薄々感じてはいた。


「レノアさんは…俺を治して……気絶…しました」

ヒーラーという大事な役職がいない状況、だが不思議と重い空気にはならなかった。


ブレイが笑って答える。

「そうか……その判断は……正しいと言わざるを得ないな!!」


「!?」


「こんな頼もしい奴を治してくれたんだ!!ありがたや〜」

リサとブレイ、ログロもケイの肩と背中を叩く。

もうケイは旅に出る前の弱い人間ではないのだから─


「そうだぞ、参謀」


「ハウ・ゲレーロ。起きたのか?」

少し驚いた様子でログロは返す、ハウの体は元に戻っていた。


この戦いに終止符を打つべく、四人は動き出した。

その時ケイは決心する。


(どんな犠牲を払っても必ず勝つ!!)


背負い、覚悟を決めた男の殺意。

その純粋な殺意は……必ず勝利へと導く───


そろそろ第二都市編の終わりが近づいてきました。

みなさんはどうでしたか?まだ終わってないけど。

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