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半端者の戦い方  作者: 半端者の柑橘系 
第六章 第二都市編
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第46話 力と力

ハウとカイザルの戦いは、時系列で言うとケイとドライヴの戦闘中らへん。

ハウとカイザル。

二人の戦士。


改造魔物は、魔法に優れた者が多く至近距離をメインとした戦い方をする者は、長男のドライヴと三男のカイザルだけだ。


カイザルは完成された『戦士』

肉弾戦を得意とする。


「どうしたぁ?来ないのか?」

わざとらしく挑発するがハウは乗らない。

ただカイザルをじっと見据えているだけだった。


「……お前が出るなら、俺も出るさ」

静かにそう告げるとニヤッと奴は笑った。


「そうか。それじゃあ行かせて……もらおうかな!!」

二人はほぼ同時に飛び出した。


カイザルは即座に回し蹴り、

鈍い風切り音が聞こえる。


「足。借りるぞ」

カイザルを軽々と持ち上げ振り回す。


「おっと!?」

辺りには城壁と家が近くにあった為、奴の頭はそれに何度もぶつけられていた。


「………よっと!!!」

「ッ…!!」

そこそこ大きい家の方向へと奴を吹き飛ばし砂埃が舞った。


すると煙の奥から笑い声。

服だけがボロボロになったカイザルが見えた。

「いいねェ!」


「そりゃどうも」

カイザルは鼻血を出し、口に垂れてきたものを舐めた。

指をボキボキと鳴らし、カイザルは再び構え始める。


「!!」

先程と同じく急接近。

二度目の蹴り上げ。


「同じ方法では結果は変わらない」

同じ構図、再び足を掴もうとしたが……


「!!(しまっ───)」

気づいた頃には奴の踵がハウの肩間近に迫っていた。

「ガッ!!?」


背中に重い衝撃が響き、地面に叩きつけられる。

油断した。


「変わら……なんだって?」

奴の蹴り上げはフェイク。足を途中で止め、そこからの踵落としが狙いだった。


地面に突っ伏したハウを見て、カイザルはにやけた顔をしていた。


「これを喰らって肩がなくなるどころか骨にもダメージがないとはな……お互い頑丈だなぁ…!」

そう言いながら、ハウの頭へと拳を振り下ろす。


「ッ……あぁぁぁ!!」

歯を食いしばり、拳を強く握る。


そうして動かない体を無理矢理動かし、横に転がった。


地面は人間の頭が綺麗に入るくらいにはへこんでいた。



そのパワー、その体術を見て……

「ハハッ」

溢れたのは………笑みだった。


自分より格上の戦士前で、ハウの集中が更に深く沈んでいる。


「使うか」

目を手で覆う。

右目が赤色に染まった。


だが、それだけ()()()()。左目も赤色に染まっていたのだ。


(なんだ…?ハウの奴何を……)

考えていた束の間。

()()にハウはいなかった。


「何処に…」

こちらに向かう様に動いた時が最後。

音もなくハウの姿が消えた。


こんな状況でハウが一番しそうな行動は……

「…!後ろか──」


「遅い」

裏拳によるカウンターを喰らう前に、鼻を狙って拳で一撃。


「グッ……だらっ!!」

ハウの接近に合わせて前蹴り。

………それも遅い。


「フン。」

足を掴み、少しバランスを崩した奴の脇腹を蹴り飛ばした。


鈍い音が鳴り響き、近くの家に衝突。

流石に効いたのか少し息を切らしていた。


(速い……!!だが、強化したのはおそらく『目』か!!)


ハウの能力[刻刹]

自身の動体視力を底上げし、彼の身体能力の高さをサポートする。


リスクとして

使用後の視力低下、もしくは喪失の可能性がある──

───が、獣族である彼の身体能力の高さは能力の脅威(リスク)を遥かに上回っていた。


生まれつき、魔力が籠った物を自動で削除する魔の目という特殊体質。

目……並びに眼球の強さは人類の中で屈指の強さだろう。


「………終わりか?」

[刻刹]は自身の身体能力を引き出す道具に過ぎない。


「いやいやいや!!まだまだ!」

先程の攻防を得て、カイザルのボルテージは留まる所を知らない。


「俺の能力を見ていけよ」


「……何?」


「[飛車]」

彼がそう呟くと空気が変わった。

奴が足を軽く踏ん張らせると………


「!?」

先程のやり返しと言わんばかりに、スピードでカイザルは応戦し始めた。


スライディングに近い低い姿勢で、奴は急接近。


(しゃがみ蹴り──)

ハウは上に飛び、回避。


「まだ俺のターンだ」

足を大きく上に広げて踵を落とす。

ハウの攻撃を見ずに、滑るように真横に回避した。


踵落としによる爆音。

地面が抉れた。


奴の攻撃動作が終了する前に反撃したつもりだったが、それでも避けられた。


「………速いな」

ハウは独り言の様に呟く。


引っかかった点は能力使用前と比べて動きが直線的になった。


(攻撃も、回避も何かタネがあるな)

ザルツの様な純粋な身体強化ではない。実際奴の力は増していない。


「[飛車]。か」

奴の顔は悦楽の表情。ただ楽しそうだ。


「まだまだ行くぞ!!」


「(背後──)ガッ……!」

背中を再び蹴り飛ばされる。姿勢が崩れた隙に奴は()()に四角形な形に回り込んだ。


(攻撃速度も威力も大した変わらない…!!だが……

なんだこの移動速度は!!!)

急な加速。これにより動きが捉えられず必ず先手を入れられる。


「……クソッ!!」

背中に衝撃、背中にカウンター。だが避けられる。

正面に衝撃、そこにカウンター…といたちごっこが続いた。


「俺の能力を見切らない……と!!」

「………!!」

腹部に強いパンチがハウに入る。速度を上乗せた一撃は凄まじく三つの家を貫通した。


(ヒントとなるのは()()()な動き。さっきから前方と後方にしか攻撃をしてこない)


「………本当に頑丈だなぁ…!」

壊れないオモチャ程、彼にとって魅力的なものは無い。


だが、ハウの体力はそろそろ底が見えてきた。

なんとか隠しているだけであって、バレるのは時間の問題だった。


ここでハウは奴の能力解明に全神経を集中させる。


違和感。

この三文字を解明すべく脳に提示させられた情報をハウは処理し続けていた。


(直進的動き、正面と背後、圧倒的な加速、代償は…もしかして……)

こうして……思いついた。



「直進…」

「何?」


ぽつりと呟いたハウだったが、それを見逃す程奴は愚かではない。


「移動ルート、お前……能力の制約で縦か横しか行動できないんだろう」


時間にして一瞬。ハウは敵の能力を突き止めた。

四角形の形で正面に回り込んだのが答え。


ハウの背後にいたカイザル。上空から見て、右→前→左(ハウの正面)と移動していた。


十八と言う歳でベテランと同等の経験量。

元護衛として様々な敵と戦ってきたハウにとって情報を出す行為は悪手。


「…………やるな」

相手に出し抜かれても、殴られても笑みを崩さなかったカイザル。

だが今の顔は真顔だった。


「お前は常に理性で戦うんだな」

ドライヴが言っていた。

これからの改造魔物に必要なのは理性。それさえ手に入れば人間を超える生物になれると。


「それが……お前か」

一人でぽつりと呟く、ハウには聞こえなかったが。

両者、体が温まった。


「それじゃあ……お互いに全て晒した訳だし…やるぞ!!!本気の闘いを!!」

カイザルに釣られたのか、ハウも笑みを浮かべた。

ここから先は自身の肉体を信じ、理解を深めたものが勝つ。


「!?」

突如、ハウが逃げる。


「どぉぉこに行く!!?」

ハウ目掛けそのまま直進。


「待てよ────ッ!?」

目の前には石───


「〜ッ!!ダァァ!!」

()()()()に回避した。

刹那───体が動かない。


(何ッ?)

体の異常?一体何が………


「随分と……」

強風の如く、背後にハウが侵入。動ける様になった時にはもう振りかぶっていた。


「重たい制約だ……な!!!」

腹部に思いっきりアッパー。

滝の様に血を吐き出し、骨が軋む音が確かに聞こえた。


カイザルの戦闘経験、能力の理解の少なさが招いた…

最初で最後の悪手。


戦いは佳境に入り出した。




今回の戦闘の為に辞書やネットから空手などの体術関係の技名をそこそこの時間をかけて調べる作業が一番楽しかったです(笑)

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