第44話 理性VS本能
「話そう。ドライヴ」
結界術によって作られた日本の景色。
この技術について記されてあった本に、代償を払う事が重要とは書いてあった。
使う気は一切無かった。
が、勝利の渇望とはまた違う何かがケイの中にはあった。
(なんだ…これ?魔力を一切感じない)
[燃焼]も使えず、あまり力が入らない。
それはケイも同じ。
一般にある少し狭く、ブランコや滑り台しかない細々とした公園。
二人の男は怪我だらけのまま、ブランコに座り語り出した。
先に質問したのはケイだ。
「もう一度聞くぞ、お前は人を殺してどう思った?」
「……お前は人を殺したのか?これを話してお前は共感を得て欲しいのか?それとも俺を否定したいのか?」
それを聞いてケイは黙り込む。
正直、この質問には意味がないと分かってる。
「あぁ……殺したよ。お前の様な渇望ではない。それでも………人を殺した」
思い出すだけでも手が震える。
「どんな大義名分があろうと俺にとっては尊き命を奪ったんだ。許される筈がない」
呆れた様にドライヴは返す。
「それを否定してほしいのか?『お前は悪くない』と言って欲しいとそう言うわけか」
「…………どうだろうな」
ドライヴの言葉に様々な言い訳が頭の中に浮かんだ。
──奴隷を救う為
──やらねばならなかった
だが、口から出たのは………迷いだった。
これからも人を殺し続けるのだろうか、殺しが選択肢に入っている今の状況がとても悲しくさせる。
「それじゃあ、俺から質問だ」
ドライヴがそう言った瞬間、場所が変わった。
結界術はまだ分からない事が多い。
ケイの心情が変わると場所も変わるのかもしれない。
学校の教室。
そこには誰もいない。
椅子に座りドライヴは口を開く。
「俺は魔物として本能のまま戦ってきた。しかし、それでは完全な強さには足りない。今の……これからの俺に必要なのは理性だと悟った」
ストライドとの戦い。その時でもドライヴは自身を理性の代弁者と信じて疑ってない。
「だが、お前は俺と戦い俺とは違う、自分の道を切り拓いた。不本意だろうがな」
怪訝な顔をするケイを見て、軽く笑う。
その言葉に終わりは見えない。
「似た者同士だからこそ、俺達は反発できる。先へと行けるんだ」
ドライヴは続ける。
「誰よりも早く理性を得てそれを捨てた筈の人間共が再びそれを取り戻したんだ。中々面白い」
「……………強さの先に何を得たいんだ?ドライヴ。
お前は見えたその先に何があるんだ」
ケイは聞く。
何故か分からないが聞かずにはいられなかった。
「『証明』だ」
「!?」
笑みを浮かべたまま、ドライヴは語る。
「貧弱な人間が理性を得て、俺達と並んだ様に、強固な存在が理性を得たら誰よりも優れている、とな」
彼の考えは………意味こそ理解したものの、理解できなかった。
「………だからこそお前に敬意を払わなきゃな。ケイ・タケダ」
「敬意?」
「ああ。お前のその考え、思想全てを」
────人を殺して、どう思った?
ケイの目をじっと覗き、その表情には清々しさと殺意に満ちていた。
「俺は人間を超越した存在と思いたかったが……どうやらそうもいかないらしい。本能が俺の邪魔をした」
苛立ちを含んだ言葉だったが、ドライヴはそれさえも
自分の力としようとしていた。
「………きっと人間には………俺達には分からない強さがあるとそう思った。目を背けて理性を語るには、少々傲慢だと考え始めた」
理性と代弁するくらいだ、様々な所まで考えが至っていたのだろうか。
今のドライヴはどこか別世界にいるような、懐かしむ様な目をしていた。
「この戦いで決まるのは俺達人類の底力。理性と本能。どちらが強いかが決まるんだ」
ケイは黙り込み、深呼吸をした。
今のケイにあるのは、憎しみでも怒りでもない。
「…………俺も認めるよ、ドライヴ。お前は誰よりも人間だ。だから俺はお前と言う人間を殺す」
拳を強く握り、ドライヴを見据える。
「お前の全てを否定するには、憎しみでも強い怒りでもない。それさえも超越した純粋な殺意だ」
そう宣言した、この学校の屋上へと場所は移った。
もうどこに行っても驚くことはない。
決着はここで着ける。
「お前と俺。俺達人間が手に入れた尊厳をぶつける」
そうすると、ケイは屋上のフェンスを壊し地上を背にして落下しようとする。
こうして笑みを浮かべながら一言。
「──来いよ」
「上等──」
二つの閃光。
ドライヴは黒色の雷を持ってケイに襲いかかる。
魔力、体力両方それぞれ限界。
故に決着は────短期決戦となる。
屋上より高い上空で、ドライヴの剣とケイの剣がぶつかる。
ガキン!!
と甲高い音の後、ドライヴは壁側に飛ばされる。
(崩した)
態勢を崩したドライヴ、狙うのは──
声を荒げるのではなく、息を吐く様にフッと、体を雷に任せ、ドライヴの右腕を切断。
二人は地面に向かって壁を走り出した。
(クッソ…膂力じゃ奴の方が上か!!)
(そのまま殺せると思ったが…速度は奴の方が上!)
壁を蹴り出し、空中で
もう一度ぶつかる。
ケイはそのままの腕と握力で
ドライヴはスピード、体重、腰の捻りを使い
剣と剣が重なる。
激しい太刀音が響き、両者吹き飛ばされる。
「ッ!?」「グッ…!」
ケイは教室へ、ドライヴは校庭へと飛ばされる。
「やるな。燃──ッ!?」
ドライヴを中心として、ケイの雷が一周した。
(今のままじゃ初速で潰されるな)
そうして、ドライヴは剣に最低限の雷を貯め、
居合の構えを取る。
レターの技が今ここで生きる。
(此処!!)
ケイがいた場所に剣を置く。
────だが、そこにはもういない。
(─────速い!!?)
「初めてだよ、敵を信用したのは」
背後にはケイ。
ドライヴは顔こそ此方に向いているが反応できない。
一切の抵抗を許さないまま、
ドライヴを…………切り伏せた。
彼はそのまま倒れ、結界が解ける。
場所は最初に会った時の広場に戻った。
うつ伏せで倒れたドライヴはそのまま語り出す。
「勝つのは……お前か。ケイ」
「勝ったとは思ってない」
少し驚いた表情を見せたドライヴは黙り込む。
「お前には仲間がいなかった。俺にはいた。お前の考えも、強さも全て否定できるほど俺は強くない」
「!!」
そうして、ドライヴは口を開いた。『殺し合い』よりスポーツに近い爽やかさを彼は感じていた。
「そうか……………理性が負けるか。俺もお前も本能の強さは侮れないものだな…」
そう言って軽く笑った後、ドライヴは最後の魔力を放つ。
その魔力で、近くにあった塔を倒す。
「じゃあな。ドライヴ」
その意図を察し、ケイは息を切らしながら足を引き摺り退散した。
「……なんだよ。アイツ…ハハ……ムカつくなァ…」
笑みを一切崩さず、倒れてきた塔に潰されてドライヴは死んだ。
その命、その覚悟、最期まで変わる事なく………
今頭の中で第三都市編が完結しました。
第四都市編がストーリーとして全く浮かばない事です。
二・三で燃え尽きた節があるかも……
頑張ります!!




