第42話 [燃焼・放]
[視点はストライド]
この国の地下に潜む裏社会。血の海となった違法カジノ。
そこで三人の意思がぶつかる。
(情報によれば、奴はケイさんと同じ雷に身を任せた超速の使い手!!)
ストライドとロズは同じことを考えていた。
(まさかここで接敵するとはな、なんとかあの超速を抑えたいが………)
この二人は完全に『待ち』の態勢。ドライヴは先手必勝の心境のもと、雷を全身に纏う。
「来ないのか?じゃ……[燃焼]!」
狙いはストライド。一瞬だけ奴の閃光がストライドの目に映った。
甲高い音がホール中に響く。
ギリギリと金属の擦れる音が聞こえる。
「ッ!(重い…!)」
ほぼ反射でドライヴの剣を銃で受け止めた。
冷汗がロズの頬を伝う。
顔には出ていないが、燃焼に対する恐怖は間違いなく伝わっている。
数メートル飛ばされたストライドは肺に溜まった恐怖を吐き出し、ドライヴを強く睨みつける。
少し驚いたドライヴは思わず感嘆の声を漏らす。
「……………やるな」
特筆すべきはストライド武器作成からの防御速度。
(ケイの燃焼は見ていただろうが受けるのは初めての筈。ここまでの使い手に会えるなんてな…)
感じるのは確かな昂り。だがそれに身を任せてはならない。
ドライヴは自分に言い聞かせる、改造魔物としての矜持、それが彼にはある。
(俺は理性の象徴、代弁者だ。獣の心に支配されてはならない。)
不敵の笑みを浮かべると、ストライドを睨み返す。
「さて、お前が作ったその武器。見せてもらおうか?」
指ではなく剣でストライドの方を指すと、彼はため息を吐く。
そんなストライドの様子は無視してドライヴは勝手に喋る。
「俺の予想じゃお前の武器は遠距離武器。距離を取る気なら……」
そう語ったのも束の間、ストライドは突然距離を詰める。
「!!」
「そんなに見たいか?私の銃が」
片方の銃で、反撃をしようとしたドライヴの剣を止め、遠くに蹴り飛ばす。
(チッ…成程……近接武器か──)
思考を止めないドライヴ。
すると、ドゴォン…!と火薬を用いた大砲の様な音。目の前には弾丸が迫る。
「(小さい弾……!!)チッ!!」
なんとか弾くと、右後ろから風切り音。
重い物を振り回す様な音が近づく感覚───
「オラッ!!」
ロズの回り込みからの一撃。何かを纏った拳によってドライヴは壁に吹き飛ばされる。
ここで違和感。
先程の攻撃で剣が放電している。
奴は慎重に剣に触れると剣は濡れていた。
(………水?)
「ロズさん、手応えの方は?」
「完璧に防御された。望み薄」
相手を見据えながらロズはそう言う。
実際ドライヴはダメージではなく、ロズの攻撃について考察していた。
「お前……何した?」
「自分で考えるんだな。さて、畳み掛けるぞ」
ストライドは再び発砲。ロズはそれに合わせて飛び出す。
腕全体に纏った水でドライヴに殴り掛かる。
「(今度は避ける)[燃焼]」
弾丸を雷速で回避し、狙うはストライド。
背後に回り込み、首を刎ねる為、剣を振り上げる。
「何!?」
ストライドは一切振り向かず、防御。
狙う場所がバレていたのか───!!
ノールックの防御。完璧な守備はドライヴを驚かせた。
「フンッ!!」
ドライヴの完全有利な状況から、ストライドの防御により、ドライヴは力負けした。
(この男、先程の重さに比べて力が弱い……速度と体重であの重さを維持しているのか)
「剣術も大したものじゃねぇな、感覚だより剣士。と…言うわけか」
ロズの考えにドライヴは手をぷらぷらさせ答える。
その様子は悪戯がバレた子供の様だ。
「仕方がないだろ、まだ生まれて一ヶ月しか経ってないんだ」
型にはまらないドライヴの変幻自在な戦い方は元々の才能もあるが、初心者だからと言うのもあった。
「お前らは俺の踏み台となり、更に強くなる!!」
「その志は立派だ」
ロズは軽く言う。ストライドもその戦闘狂ぶりに呆れた様子。
「んじゃ、今度こそ始めるぞ」
ドライヴの言葉に二人が身構える。奴が雷を纏う前にロズがワンアクション。
「[変換]」
死体に触れる。するとその体は水へ変わってしまった。
ドライヴ辺りの死体も全員水……並びに水球へと変わる。
(なんだこれ…?まずは壊してみるか)
雷を纏った剣を振りかざすと水からは絶対出ない、金属に強くぶつけた様な音が響いた。
「は!?」
ロズの拳を防御した時もそうだが、水を纏った拳とこの水球。
どちらも当たれば放電してしまう。
雷を纏って戦うドライヴにとってそれは致命的。
「爆ぜろ」
ロズ静かに呟く。何も起きないと高を括り前に進もうとした瞬間、背中に衝撃。
(なっ!?)
辺りにあった水球に近づくと爆発。威力はそこそこだが、衝撃が強い。
「こんなのじゃ……殺せな──」
額に弾丸が一発。爆破音で発砲音が聞こえなかった。
弾丸の衝撃でドライヴは強く仰け反り……
豪快に倒れた。
「当たった。当たったが……」
やれやれとストライドは呟く。息を激しく切らしながら起き上がるドライヴが目に映ったからだ。
(こいつ、額に全魔力を集中させやがった)
面倒になってきたロズだった。
どんな不死身ぶりを見せようともダメージはダメージ。無傷ではない。
ロズとストライドの考えは一致する。
「畳み掛けますよ!!」
「畳み掛けるぞ!!」
ロズが前に出る。
それに呼応する様にドライヴも進む。
「さっさと落ちろ」
ストライドは三発発砲。そろそろ弾丸のストックも尽きる。
サポートにそろそろ尽くせなくなる以上ここで倒したい。
ドライヴは
一発・二発は躱し、
三発目は剣で弾く。
ロズの水を纏った拳を雷を纏った剣で相殺する。
雷を漏らさない様に制御する。かと言ってそれに集中すれば力負けする。
力と力の押し合い。ここで疑問が湧く。
視野の中にストライドがいない!!
「何処に………」
「後ろですよ」
背後にストライド。力勝負に躍起になってガラ空きの脇腹を蹴り飛ばした。
なんとか壁に激突寸前に止まるがロズの呟きが聞こえた。
「[変換]」
魔力が込められたものを違う物質へと変える。
先程の水爆弾や現在ロズの手に込められている物は水魔法で作られた物ではない純正の水。
故に魔力探知は働かない。
足元に死体を確認。
飛んで回避するも……背中に衝撃。
「ッ!!」
不敵な笑みを浮かべたロズは語る。
「無闇矢鱈に殺すんじゃなかったな」
[変換]の厄介な所は人体以外の変換は大した恩恵を得られない。
肉体に対するリスクは少ないが必ず倫理観が邪魔をする。
裏社会に長い事侵入し、誰よりもシステムを理解している彼女だからこそ使える能力。それが変換。
(そろそろしんどくなってきたな)
息を整わせようと思ってもなかなか整わない。攻撃を貰い過ぎた、体力も限界が近い。
「決着つけようかァ!!」
と、声を荒げたその刹那。視界が暗闇で覆われる。
驚愕した表情を見せたドライヴだ。
「目を[変換]で潰せた!ここで終わらすぞ!」
ロズの声に、目をやられたのか受け止めた。
だが、ドライヴは不思議と落ち着いていた。
ここが正念場。判断を誤れば───死ぬ。
(もう攻撃は……いや……あるだろ。唯一の手段!!)
剣に電荷を貯め始めたドライヴを見た二人は奴に接近する。
「来いよ!!!」
剣を振り回したが、そこには誰もいない。
ストライドの残った二発の弾丸がドライヴの腹を貫通。
追撃にロズの水の拳が急所である鳩尾にヒット。
壁に吹き飛ばされた。
壁にめり込んだドライヴはもう戦えない。
ベテランの勝利だ。
「?待て、奴の剣は!?」
ロズが振り返るとそこには大きく振動し発光しているドライヴの剣。
「[燃焼・放]」
水に流れた淡い雷ではない。剣を避雷針として落雷が落ちたかの威力が二人を襲った。
「ロズさん…無事で───」
胴を両断。そうしてストライドの音が消える。
「ストライド?何が──」
ロズの首とそこから出た血が、宙を舞った。
彼女が最後に見た光景は首筋にあった剣。
「初めてじゃないか?お前が役に立ったのは。聞いてるか?アドラス」
ドライヴの最後の策。剣に貯めた電荷を全て放出。
落雷前に地面から放電(迎え放電)の原理を利用し、体に纏った雷に身を任せ突撃。
賭けに勝ったのはドライヴ。
手にした先には剣があった。
地面は水だらけ、剣から放電+水に流れた電気でストライド達に雷が残った。
目は見えない為それを追う事で二人の命を奪うことが出来た。
(アドラスの魔力を放出し自爆する。という考えがまさか実行できるとはな)
感じる高揚は何にも変えられない。
才能から来る柔軟さが二人のベテランを葬った。
『理性』の証明。その方法はシンプル。
『勝つこと』なのだから────
Q.ストライドの銃って自作?
A.そうだよ。凄いよね。




