第40話 雷撃と迎撃
毎日投稿出来るか分かりませんがこれを目指して頑張ろうと思います。
「燃焼…その技を見るだけで虫酸が……走るんだ!![水魔法]!!」
水を槍状に変化させケイの方へ投げるが速度は遅い。簡単に避けることが出来た。
「嫌いなんだな、この技が」
こいつには絶対燃焼でケリを付ける。
だが、我を失うのは禁物。雷を足だけに纏い不完全燃焼で戦う。
アドラスの周りを雷速で回る。奴は反応できていない。
「そこか!!」
アドラスはケイを捉えたと思ったが、そこには誰もいなかった。
いるのは────アドラスの背後。
(討った!!)
「迎撃」
アドラスがそう呟いた後、背筋を凍らす程のプレッシャーがケイを襲った。
「ッ!?」
本能的に、ケイは攻撃を中止する。
するとアドラスは、ニヤリと気色悪い笑みを浮かべた後、すぐに不機嫌そうな顔になる。
「チッ。避けたか。勘の鋭さもドライヴに似てるな…!」
俺が感じたこの違和感は一体───?
ケイの思考を読む様にアドラスは答え合わせをする。
「ケイ対策の能力。それは自動カウンターだ」
勝ち誇った表情でケイを見つめる。
「自動カウンター?」
迂闊には攻撃出来なくなった。
このまま相手を睨み続けた所で意味などない。
先から奴から仕掛けてくれると嬉しいのだが…
沈黙。
長さで言えば数十秒。アドラスは一歩も動かない。
(なら……カウンター発動前に…刺す!!)
互いに見合い出方を伺う。先手はケイだ。
「[燃焼]」
手甲剣は使わず、打撃で先手を打つ。
拳を振り上げる。
狙うは頭。
しかし、雷の超速に合わせアドラスは一言──呟く。
「迎撃」
重い二文字が響く。間に合わなかった。
魔力を込めたケイの拳がアドラスの顔に直撃せず、ケイの顔に衝撃が走った。
「ガッ…!」
反撃速度が並じゃない……俺の燃焼よりも速いのか!
アドラスは、ケイを回し蹴りで近くの塔に吹き飛ばした。
奴に触れる前に攻撃が発動した。攻撃された瞬間も奴の腕は動いていなかった…。
燃焼の速度を見切られた以上、これは使えない。
一手ずつ詰められてる感じがする…!
「クソ、次だ──いッ…!」
今の回し蹴りでケイは受け身を失敗。肋骨が一本折れ、息がし辛くなった。
殺傷性の高い技と言うより、確実に入るダメージを淡々と入れてくる。それがアドラスの戦い方。
カウンターを破る為、思いついた手段を試みる。
「[水魔法]!!」
何発も水球を奴の元に飛ばす。
「迎撃!!」
至る所を狙ったがその水球は全て弾かれた。
先程の拳も水魔法の反射もアドラスの動きが全く見えない。
呆気に取られたケイの様子を見かねて、アドラスは宣言した。
「来ないのか?なら……こちらから行くぞ!!」
アドラスの言葉に身構える。
奴は拳を振り上げ、馬鹿正直にこちらへ突進してくる。
アドラスの拳を軽く受け止め奴の腕を引き、脇に挟める。そうしてガラ空きとなった顔に蹴り上げを狙うが……
「な゛っ!?」
ノーガードで殴られた様な痛みと衝撃がケイの腹部を襲った。
「ふんっ!!」
脇に挟まれていた腕を取り出し、裏拳でケイの脇腹を一撃。再び吹き飛ばした。
体を鍛えていないのだろう。体術は大した事がないが
魔力を纏った拳の威力は中々だ。ザルツに引けを取らない。
「触れる前にカウンターが来るのは分かった」
多少の苛立ちを含んだ言葉だったが、幸い完全に冷静さは失われていない。
近くに何故だか分からないが人の気配はしない。
建物を利用する!!
「斬」
剣に魔力を纏い飛ばす事で、近くの塔を切断する。
これにより、塔とそれが落ちた時の砂埃で一瞬だけ姿を隠せる。
近くの家に入り、台所を覗きあるものを取る。
更に、壁を切り抜く。
人の家を勝手に壊す罪悪感を振り払い、アドラスにケイが拳で壁を吹き飛ばす。
砂埃の中から石壁がアドラスを襲った。
「なにッ…!」
予想だにしない所からの攻撃をアドラスは避けた。
それを見ていたケイは、違和感を覚える。
(回避?)
今のが奴の能力条件を紐解く鍵になるかもしれない。
ケイは浮かんだ考えを実行する為、近くにあった石を
魔力を込めず全力で投げる。
「無意味な小細工を…!」
今度は回避を使わずに、軽く素手であしらった。
(あれほどの強い能力。代償は…!)
奴と同じく馬鹿正直にアドラスに殴りかかる。
燃焼は使わない。
「(馬鹿め!!)迎撃ィ!!!」
能力に臆する事なく、ケイの一撃は────
アドラスの鳩尾に入った。
「ガァァ…!!!」
衝撃により、奴の肋骨を折る。
かなりの骨が折れる音をケイは聞いた。
「魔力を……まとって……いない……!!?」
声を荒げアドラスは呟く。
能力を発動したアドラスは身体強化が不可能になる。
というデメリットがあったのは予想外だったが。
「今までの旅路で体は鍛えている。お互い魔力は纏っていないが、今の俺なら…いける!!」
もう一度鳩尾を蹴り飛ばし、家に衝突させる。
「あ゛………ァァァァ!!」
痛みに苦しみながら、アドラスはケイを強く睨む。憎しみだけに染まった哀しき男の目だった。
「燃焼……!!!ドライヴ…!!」
睨みを効かせながら、アドラスは叫ぶ。
「お前も!!ドライヴも!!!全部殺して…!!
父様への愛は…俺がァ!!!」
息切れをしながら、アドラスは怒りをぶつけている。
何故!?そう言いたげな目だ。
「それが……犠牲を出して良い理由にはならない」
先程、家の台所から包丁を取り出しておいた。
それに魔力を込めて、奴へと投げる。
全身に雷を纏い、正面から攻略する。
奴は完全に[迎撃]体制───
だが、ここで予想外。
「何ッ!?」
ナイフがアドラスの胸に刺さる。
動揺した奴を見逃さない。
「[燃焼・斬]」
雷と魔力を合わせた斬撃で、奴の右腕を切断した。
上に飛んだ腕からは血飛沫が飛びケイとアドラスの顔にかかる。
(くそ…!このナイフ、魔力が消えてやがる…!)
アドラスは地面に倒れた。
「クソォォ…!なんでだ……!!」
自分を見下ろすケイに、一段と強く・鋭く睨みつけるアドラスにはある記憶が流れ込んで来た。
────[時間はアドラスの過去に変わる]────
兄は優秀だった。
兄と言っても、お互い血が繋がっているわけでも種族が同じという訳でもない。
気まぐれで作られた兄弟。
父様にも出来なかった[燃焼]という技術を編み出し、六人兄弟の中で最強となった兄……ドライヴとは違い俺の強さは真ん中。
上から数えようと下から数えようとも変わらない。
兄も弟達も父からの愛を受けている……!
俺は、父からの唯一の愛。それは今でも覚えている。
俺と似ている。そう言って頭を撫でてくれたくらいだった。
────────[時間は戻る]─────────
「まだ……だ……まだ!!」
大量の出血と痛みで、動ける気配もないアドラスをただ見下ろす。
止めを刺そうと思ったが、一瞬躊躇う。
父への依存、兄弟の嫉妬で構成された彼にどう言う感情を抱けばいいか分からなくなった。
その隙をつき、アドラスは最後の賭けに出る。
「死ぬ前に……こいつを…!!!」
「!!」
魔力の高まり。
まさか……自爆───!!
(しまっ!)
防御の姿勢を取ったが、痛みも衝撃も無かった。
「………?」
するとアドラスは驚愕の表情。何が起きたのか分かっていない。何かしたのか─?そう言いたげな顔だ。
「何故だ……なぜなぜなぜなぜなぜなぜぇ!!!!」
息を切らして、今も出血が止まっていない。
もう……何も出来ないだろう。
「……アドラス…悩んでばかりの俺だが、一つだけ言える事がある。俺は殺意以外に、お前を止めたかったのかも知れない」
ケイは最後にそう言い残し後を去る。アドラスの返事は期待していなかった。
「………ケイ・タケダ……俺は……なんだったのだ…」
残念か…誰の眼中になかった俺を見た男。
父様………すみません。
体はまだ動く。だがこれで…終わりだ。
すると後ろから足音が聞こえる。
「よぉ……アドラス」
「ドライヴ…!?」
鎖に繋げたはず、あれは俺が死ぬまで消えない筈じゃ…
ドライヴは突然アドラスの左腕を切断。
「ガァァァァ………!」
体を支えられずにうつ伏せで倒れた。
「体から魔力もれてんじゃねぇか。そりゃあ魔力不足で自爆なんて出来ねぇな」
馬鹿にする様に笑ったドライヴは、アドラスの髪を掴む。
「自身の鍛錬を重ねておけば良かったのに」
すると、剣に電荷を溜め始める。アドラスが見たドライヴの表情は残虐に満ちたものだった。
「兄弟。だろ?」
今更命乞いをするつもりはない。だが、こいつに殺されるのは…!!
「じゃあな。半端野郎」
憎しみと怒り。その両方を出すために、口を開こうとしたが────
その前に、ドライヴの雷でアドラスは焼き殺された。
どうでも良いと言わんばかりの、呆れた声色でドライヴは語る。
「技術不足。それだけだ」
そう呟き、裏社会への入り口へと向かった。
怨恨を極めた凡人。哀れに死す───




