第39話 異変
[視点はハウ。おおよそケイが裏社会突入辺り]
現在ハウとレノアは街異変を調べているのだが、あまり進展はない。
全ての街を回ろうかと提案したハウはレノアの異変に気付いた。
「ケイ君大丈夫かな…?」
「レノア。それを言うのは今ので三十七回目だ。参謀の事だ、問題ないさ」
的確な数字を出すハウのツッコミにレノアはやっと冷静になる。
………冷静になるのも二十四回目だが。
そんな事より、今重要なのは噂さえも聞かないと言う事。
冒険者の失踪が相次いだ筈なのに、この街の人達は話の種にもしていない。
触れないようにしてる為なのか……いや、それでもおかしいと思うのだが………
何がおかしい。
先程から住民に失踪の事を聞いても話題を逸らされたり、酷い時には無視して会話を続けてくる場合もある。
「一体どうして……」
呟くとレノアは奥の方へと指を刺す。
「ハウ君!!あそこに!!」
二人が見たものは、住民の人達がそこに集まり空に向けて何かを祈っている。
その顔に光も希望もない。
異様な光景だ、少し動揺しつつもハウはレノアに撤退を促す。
「レノア!!ログロの方へと戻るぞ…!この街…何かがおかしい!!」
二人は急いでログロ達へと合流を目指した。
───────[視点はリサに代わる]──────
[ハウと同時刻]
リサとザルツは貴族達の社交界へと侵入。
共に、ロルナとイーリスという偽名を用いて、貴族の一員として参加している。
長方形型の内装、座席は角側を選び全員を観察できる様にした。
現在観察中の二人。
「ザルツ先輩。怪しい人いる?」
小声で話しかける。正直大音量で音楽が流れている為、多少は声を上げても聞かれる心配はない。
「……全部怪しいかな」
リサとザルツは苦笑した。
魔力の揺らぎが玄人のコントロールか素人の脆さか…神の四天王本人かが見分けが付かない。
気配はどう足掻いても誤魔化しようがない為、魔物か人間かの区別は付くだろうが………
「あまり動きがないのも厄介だ」
紳士淑女の踊りをただ見ているだけじゃ判断出来ない。
中央に行きながら怪しまれずに観察するには……
「ロルナ。一緒にどう?」
「お手並み拝見」
二人は立ち上がり、ダンスをしながら観察する事にした。
「どう?」
リサも目を凝らしてみているがやはり分からない。
一応ザルツにも聞いてみるが返事は同じだった。
「焦ってるだろ、ロルナ」
こうして調べても何も分からない。リサの顔に焦りが出てくる。
「ケイはあそこで命を賭けているというのに私達は踊るだけ……」
罪悪感と、焦燥がリサを襲い続けていた。
「落ち着いて。待っていれば確実に相手からボロを出す」
ザルツがそう促すと、リサは軽く深呼吸をした。
「うん……ありがと」
冷静さを取り戻したリサは貴族達を鋭く睨みつつ、
ダンスを完璧に行なった。
いつ相手がボロを出すか、逆にこっちが出してしまうかを意識しながらのダンスに面白さも楽しさもない。
数分後に同じ座席へと戻る。
今は死角がないから背後を取られる心配はないが、神の四天王に悟られ何もできずに殺されるパターンが一番恐ろしい。
「君達」
すると男が話しかけてきた、容姿端麗で、黒い髪に合った、黒いスーツを纏っている。
貴族……紳士風なこの男。特に異変は感じないが、二人は警戒しながら話す事にした。
「私達に何か用?」
お上品に返す。あまりこう言うものは得意ではないリサだが、出来る限りの努力はする。
「いやはや失敬。お二人の舞を見てつい声を掛けたくなってしまったんだ、あまりにも流麗だったものでな」
ははは、と軽く笑いながら二人を褒めちぎる。
「そう言えば、もう少しパーティのメインディッシュが始まる。貴殿らも楽しんでいくといい」
「メインディッシュ?」
ザルツが不思議そうに聞くと、男はさも意外そうに返す。
「ご存知ないのですか??このパーティの主催が何やら特別なものを準備したらしいですよ?」
よく分からないがこれはチャンスだ。
メインディッシュに釘付けになった人達をじっくり観察すれば見えてくるものもあるかもしれない。
「らしい?もしかして主催の関係者?」
リサは思いついた事を速攻で口にする。
すると男は豪快に笑った。
「ハッハッ…!私も君達と一緒だよ」
ザルツの肩を軽く叩くと、男はどこかへ行ってしまった。
「……………一緒?」
一瞬聞き逃しそうになったザルツだが、違和感が強く残った。
もしかして狙いが……それを知って黙っているなら僕らと同じ立場…?
「ザルツ先輩」
「あぁ、同じこと考えてるだろうけど確かめるかい?」
────奴は危険だ。
考えすぎなら良いのだが、そうじゃなかった場合奴に弱みを握られている。
彼の動向に気を付けつつ、来るメインディッシュに備える二人となった。
───────[視点はケイに戻る]───────
裏社会最悪の祭典はもう少しで終わりを迎える。
ロズ、ストライド、ケイの三組を超えられる人間はいない。
ただ、そんな彼らに勝負を挑む人間がいた。
「よぉ…ケイ・タケダ」
男の声。明らかに知り合いの声じゃない。
「!!」
すぐさま背後を向き、臨戦体制。敵は……いない?
後ろからストライドの声が聞こえる。
「ケイさん!!上です!!」
上を向くと男はケイの頭を掴み、自分ごとケイを転移させた。
慌ててストライドがそこに向かうがケイの姿はない。
(転移…したのか?)
向かった先は恐らく───上。
「おい…!何があった?何故ケイがいない」
ケイの状況を見てなかったロズが聞くと、ストライドは答える。
「上に行きましょう!!恐らくケイさんはそこに飛ばされてしまった!!」
声は荒げたストライドをロズが落ち着けと諭し、冷静に判断を下す。
「……分かった。残りの有象無象は部下に任せて私達は上に──」
ロズの声を遮る様に人が流れ込んできた。
「ストライド……ロズ……抹殺する…!!」
奴に似て否なるものが四人…。
その表情は人とは形容し難く、光も色彩も失われた様だった。
あくまで人型に改造・洗脳された魔物なのだろう。
言葉もだんだん不明瞭になって行く。
「……気配が人じゃない」
ストライドも気づいた。彼らも人型に改造された魔物…。
(ケイさんの言うドライヴという男ではない…言葉の強さと裏腹に弱い。急いで倒さなければ…!)
(私の想定より早く量産化が進んでやがったな。ケイに挑んだあいつは更に強いタイプか)
ある程度の思考を挟んだストライドとロズ。
今やることは一つ、こいつらの抹殺だ。
[上空]
ケイと男は彼方…空中に転移していた。
「初めまして。ケイ君!」
気味の悪い笑みを浮かべ、大声で挨拶をしたこの男。
「お前がアドラスか!」
本当の主催者、あんなクズの集まりを作った張本人!!
ケイの頭には奴隷の姉弟が浮かんだ。
骨が見えるまで痩せた弟が見ず知らずの男に頭を下げて………
(この男を止める……これ以上伸ばしにはできない)
手の届く範囲で、罪なき人を取りこぼしたりはしない…!
現在地面に向かってケイを叩きつけようとしているアドラスだが……このまま行けると思っているのなら、それは甘く見過ぎである。
「[燃焼]」
雷速の拳で顔を弾き、ケイは自身の体を捻らせアドラスの頭を掴む。
これによって攻防の立場が逆転する。
アドラスの顔はケイの燃焼を見て驚愕に満ちている。
「………その力…使うんじゃねぇよ」
(燃焼の事か…?それともドライヴの…!)
恨めしげに呟いたその意味を考えたが、今は地面に衝突寸前。攻撃に集中する。
攻撃は成功。
地面には大きなクレーターが出来た。
ケイの目には殺意。それだけだ。
アドラスを地面に叩きつけたが大したダメージはなし。出血どころか怪我もない。
場所は裏社会の入り口近く、南西部の城付近。
幸いここらに人はいなかった。
慌てる必要はない、ここで………やる。
「何故お前が……兄さんの技を使っているんだ?」
怒りに染まりケイを凝視している、大方奴の方が嫌いなのだろう。
「いい技でね、真似させてもらったよ」
「真似だぁ…?まるで……あいつが正しいとでも…?」
正しい?なんの事だと首を傾げたケイ。
だが、彼は完全に自分の世界に入ってしまっている。
「一つ。聞かせろ」
「あぁ?」
「裏社会のシステム。それによって犠牲となった人々……それについてお前はどう思っているんだ?」
出来る限り、怒りを抑えて質問する。
どんな理由であれ、酌量などない。
「一つだけ言おう。どうでもいい…とね」
揶揄う事もなく、ただ淡々と返した。
予想通りの返事にもうこれ以上の会話は無駄だ。
「………そうか」
奴隷達は逃げ出せたとはいえ、怒りと悔しさは拭えないだろう。
俺が背負う。
手甲剣を作り、全身に雷を纏う。
それに応えるようにアドラスも魔力を解放する。
奴隷達の怒りをこいつにぶつけてやる。
「[燃焼]で引導を渡してやる」
「良いだろう…。さっさと殺るぞ!!」
同時に地を蹴り、電光が眩しく輝いた。
最初のケイは自分の分身として書いていたのですが、気がついたら[ケイ]という立派なキャラになり、私の面影などゼロになってしまいました………(これで良い)
なんだよ!あいつ!!どんどん主人公になるじゃん!!




