第37話 勧善懲悪
呆気なく捕まったケイ。連れて行かれた所はロズ・シルバーの所だった。
今、誤解を解けていないのが致命的だ。
眠らされてから数時間。
ゆっくりとケイは目を覚ました。
(………ここは……あぁクソ。眠らされたんだった)
確実に監禁されている。殺されていないだけマシだと考え、周囲の状況を確認する。
(牢屋の中には俺だけ、使える物なし。外には守衛一人)
万事休す、脱出は不可能だと悟る。だが、ロズと交渉さえできればそれでいい。
殺されなければそれでいい…筈だ。
そしていま重要なのは───
「体が…あつい……」
全身がウズウズして縛り付けられているが、落ち着かず足を動かすくらいしか気を紛らわす方法はない。
本当だったらこんな殺風景の牢屋に活路を見出せたのかもしれないが、頭が良く働かない。
呼吸がうまく出来ない、と言うか思考も……
「なにがおきて……」
状況を上手く飲み込めない。
暫くした後、守衛は突然立ち上がり奥に礼をした。
こんな状況で来る人間は一人しかいない。
「さて、初めましてだな。ケイ・タケダ?」
「あなたが……ロズ・シルバー…か」
精一杯睨むが彼女は笑みを崩さずにケイの顔に触れる。
「そんな怖い目で睨まれても立場を悪くするだけだぞ」
「こんな状況で……立ち向かう以外の選択肢……あるかよ……!!」
これから何をされるかは分からない。
だが、もし彼女が信用できる人物なら根性を見せる事が大切だと思う。
「ほ〜う、なかなか骨のある男。私の特製の薬をそこそこ盛られても意思を保ち虚勢だけでも張れるとはね」
少しの沈黙の後、ロズは本題へと入る。
「お前が殺されてないのは、お前の素性を知らないからな。さっさと答えろ」
後ろには様々な拷問器具、もともと拷問される気はない。
さっさと目的を話す。
「ログロさんに……あんたが大事な弟子って聞いたんでな……協力を持ちかけようと思ってここまで来た」
するとロズは目を大きく見開いた。まだ安心できる状況では全くないが安心してしまったケイがいる。
ロズを目を見続ける。
自分は味方だと訴えるにはこれしかない。
「…………わかった。お前の目を信用しよう」
軽いため息と共に、圧の強い目を向ける。
「本当に良いんですか?まだ確証はないんじゃ?」
不利になるかも知れないが言わずにはいられなかった。
「良いんだよ。解毒剤持ってこい」
後ろの守衛を命令して数秒後、持ってきてくれたので迷わず飲んだ。
彼女の勘に助けられたケイ。ここに来た経緯を軽く説明した。
侵入任務でここに来たのは良いものの、上手く身動き出来ず困っていたらしい。仲間達もギルドから選ばれた精鋭達。
驚いたのはあの居酒屋の酔っぱらいがまさかロズ側の人間だった事だ。
ロズ……彼女はなかなかのやり手だ。
「さて、ここで話そうか」
和室の様な場所で、お互い座って話す。
「私に持ちかけたって事は先生達も特に進展がなかったって事でいい?」
「はい、先生達もって事はつまりそっちも?」
ロズはため息を吐く。上手く行ってない様子だ。
「まぁな。で、間も無くク祭典が始まる。もう裏社会に用はない。最後にクズ諸共ぶっ壊して終わろうとね」
どこに潜ませていたのか、酒を直で飲むロズを横目にケイは知っている情報を話した。
「神の四天王……?成程理解したわ」
本当か?
「ここに気配が人間じゃない奴とかいますか?」
知りたいのは改造魔物の情報だ、ここにドライヴが来ればクズも奴隷も殺されるかも知れない。
「ここに人間がいるとでも?」
それは確かにそうだ。
「え〜っと、魔物の気配に近い奴が──」
ケイの顔を軽く撫で、ロズは語る。
「あぁいる…!祭典のリーダー。変な気配だなぁと思ってたんだよ、魔物の気配か!」
合点がいったような表情だ。
「そいつは名乗りましたか??ドライヴと」
「違う。彼はアドラスと名乗りこの社会を牛耳ってる」
「なら、狙うならそいつですね」
ドライヴと決着を着けるのはここでも良いが人は確実に助けたい。
「私達は中立を貫いている。それが崩れれば大騒ぎだろうな。あぁそれと……」
既にワクワクしている彼女はケイに命じる前にある事を聞く。
「お前…人を殺した事ないな?」
ロズは見定めるようにケイを見た。たった短い時間で
彼女は分かった。この少年は人を殺した事がない。
数秒の間があった。奴隷達を助ける、それだと交戦になってしまうこの状況……と迷いが走ったケイに助け舟を出した。
「……逃げ道はある。無理強いは──」
「そしたら、誰が彼ら助けるんですか?ロズさん達は祭典へ喧嘩を売りに行くなら…」
ケイの手は震えている。殺したくないという意思か、今ここにいる裏社会の連中に成り下がりたくないのか。多分どっちもだ。
学園試験の時確かに、人を切ったり刺したりしていた。殺すなというルールの元戦ったあの時とは遥かに違う。
「クズ共は祭典へ一極集中するだろうから後で助けられるが……それでは納得しないのだろう?」
震えながらも息を吐き、覚悟をする。
「俺が地下三階に行って彼らを救出します」
「…………すまない……さて、作戦を伝える」
[数分後]
作戦内容としてロズ達が暴れている間、警備はロズ達反逆者に向けられる。
(落ち着け。絶対に助けるんだ)
交戦開始の連絡を受けたケイは奴隷達を助ける為、B3へ向かう。
エレベーターで上に上がっている間、ケイはある事を思い出す。
────あくまで警備は私達に集中しているだけであって最低限の警備はいる。忘れんなよ。
恐怖はある。逃げる気はない。
B3へ到着。
人の気配が一切しないこの場所で、作戦開始だ。
地図は入手済み。
二階建ての建築で、一階は守衛専用だが誰もいない。
みんな下に行ったのだろう。
用があるのは二階だ
二階に入ると、そこにあるのは監獄という言葉が似合う地獄とも言える風景。
閉じ込められているのも人で、これを作り出したのも人だ。
その中には子供だったり、身籠った女性、ボロボロに暴力を振るわれた男性など阿鼻叫喚だ。
(こんな荒唐無稽な絵面、夢だと思いたい)
これがケイ達の世界でもあったのだから胸糞が悪い。
「必ず全員助けます!!だから、これから先誰が来ても静かにお願いします!」
返事はない。ケイの言葉を理解した。と言うよりも希望も何も持っていないようだ。
「たすけて……」
隣から子供の声、見た感じまだ幼い。
「おねえちゃんが、おとこの人達につれてかれて…
おねがいします……せめておねえちゃんだけでも……
たずげでぐだざい!!」
泣きながら土下座。この少年の体は痩せ細っていて目に光はない。
こんな子供が自分の命より大事な人を……
「分かった。約束する」
少年の目に少しだけ光が宿る。
奥に進むと、男と女の喧騒が聞こえる。
「いや!!!離して……!!」
「この女……奴隷はご主人様の言う事をちゃんと聞け!!」
男は無理矢理彼女の腕を掴み、服を脱がそうとしていた。
「新しく入った奴隷は生意気だから困るぜ」
完全に服を脱がす刹那。男は声も出さずに倒れる。
女の目に映ったものは手を震わせ、哀しい顔をしたケイだった。
「大丈夫ですか?」
「え?あ…はい」
「あなたの弟が頭を下げてまで僕にお願いしてきたんですよ、良い弟さんですね」
できる限り、精一杯の笑みを彼女に向ける。
「すぐさま上に向かって下さい。そうすれば保護されると思うので」
後もう少しでロズの部下が保護にあたる為の準備に向かうらしい。
「……ありがとうございます…!」
必死に何度も頭を下げて、先程の牢屋に戻った。
数分も経たないうちにロズの部下が先導し、元奴隷達を次々救出し、上に向かった。
それを見届けた後。ケイは人だったもの暫く見続けた───
もう、後戻りは出来ない。
私(理性)「ちょっとエッチにしようかな〜」
私(本能)「ダメ〜(頭を叩く)」
という事で最初期の原稿より抑え気味の内容になりました。




