第35話 到着。カミリーズ
「こんなタコ、苦戦するまでもありません。皆さんささっと終わらせましょう」
ストライドが不敵な笑みを浮かべながら言う。
その言葉にログロは軽く笑う。
一瞬でいつもの冷静面に戻り指示を下す。
「リサ・セイト達はレノア・マフォードの護衛だ!!
クラーケンは俺たちがやる!!」
「オレとストライドはお前らの援護だ、[水魔法]」
水球を飛ばし、タコと同じ八本の触手の一つを破壊する。
ストライドも一本破壊。
残り六本。
ケイとログロは巨大な触手に飛び移り応戦。
目指すは頭。そこをぶち抜けば勝てる──のだが。
「チッ」
「クソ…!」
だが、近づけない。
触手はすぐ回復し、一切の追従を許してはくれない。
クラーケンの攻撃はブレイ達の援護によってなんとかなってるがこのままじゃ押し切られる。
「どうすれば……!」
少しケイが焦った様に溢した。
「落ち着け。援護が間に合っている以上、長引かせなければいい…」
流石はベテラン。あまりの冷静さに一周回って冷静になったケイは覚悟を決める。
「ログロさん、俺が[燃焼]で奴に風穴を開けます。サポートお願いしても良いですか?」
「それは構わないが…何をすれば良い?」
「一瞬、ほんの一瞬で良いんであの触手を引きつけて下さい。あのタコの頭をぶち抜くんで!」
ログロは即座に否定しようとしたが、ケイの不安ながらも覚悟が決まった表情に負けた。
「……………わかった。やってみろ…!」
背中を叩くとケイは船に戻るフェイントをした。
即ちそれは攻撃が全てログロへと向かう事を意味する。
ログロはブレイ達に[援護は不要]とジェスチャーで止め、剣を二つ作る。
「……ッ!」
案の定、八本全ての触手がログロを囲うが全て切り伏せた。
本来ならこのまま頭に向かっていけば良いのだが、再生の速さによってそれは塞がれていたこの状況。
だがそれをする者はいない。
現に今、再生しようとする触手はログロの方を見ている。
「やれ…!ケイ・タケダ!!」
息を吐き、不要なものを吐き出す。
「[燃焼]」
昨夜にて身につけた足だけ燃焼。
攻撃に転用できない代わりに減速はない。
クラーケンもそれに気づいたのか触手をケイの方に向けようとするが、遅い。
(いける────)
と思ったのも束の間、アクシデント。
「は…?」
爪が……折れた。
(なんで…?)
爪の消失による隙を見逃さず、触手はケイを海へと叩き落とす。
「ログロ!!」
ブレイが叫ぶとログロも正気に戻った。
ケイの方に意識が少しだけ行ったが対応できる。
「チッ…!邪魔だ!!」
なんとか躱し船へと戻る。
なんとかしようと考えていたログロ達とは違う所で、ケイの心は少しだけ揺れていた。
海へと沈んだケイ。
全身燃焼。つまり足だけに雷を纏うのではなく、全身に纏う燃焼を使うのを躊躇っていた。
(このまま、燃焼を使って失敗したら……)
初めて使った際は二回が限界。魔力総量を上げる鍛錬をやってきたが、実感はない。
失敗したら……死ぬ。
(………そう言えばレノアさんが言ってたな)
──無理するのは私がいる時だけ…!
自信満々に宣言した彼女の言葉はどんな状態になっても治すという覚悟の表れを感じた。
(みんな俺の事を考えてくれているのに俺だけ……自分の事しか考えていない…!)
自分を信じることはできない。けど、仲間は信じてくれる。それを信じる。
一発でも二発でも、あのクラーケンに一撃を叩きつけなきゃ気が済まない。
狙うは頭。
───それで充分だ。
([燃焼])
[同時刻、ログロ達は]
クラーケンの攻撃を防いではいるが、このままじゃいずれなぶり殺しにされる。
「ログロさん、ここは私が先制します。皆さんはその後を──」
「いや、必要ない」
ストライドはログロの顔を見て何故か安心した。
「本来俺達は対海に向いてないんだ、適材適所。向いてる奴に託すのが安心だ」
海上に電撃、落雷ではなく下から上へと向かう雷。
「ケイ君!!」
レノアの声が聞こえたのは不明だが、彼は軽く彼女を一瞥し、敵に目を向ける。
「二発目」
再び燃焼を使用。
あれほど厄介だった触手を粉々にした。
いつもならここで限界がきた。いつもなら。
「三発目!」
再生しようとした触手を無視。
そのまま頭に飛び掛かり─────風穴を開けた。
「やるなぁ!!参謀!!」
ハウ、ザルツ、リサが嬉しそうにガッツポーズ。
彼の短く過酷な魔力鍛錬は無駄ではなかった。
安心した表情をしたレノア。
その後ろには…
「やっ、レノアさん」
「うわっ!!ケイ君!?」
驚いて尻もちを着いたレノア。
無理もない、先程まで上空にいたのに船の後ろまで…
「今ので四発目、体はまだ大丈夫だけど…一応診てもらっていい?(後は二発はいけそうか…?)」
最近のケイには見られなかった笑顔。そのボロボロな体を見て、ちゃんと無茶をしたな〜とため息を吐きつつ何処か安心したレノアなのであった。
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こうして湖を越え、難所という難所は攻略した。
ストライドは気になった事があったのか、ケイと話していた。
「そう言えばケイさん。その……手の甲から出してるその爪。辞めたんですか?というか聞く機会が無かったので今聞きますね、それ……痛くないんですか?」
「痛くは無いんですよね〜あくまで肌から生やす感覚と言うか」
「なんで爪から剣に変えたんだ?」
ハウも会話に混ざる。余程に気になったのだろう。
「燃焼を発動させる前、強爪が作れなくてなんでも良いからなんかでろーって念じたらこの剣が出来たというか…」
実のところこの手甲剣、何故出来たかは不明。
あの爪もそうだがケイの武器は全て不思議だ。
「左で出すと右が消える、右で出すと左が消える…」
このよく分からない法則も、これの謎を解く一つなんだろうか……?
「痛く無いなら良いんです。私が気になったのはそこだけなので」
彼曰く、痛みを受け入れ戦っているならすぐ辞めさせたとの事。
ログロとは全く違うクールさを持つ彼だが内面の熱さは彼以上かもしれない。
こうして旅を続けること約二日。
ついに見えた、城塞都市兼冒険者の街カミリーズ。
その街は地図で見ると円形に囲まれた高い壁によって出来ている。
「やっとついたぁ……!!」
ブレイはもうヘトヘトだ。
ログロはここから先の立ち回りで大きく変わると全員に言う。
「さて、分かっていると思うがここから先が本番だ。
カミリーズにはケイ・タケダの情報によると、かなりの使い手が最高でも二人」
「二人?」
リサが首を傾げる。
「神の四天王、ドライヴ、最低でも二人だ」
成程!!とリサは納得した。これでもちゃんと納得している。
「俺、ブレイ、ストライドは冒険者達にも広く知れ渡っている。その為街中を調べるのはレノア・マフォード、ケイ・タケダ、ハウ・ゲレーロだ」
今度はザルツもリサと一緒に首を傾げた。
彼の役割は…
「ザルツ・シッヴァカーネ、リサ・セイトはここから街の北部に貴族達の社交会がある。そこに侵入してもらいたい」
ログロの準備は抜かりなかった。
貴族っぽい服装と、身分を予め作っておいてくれた。
二人の反対意見をガン無視しているが。
「セイト家、シッヴァカーネ家は正義という文字が似合う家系だからな、貴族達が今回の事件の元凶なら疑われるマネはしたく無い」
適当な所で着替えて侵入して情報収集してこい……との事。
「すまない。俺達は少し身を隠すのに集中する。だから俺達の為にケイ・タケダには一つやって欲しいことがある」
申し訳なさそうにログロはケイの肩を叩く。
「この街の裏社会に侵入してある奴を仲間にして欲しい。安心しろ、悪い奴ではない……筈だ」
「全然安心できない!!」
「そいつは俺の弟子だ。裏社会に侵入させたらまさかそこのボスになっているのは予想外だった」
鋭い舌打ちをログロはした。聞くとその弟子はかなりデキルらしい。
かなりの優秀で、頭ならかなり良いとの事。
ある程度の作戦を詰めた後、各々が目的を持ち第二都市カミリーズへと歩み出した。
ここから先はどんどん進もうと思います。
視点が少しごちゃごちゃになるので後書きには補足を入れつつやって行きます。
簡単に説明しろや!!←その通りで御座います…!




