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半端者の戦い方  作者: 柑橘系
第五章 冒険編
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第32話 レターという男。

「…………………」

滝の中で意識を集中させる事で体と心の調和を志す、このレターという男。


この男はケイと出会い、戦いのイロハを叩き込んだ。

ケイにとって彼は無愛想だが面倒見の良い男として映っていた。


彼は違う。本人は愛情を注いでやるべきだったと毎日後悔していた。


何人もの転移・転生者が彼へ弟子入り。ただ、力に溺れたり、そもそもついていけずにどこかで野垂れ死ぬものが大半。


生き残った奴も冒険者として名を馳せる事なく死んだ。


疲れたのだ。不用意に力を持たせ死んでいく弟子を育てるのは。


だが、見捨てたくはなかった。何も知らない世界に来て、何も出来ないまま無残に殺されるのか?


雑念を消そうとしたら雑念しか浮かばないカオスな脳内を吐き出す様にため息を吐く。


「…………行くか」


今日は唯一の転移・転生者ではない弟子で、セイト学園で教鞭を取るカマルが家に来る。


「家で……待とう」

後悔するのも人生だ。自分がどれだけ間違っていたかは死後神が決める。


森の中にひっそりと佇む静かな木の家。

ゆっくりと足音が聞こえる。


レターは刀を構え、玄関横に構える。


ゆっくりと扉を開けた男に斬りかかるともう一人の男もそれを見据えていたのか、相手の剣とレターの刀がぶつかり合い、心地良い太刀音を奏でた。


男は嫌な笑みを浮かべ、二歩三歩下がった後、近くの木の上に乗る。


「誰だ」

戦闘モードに切り替わったレターに容赦はない。

こいつがカマルと鉢合わせていない事を願う。


そのままレターを見下ろし続け、男は名乗り始めた。


「ドライヴ。俺様の名だ」


(誰だよまじで)「質問を変えよう。どこの手先だ」


ドライヴは顎に手を置き、考え出した。その仕草の一つ一つが気に食わない。


神の四天王(ボス)がここらに強い奴がいる──ってね」

完成に戦闘モードだ。できる事なら帰って頂きたかったが、しょうがない。


「最後の質問だ、ここまで至るまでに人は殺したか」


「?特にね」


「そうか……それなら──心置きなくやれる。遺言は決めておけ、俺はもう決めた。」

刀を再び作りレターも臨戦態勢。人一人寄りつかない小さな森で、二人の男が剣を交える。


「いいねぇ…![燃焼]」

ドライヴは木々を乗り越え、居場所を悟らせないよう雷となり、動く。


ただレターは至極冷静。


それで動じる程……甘くはない。


「まずは……!!一撃目ェ!!!」

背後に接近。


(取っ───)

本来そこで、大抵の人間は殺されるだろう。

レターを除いて。だが。


「俺の背後がそんなに重要か?」

一瞬で振り向きドライヴの剣を弾き飛ばす。

二撃目は避けられたが、問題なし。


「……やるな。(まさかスピードでの戦い方がこんな形で封じられるとはな)」

ドライヴが注目したのはその対応速度だった。


「そこに意識が言ったなら、お前はまともな戦士らしい」

奴の考えを見透かした様に言ったレターだったが、図星を突かれた事を顔に出さすに飄々とする。


「選ばれた才は魔法使いのほうだったけどね」


「そう言うな、武器で戦う事に愉悦や責任や誇りを感じれば誰でも戦士だ。俺もそうだった。剣に楽しさを見出して戦い名を残した所で与えられる称号は英雄ではなくクズという蔑称」


語りたくなさそうにレターは言っているが、その真意にある後悔や苛立ちを感じ取っていた。


「何故クズって言われてるかわかるか?」


「……………」


「俺が調子に乗っていたからだ。力を求め溺れた。

人を見下し、自分が世界の中心でいるという驕りによる力の誇示。あれほどのクズを俺は今まで見た事がない」

気づいた頃には友も親も全員いなくなっていた。

気に食わないという理由で男も女も殴った。遊び、弄んだ。


様々な転移・転生者を弟子にした。

そいつらも似た様な末路を辿った奴は少なからずいた。


そう言う欲深くて傲慢な奴ほど生き残り、誰かのために戦える奴ほど先に死ぬ。

結果、弟子は全員早死。


そんなレターはもう覚悟が決まった。向き合い続ける。クズな自分と。

もう二度と、楽な方に逃げない様に。


「俺は死ぬまで苦しみ続ける」

刀の光沢が恐ろしく光る。


「だからこそ、俺の墓場はここじゃない」

────────────────────────

[十分経過]


木々を移動しながら、剣と刀、意思と意地。

二つがぶつかる。


(いいね…!強い!!ここで会えるとは言われていた

がまさかここまでだとは!)

狼の魔物。ウルフに神の四天王が理性を植えつけた長男ドライヴ。


戦いに明け暮れ本能のままに敵を殺す獣。

実際、神の四天王に勝負を挑んだが結果は惨敗。


「本能はストッパー。理性なくして強さはなし!!

俺は理性を獲得したんだ!」

悦楽。それに浸っている。感情を解放しすぎるがあまり逆に冷静になる()()それが奴だ。


(だからこそ、認めろ。今この場での獲物は俺。狩人(レター)が次の手を打つ前に─────刺す!!)


先程の一撃をやり返す様に、背後に周り一撃を繰り出そうとしたレターを背面ノールックで対応。


「!?」

対応方法・速度に驚いたレターだがブレずに攻撃を続けたが回避と攻撃の両立は失敗。


ドライヴの背、レターの顔に擦り傷が出来る。


「……理性…ね」


両者は同時に理解する。


このままじゃ決着がつかない。


だからと言ってこのまま攻めれば…


レターはカウンター。


ドライヴの速度。


タイミングさえ合えばどちらも一撃で仕留められる。


やる事は至ってシンプル。


「もう少し楽しんでいきたかったが……早めに終わらそう」

時計を見つめ、軽くため息をついたドライヴは早めに切り上げ逃亡──ではなく、早々に決着をつける事を選んだ。


「奇遇だ、俺も早めに終わらしたい」


体力も魔力も余裕がある二人。

ここで全てを出し切る。


「[燃焼]」

「こい」


瞬きは許されない。


最初の展開と同じく、ドライヴは雷魔法を()()に纏い閃光の如く木々を乗り越えながら戦う。


ただ、先程の違うのはレターがそれに乗っかった。


「面白そうだからなぁ!!俺も混ぜろよ」

魔力配分を足に全配分。ドライヴ程ではないが、かなり速い。


ドライヴとレターは目が合う。

互いが互いに突っ込めと言っている様な感じがした。


(今しか──いや、待て奴の剣は…?)

そうドライヴが突撃する瞬間、胸部に激痛が走る。


「お前の理性はそこまでだ」

レターの一言と共に、ドライヴは地に落ちる。


これはレターの能力だ。

空間に穴をあけ、好きなタイミングで突き刺す事で

指定した所に剣が移動する。


「俺は勝てない勝負に挑む程、脳筋じゃなくてね」

昔の彼ならそうしたかもしれない。

だが、勝つ事を意識したレターに自らを試す事も相手と通じ合う事もしない。


奇襲+臓器近くの攻撃に満身創痍になってしまったドライヴの心臓は止まる寸前。


「お前気配が人間じゃないな。魔物の気配、大方誰かに改造されたか」

止めを刺す。違和感が一つあった。


「(…?)こいつの体が震えて──」

刹那。利き腕である右腕がと宙を舞った。


思考に回ったレターが素早く止めをさせなかった。

そんな──ミスと言うには些細な僅かな綻び。


「ッ!?」

すぐさま距離を置く、


その判断は間違いではない。


ただ相手が速いだけだ。


今度は腕だけじゃない、肩から脇にかけ深い一撃。血飛沫がレターの視界を覆った。


「…………はぁ……」

出たのはため息。出し尽くした快感と言うのは基本勝ったから感じるもの、負けてしまった以上本気を出そうが出さまいが変わらない。


「かみなりで……心臓マッサージを…しやがった…のか…」

息が絶える瞬間に出るギリギリの細々とした声。

ドライヴは勝ちという快感を味わっている筈なのにそれを表情に出していない。


「それ+(プラス)雷の放出。不本意だが直感でやった以上、もう再現は出来ないな」

理性理性言ってたのが一種のブラフに感じるくらい綱渡りな戦い方をする。


「で、遺言なんだっけ?聞いてあげるよ」

今際の際な男にドライヴはある程度の敬意を示した。

挑発する気も無さそうだ。


「ケイという弟子がいる。そいつに会ったら言っとけ、()()()()()()()()()()()ってな」

嘲る様に笑うとレターは死んだ。

謝罪や感謝よりケイに対する挑発。何故か言いたくなった。


彼の中で、ケイは自分をシンプルに慕っているだろうと思っていた。


背負わすのではなく、乗り越えるべき最後の壁として

今までやったことのない師匠面。


後悔に生きた男。その最後は────


「あぁそう言えば思い出した。お前最初、ここまで至るまでに人は殺したかって聞いたな、殺したぞ。

レター先生〜って言いながら死んだっけ。って聞こえちゃいないか。遺言覚えておくぜ〜」

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