第31話 [燃焼]それは最強の切り札
[数分前]
ゴーレムによって彼方に吹き飛ばされたケイ。
防御、受け身と共に今のケイが出せる全力の防御姿勢だったが、威力はゴーレムが上回った。
(あたま…うっちまったか)
ズキズキと鋭い頭痛。外側も内側もこの痛みが体を支配して動けない。
どうする?
治癒は不可。
魔法を使えば…?
無理。
万事休す──
諦めかけたケイの中に
ある記憶がノアが触れた時の様に
流れ込む。
[場所はネオニィシティ。ザルツが療養中の時]
ケイはザルツがどうやってノアに勝ったのか。
もし話してくれるなら──と聞きたくなった。
自分の本領を解放したザルツの戦い方は、試験で戦った時とは遥かに違うなにかをケイは感じる。
ある言葉。当時は大した印象を抱かなかったが、
今、この瞬間、それを思い出す。
「あの時の感覚…能力以外にも体の何処が燃える…と言うか、あぁいや!心とかそう言う訳じゃなくて!」
「燃える?」
努力派と感覚派の中間にいる様な人間のザルツ。
その言葉は信憑性があった。
燃える感覚───?
「ああ。能力で身体を強化する為、魔力を消費して僕は戦った。そうして最後に上空に打ち上げられた事があったんだ。その時、剣にいつもいつも以上の出力が出たんだ」
「………………」
「それはまるで残った魔力の出涸らしを諦めずにそこから最高の魔力を抽出するような……」
この言葉。そして更にドライヴの技である燃焼。あれは、ハウとの戦いを広い視野で見てやっとわかった。
[時間は今に戻る]
(奴は雷魔法を放出していた。風か雷の魔法が使用可能になる魔石ではない)
昔───と言っても数十年前。雷や風は今よりもっと
簡単に使えた魔法の一つだった。
魔法使いのレベルが今より高かった時代。
当時の魔法使いにとって、他より魔力消費があるよね〜くらいの話。
魔力の性質も今より違った。少々の才も求められる魔法だったが、基本使えた。
故にドライヴは魔力の性質を、昔に合わせる為、自身の魔力と魔力をぶつける事でより良い物を抽出した。
その間は体温が急激に上がる。
ザルツはそれを[燃える感覚]と表現。
無意識でそれを行い火魔法の出力を上げたザルツは次それが出来るか出来ないか。不明だ。
──今。ケイ・タケダはそれを理解した。
多くない魔力総量。それはケイにとって感覚に呑まれない為の最後の砦。
(抽出しろ。魔力の本質…!)
今この瞬間───覚醒する。
「[燃焼]」
雷魔法を放出。速度はドライヴと勝るとも劣らない。
見えたのはゴーレムがザルツとハウを追い詰めているところ。
精神、肉体、今の限界ラインを加味したケイの判断は────
(このまま突撃!!)
ザルツとハウ。二人が見たのは…ゴーレムを蹴り飛ばした、ケイの姿だ。
ゴーレムは大木に打ち付けられ、動かない。
その顔にはヒビがついている。
「ケ──」
ザルツが言い終わる前にハウが止める。
「ザルツ。俺もああ言う本能に身を任せた状態になった事があるから分かる、今は放っておけ。どのみち奴は俺たちとは相性が悪い」
目が覚めた様に動いたゴーレムはケイに……静観を貫いた。スピード重視の戦い方を捨て、カウンターに全てを費やした。
ケイが今取れる最良の判断は、迷わず突進する事。本能でそれを感じた。
自信を雷と化し、ゴーレムに突進。奴はそれを素手で反撃。反応速度も並ではない──が。
突然姿勢を変え、躱した。
今のケイに理性はない。
先程の思考の中には二つ。
避ける。 殺す。
それを実現した。
現にゴーレムはケイの強爪に頭を貫かれ息絶えた。
同時にケイも倒れた。二回しか雷魔法を放出してないが、それだけで魔力が切れた。
要特訓だ。
──────[視点はログロに代わる]──────
[数分前]
ログロ達が戦うゴーレムはケイ達が戦ったのとは違い、スピードこそないが力自慢。
二つのゴーレムには突然の衝撃に弱い事は確かだが、その力のせいで余程意識していない所に攻撃しない限りノーダメージ。
故に、先程は何度も剣を作り、折れる。それを繰り返していた。
ブレイの魔法は完封。
注意を逸らす事しか出来ていない。
「……困ったな」
ログロかブレイ。どちらかが能力を使えば楽に終わるのだが………
(いや、このままじゃ押し切られるな……仕方ない。
使うか)
出来る事なら今の自力で粉々にしたかったがという気持ちがあったが抑える。
すると、ゴーレムの拳をログロは折れた剣で受け止めた。
「根本に全ての魔力を集中すれば…流石になんとかなるか」
そのまま拳を弾き、高く跳躍する。
ゴーレムも飛び、追撃しようとしたが──
「悪いなゴーレムサン!!飛ぶのは禁止だぜ──
水魔法!!」
ブレイのサポート。一度サポートに回った彼を見つけ出し、対応するのは困難だった。
そうして、凄まじい回転数を誇る水球がゴーレムの頭に直撃。跳躍を防ぐ。
「悪いな、ここで死ね。[残刀]」
数秒のラグがあった後、ゴーレムが切断。胴が泣き別れた。
[残刀]
至ってシンプルな能力。
剣が折れた所を中心とした半径四十センチの円に不可視の斬撃を繰り出す。
それは剣が深く折る、もしくは何度も折ることで威力を底上げできる。
本来の使い方は武器破壊用として使われる事が多い能力を、攻撃用として使用している。
故に、ログロの剣は長く───細い。
折れた所で長さは一般的な包丁くらいの長さになり問題ない。
胴体に鋭い一撃がゴーレムを襲い両断。
不可視+威力ありという、不意打ちに弱いゴーレム特攻の能力となっている。
「私も手を出そうかとムズムズしましたよ!」
リサはレノアの護衛。彼女の性に合わないだろう、しかし誰かを守りながら戦う方が強い…と言うのは黙っておこう。
「ログロ!早くザルツ達の援護に行くぞ!!」
ブレイが酷く焦っていたが、ログロは冷静。
「いや、問題ない」
彼らが見たのはケイを筆頭にボロボロになった三人。
主にケイ。殴られた…と言うより火傷した。が正しい。雷を纏い戦ったのは良かったが体がついてこなかった。
「僕とハウより先にケイの治療を」
ケイを抱えて何事もなかったかの様に歩いているが、二人も限界に近い。
多少防御はしていたとはいえ、ゴーレムに殴られた続けた、ダメージはある。
レノアはケイの治療に取り掛かる。
怪我はあっという間に治ったが意識が戻らない。
ハウとザルツの治療は更に速い。
二人は彼女の凄さに目を張った。
思わぬ敵襲にこれ以上進むのはリスクが大きいと判断。あの門を越えた所の近くに川があった為、そこから遠くで…野宿だ。
焚き火の音にゆっくりと目が覚めた。
頭にある感触がいつもの枕とは違う、ちょっと高かくて硬いとも柔らかいともいえなくて……いい匂いが…
「おはよう、ケイ君♪」
視界に広がる女性の顔────頭が理解する前に体が先に今この膝枕の状況から離れようとした。
が、レノアの力で抑えられる。かなり強い。
「えぇ!!?レノアさっ…!なんでここに…いや、なんでこうしてんの!」
熟した果物の様に真っ赤になっているケイに気づいているのか、いないのか、彼女は軽く笑う。
「ザルツ先輩とハウ君から聞いたよ!かっこいい活躍をしたって聞いたからさ、え〜っと…ご褒美?」
ご褒美?って……
「どうかな?感触は」
「………悪くない….です」
遂に顔も見れなくなり、顔を背ける。
起き上がりたいのだが、強靭な力で起こさせてくれない。
ケイとレノアがいるテントの近く、そこで焚き火をして、黙って火を眺めている、ログロ達大人組。
三つあったテントは子供達に譲り、寝袋で直に寝る。
「…ケイ・タケダが目を覚ましたか。少し、様子を見てくる」
「やめとけログロ。若人には若人の時間があんだよ」
ブレイが諭すといまいち納得していないログロは
理由を聞く。
「何って……なぁ?ストライド?」
するとストライドは軽く笑うと、ログロにこう言う。
「我々オジサンには、もう分からない甘酸っぱさ。ですよ、ログロさん」
相変わらずの仏頂面で二人が何を言っているかよく分かっていない…ログロであった。
ちなみに、ケイがレノアに気がある…かもとバラしたのはリサです。何やってんだ。
レノアには勿論言っていません。彼女にそもそも気があるのか……?




