第30話 最初の死闘。
[朝五時]
村を離れ、目的のダンジョンへと向かう。
そこに至るまでの道のりは極端な勾配もない。
日が暮れる前にはダンジョンへと着く。
カミリーズに着いてからが本番だ。時間を無駄にしない。それが発案者ストライドの考えだった。
さっさとダンジョン前に着いて休んでしまおう。
前回は搦め手によってダウンしたレノアだったが今日は好調そうだ。少し安心したケイなのであった。
ここから先は予測通り大した道のりではなかった。
簡単な川を越えたり、大量の狼を蹴散らしたり…
目的地のダンジョンの近く。
巨大な門がそこに佇んでいた。そして…扉にはある文字が刻まれている。
──ム いる 逃げろ 勝てない
「……ム?」
リサとレノアが同時に呟く。
「行けばわかんだろ」
ブレイが飄々と言うが、顔が笑っていない。
壁の血痕を発見したからだ。見た感じ、そう古くはない。
「ダンジョンの入り口は恐らくここではないかと。進みましょう」
ストライドの一言で全員の表情が引き締まる。
「俺が開けよう」
ログロが前に出て一人で門の扉をこじ開ける。
表情は全然辛くなさそうだ。
全員が感嘆の声を上げた後、門を通る前に軽い作戦会議。再びストライドが仕切る。
「ギリギリまで近づいて安全な所を探しましょう。ここまで来れば最低ラインはクリアです」
緊迫した空気で門を跨ぐ。その時、ケイにはある考えが浮かぶ。
(そう言えばこの門って神社の鳥居みたいにぽつんと置いてあるけど何が意味が…?)
まぁいいか、そう思い前を向いた時、ログロがケイ達───いや、ケイを見ていた。
「避けろ!!!ケイ・タケダー!!!」
言葉を理解する前に、背後を振り返る。
そこに見えたのは苔が生えた岩の四肢を持つ。魔物が、ケイを──殴ろうとしている──
「ッッ!?」
反射で爪を展開した。が、威力には耐えきれず森の奥まで吹き飛ばされる。
「参謀!!」
「ケイ君!!」
ハウとレノアの声はケイには届かない。
今必要なのは魔物の対処、それだけだ。
「ゴーレムです!正面から攻撃を受けないように!!」
ストライドの言葉に、全員、一度散開。
「今まで遠回りしてきたから分かんなかったけど、近道にはこんな化け物がいるなんてな」
ブレイの軽口にログロが頷く。今までの冒険者がここを乗り越えられなかった理由がここでの足止めをくらうからか。
ストライドの指示で、唯一のヒーラーであるレノアはリサが守る。
「ブレイ!!援護は任せた!!ハウ、ザルツ!お前らはそこで待機!!」
ログロの指示に、あえて上空に水魔法をブレイは放つ。
ストライドはログロから直々に戦うことを禁じられている。ログロの許可なしでは絶対に攻撃しない。
ゴーレムはログロを見て、膠着。
(誘い出している…と言うわけではないな。好奇!)
ゴーレムの腰部に一撃。
…………欠けた…
ログロの魔力総量の成長期は、かなり前に止まっている。
それが止まる前には既に冒険者として名を上げ、数々の強敵を倒した。
地道な鍛錬による基礎の底力より、死線を潜り抜けた
飛躍的な成長。
それをもってしても、折れた。
「チッ」
軽い舌打ち。苛立ちもあるが、想定内だ。
ゴーレムはカウンターを決めようとした瞬間、頭上に水魔法の水球が直撃する。
頭にはヒビ。
ログロとブレイ、二人は勘づいた。
────ゴーレムは想定外の一撃、尚且つ突然の勢いある攻撃を喰らえば砕ける!!
ダイヤモンドはかなりの硬度を誇るが衝撃には弱い要領で、ゴーレムもそれに当てはまる。
(オレの魔法でも、やっとヒビ程度。ブレイの一撃は警戒されてるだろうし…)
(能力を使うか…いや、温存だ)
二人の思考を強制的に破棄させる、ゴーレム達の次の一手がログロ達を襲う。
「マジか!?」
「………クソ」
「「地面から二人目のゴーレム…!」」
ログロとブレイの連携でも簡単には倒せない事をそばで観ていたハウとザルツは、お互いの言わんとする事を理解した。
「ここは僕達が時間を稼ぎます。二人はそのゴーレムの対処を!!!」
ザルツと炎剣とハウの大剣。
本来この二人の一撃を受け生きていられる魔物は
少ない…だが…
不快な甲高い音が響いた。
ハウの剣は折れ
ザルツの剣は弾かれた。
「気を付けろザルツ!こいつ、何か違────」
言い終わる前にハウは森の奥に吹き飛ばされる。
「ハ──」
ハウ同様、ザルツも同じ所に吹き飛ばされた。
────────────────────────
「あぁクソ。いてぇな」
吹き飛ばされたが大したダメージはない。
隣のザルツもほぼノーダメージだ。
「攻撃こそ速いものの、大した攻撃力はない。か」
ザルツがそう分析するとハウも頷く。
「どうやらそうらしい!!」
二人は立ち上がり、あっという間に目の前に来たゴーレムを睨む。狙うは不意打ち。だが…
「……!!!」
ゴーレムの速度は尋常じゃない。
二人は剣を振るう事もできずただ防御に回っている。
「クソ…!」
「グッ!」
ゴーレムの拳による連打。魔力があまりこもっていないのが幸いだ。
金属の強固な拳で殴られると言うだけでも苦しいと言うのに。
ゴーレムが一度距離を取った後には、二人は満身創痍。息も絶え絶え、顔も体もボロボロだ。
機械的な動き。つまり、規則的でそこに柔軟な戦い方はない。ただ…速い。
この事実についてハウとザルツは淡々と受け止め次の策について思考。
(硬い、速いがここまでだとは…!!参謀がいない以上、魔法による支援はない)
(僕は魔法使いとしては弱いにも程があるからな…!
僕かハウ。どちらかが奴を叩き切るしか…!)
ゴーレムが二人に向けて拳を振り下ろす時、近くからたった一瞬、ほんの一瞬。
本来誰も使えない。雷光が二人の視界を覆った。
ここまで全話読んで、キャラの名前を(ある程度)覚えて、魔法や戦い方などについて考察している人はいるのだろうか。(遠い目)
30話まで来ました。これからも頑張ります。




